平和があるのは代償を払ったからだよ③
魔物達の行進、それは通り過ぎた後には何も残らない死の行進。
目についたものを片端から壊し喰らい尽くす天災。これだけならまだ対抗策があった。
まだ生き残れる可能性があった。みんなで助け合うことができた。
だが、あのドラゴンはダメだ。生物としての本能が警告を鳴らす。あれは人類が倒せる相手ではないと。
長年冒険者をやってきた俺でさえあれ程の脅威と対峙するのは初めてだった。
恐ろしい。ただその感情だけで思うように体が動かせない。まさに蛇に睨まれた蛙だ。
で、それがどうした!
恐怖なぞ、魔物とやりあえば嫌でも味わう。ちょっとでかくなっただけのトカゲ程度、臆する理由になりはしない!
門の外に集まった冒険者達。みなそれぞれが覚悟を持って挑みに来ている。
そして、たった今、逃げてきていた少女を門の内側に避難させた。
準備は整った。
「やっちまえ!門番!」
おうよ!と気合の入った声が響く。門番以外が全員防御魔術を前方に展開する。
「術式展開、魔力最大出力!死にさらせ、メテオ・改!!」
周囲を渦巻く暴風のような魔力が消えたかと思えば、空に穴が開いた。
大気を消し飛ばすほどの速さで落ちてきた隕石。
それは、魔物たちに直撃した。