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奇跡の軌跡

平民のディアが聖女だと分かったのは5年前。


森にひとりでいたところを木こりが見つけて、村の小さな教会に預けたという。


そのとき、ちょうど教会には辺境の魔獣退治に加わって怪我をした村人が大勢いた。手当てもろくにできないまま、冷たい床に寝かされて死を待つばかりだった。


それを瞬く間に癒したのが、ディアであった。


すぐに王家の使いが現れ、ディアは王宮に召し上げられた。


しかし、祝福の儀式は、教会にたくさん寄付をしなければさせてもらえない。儀式を行わないと聖女の印は出ない。王家が多額の金を出して儀式させるか否か。そんな話をしている最中、ディアの左手にいつの間にか聖女の印が浮かび上がっていた。


女神ディアマンティアナが加護を授けたときに現れる聖女の印。それに、古い文献にある癒しの力。もう間違いない。彼女は聖女だ。


王家は大喜びで、ディアを迎え入れた。


ディアの力は本物だった。


枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒した。


「野菜の出来が悪い」と聞けば、遠くまで出かけて実りの生育を助け、晴れや雨を呼んだ。


「魔獣だけでなく果樹を荒らす鳥も追い出してくれ」と言われれば、結界の強度を上げた。


王家は得意になってディアをあちこちに駆り出し、朝から晩まで、貴族も平民も関係なく、王都の教会で治療を施させた。


ディアほどの奇跡を起こせない教会は王家に頭が上がらなくなり、貴族たちもディアの恩恵を得ようと王家に追従した。もちろん誰にも奪われないよう、一人息子の王子ユースレスとディアを婚約させて、大々的に発表することも忘れなかった。


癒しを求めて他国の要人まで訪ねてくるようになり、ディアの名声は留まるところを知らない。もはや、この国に治せない病気はなく、最上の聖女を有する王国として大陸中で有名になっていた。



ところが。


「ディアのいる教会に、大国バベルニアから王族が来ているそうじゃないか!なぜ挨拶に来ないんだ!無礼な連中め!」


王家は、ディアがだんだん疎ましくなってきた。


みんな聖女に会いにきており、王宮は素通り。誇り高い王家が、聖女のオマケのように扱われている気がしてきたのだ。


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