友神からの着信
………
「ふがっ!?」
ガクンッと身体が揺れて、ディアマンティアナは目を覚ました。
水盤から鈴の音が聞こえてくる。着信だ。
「あう……寝てたぁ……頭イタ……」
目をこすりながら、水盤を映像通話モードに切り替える。
『ディア~!!聞いてよ、またファンミの抽選落ちたッ!!』
幸運と財産の女神アレアフォルトナが、画面いっぱいに現れた。
ディアマンティアナは首を傾げた。
「……?なんか、前もそんな話してなかったっけ?」
『前も落ちたのッ!おかしいよ絶対!だって「また最前列です!」ってプイートしてる神もいるんだよ!?ずるくない!?嬉しいのは分かるけど、そーゆーこと書き込むのってどー思う!?落選者に配慮すべきじゃない!?』
ひとしきり愚痴を言い終わり、昔からの友神は缶ビールを飲み干した。まだ真昼間なのに。
ぷはーッ!と一息ついたアレアフォルトナは、そこでようやくディアマンティアナの様子に気付いた。
『……なんか今日凹んでる?元気ないじゃん』
途端に悲しみが込み上げ、うるるっと涙ぐむ。ディアマンティアナはティッシュでおもいきり鼻をかんだ。
『花粉症?しんどい?電話切ろうか?』
「ううん。よかったら聞いて。実はさ……」
ディアマンティアナは、全部打ち明けた。
ホウキ星の予知夢を皮切りに、お気に入りの国を守りまくった結果、人間にバレて逃げ帰り、主神に怒られた挙句、必死にお手伝いを頑張っている間に、国は滅亡してしまった一部始終を。
『ワーオ』
処刑のあたりでちょっと引いていた友神は、全部聞き終えると真顔になった。
『まず、気になったんだけど……アンタってまだ信者10万人超えてないよね?』
「え?うん、まだ超えてない。もうあと一息なんだけど」
『じゃあ、その彗星の予知夢おかしくない?』
「どこが?」
『あのね、アタシは信者10万人いるし、銀の盾も持ってるから知ってるんだけど……信者10万人以下の神様って、他人の予知夢は見れないんだよ。自分に降りかかる災いの予知夢しか見られないの』
10万人を越えれば、初めて他人の予知夢を見られるという。
『他に予知夢って見たことある?どんなのだった?』
「え、と……7段アイスクリームを全部ひっくり返す夢とか、太陽と月をぐるぐる追いかけてる近所の狼にかまれる夢とか、世界樹の根に足をひっかけておでこをぶつける夢とか……全部予知夢通りになった」
『ほらね、みんなアンタ自身が危なくなる夢でしょ』
ディアランドにホウキ星が落ちて穴ぼこになっちゃう夢は、自分の災いというよりは、ディアランドにとっての災いを表す夢だ。ディアマンティアナ自身は、ちょっと嫌な気分にはなるが、危険というほどではない。
「……よく分かんない。つまりどういうこと?」
『つまりね、アンタの予知夢って、まだ続いてるんじゃない?』