表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/55

楽しい思い出

我慢すること1ヶ月。


大きな白い毛玉のような主神(パパ)の肩もみをしたり、母神(ママ)と一緒に夜の帳を針と糸で繕ったり、兄神(あに)の戦車を引く獅子の世話をしたり、姉神(あね)の大量のお買い物の荷物持ちをしたり、妹神(いもうと)弟神(おとうと)の面倒をみてクタクタになったり。


とにかく一生懸命お手伝いをした結果、やっとグルグルマップを見てもよいお許しが出た。


「さ~て、みんな元気にしてるかな~!……ん?……あれ?」


座標を確認し、移動して、拡大して、拡大して、拡大して。


「……ない?」


え?そんなはずないよね?


「えーと、国名で検索を……あ、どうしよう、思い出せない。人間の世界はしょっちゅう国名が変わっちゃうから勝手に『ディアランド』って呼んでたんだけど……本当の国名なんだったっけ?」


何度探しても見つからない。


それもそのはず。仮称ディアランドはとっくに無くなって、荒れ地に飲み込まれてしまっていたのだ。天の国の一日は人間の世界での一年ということを、ディアマンティアナはすっかり忘れていた。


「ま、まさか、ホントになくなっちゃったの!?どうして!?」


必死に探すうち、崩れたとんがり屋根が見つかった。見覚えがある。これは教会の尖塔だ。


ディアマンティアナの瞳が、みるみる潤む。


「ど、どうしよう……ッ!わたしのせいだ!わたしがみんなをほったらかしにしたから!ユースレス様!イルミテラ!みんな……ッ!!」


あの国での楽しかった思い出が次々よみがえる。


なんかめっちゃ怒ってくる祭主様。噛んでも噛んでも柔らかくならないパン。スプーンがすいすい動く具のないスープ。めっちゃ怒ってくる家庭教師。謎マナーの数々。自分に祈って自分で癒すという自作自演。いろんな土地。めっちゃ怒ってくる貴族。めっちゃ文句言ってくる人間たち。すぐにお尻を触ってくるユースレス様に、もうちょっと絡みたかった恋のライバル・イルミテラ。みんなが喜んでくれた最後の祝福。


それ楽しい思い出か?と疑問に思われるかもしれないが、ディアマンティアナにとっては楽しい思い出だ。だって、天の国にはどれも存在しないものだから。


「うえええん!うえええん!みんなーッ!ごめんねえーッ!!」


ディアマンティアナは大泣きし、そのうち疲れ果てて眠ってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ