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狩られる側 ※王子主軸

ざあざあと春の雨が激しく降る中。


翼竜は珍しく2頭だけしかいなかった。


あたりに大砲が発射される爆発音が響く。

着弾は確認できなかったが、2頭の魔獣は紙飛行機のように『狩り場』へ落ちていった。


『狩り場』というのは、二重になった防御壁の間に設けられた空き地で、標的はなるべく『狩り場』上空で撃ち落とし、そこでとどめを刺す。


ユースレスはすばやく防具を身に着け、銃剣を手に走った。


ただのお飾りでなく自分も戦闘に参加したいと辺境伯に何度も請い、ようやく先月から『狩り場』に入ってもいいお許しが出たのだ。しかし、絶対に先走らず、誰かが攻撃をしてから標的に近付くよう厳命されていた。


現場に向かう兵士に混じって、第二防御壁の通用口を抜け、荒れ地のような『狩り場』に入る。落下地点を知らせる照明弾は、少し先で光っていた。


打ち所が悪かったのか、翼竜は目を閉じ、ぐったりと横たわっている。被膜を閉じていれば、ヤマオオジカ程度のサイズしかない。メスの翼竜だ。もう一頭は遠くで撃ち落とされたようで、目に入る位置に姿は見えない。


2頭同時に仕留めるなんて初めてだった。しかも大砲一発で。


気が逸ったユースレスは、言い付けを破った。


飛翔を防ぐ縄や網が翼竜に投げられる前に、真っ先に武器をかざし、近づいてしまったのだ。


「――ッ!!」


離れた場所から、辺境伯の怒声。


「離れろユースッ!そいつらは無傷だ!弾に当たったふりをしただけだッ!!」


次の瞬間、翼竜が閉じていた目蓋を開いた。

瞳孔がキュウと狭まり、棒立ちになったユースレスを捕らえる。


映像が細切れになって進む。


翼竜が被膜を震わせ身体を起こす。

舞い散る雨粒。

ユースレスの肩が押され、腹を引き裂くはずだった鉤爪の軌道がずれた。

右足に激痛が走る。

血が迸った。

追撃はない。

たくましい背中がユースレスを庇っている。


心臓の拍動に合わせて、骨が見えるほど深く切られた足から血が溢れてくる。水たまりが赤く染まっていく。眩暈が激しく状況が分からない。




――総隊長!もう一頭がそちらにッ!




この声を最後に、ユースレスの意識は暗転した。


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