41/55
消えゆくもの ※王子主軸
たった、4ヶ月。
全てが崩壊するまで、たった4ヶ月だった。
あるいは、よく4ヶ月ももったと思うべきだろうか。
まだ予知の災害はひとつも来ていないにも関わらず、国は疲弊しきっていた。
王都から離れた森の砦でも、凋落ぶりは察することができた。
食糧や雑貨など、砦への供給が10日に一度あり、その日を兵士たちは心待ちにしていたのだが、どんどん内容が貧しくなっていく。干し肉や塩漬けの魚なんてしばらくお目にかかっていない。
次々消えていく。
肉、魚、甘い物、煙草、手紙、新聞、それから――
「全部あの王子サマのせいだろ。アレを囮にしちまえばいい」
ユースレスに聞こえるように悪態をつく若い技師も。
「辺境に帰りたい。せっかく嫁をもらったのに愛想尽かされちまう」
そう不貞腐れていた辺境の騎士も。
「しっかり食えよ。食わないと身体を壊してしまうからな」
世話を焼いてくれた壮年の班長も。
「今はアンタも仲間だ!でも出番はまだまだ先!後方でどーんと構えておいてくれ!」
肩を叩いてくれた傷だらけの兵士も。
――みんな、消えた。
そして最後に消えたのが、ユースレス自身の足と辺境伯だった。




