第8話
降りた先には一つのフロアが広がっていた。
「壁画か?これは……?」
両側の壁画と正面には扉があり先ほどと同じように蝋燭の火が揺れていた。
壁画には人々と……舟?と1匹の……蛇だろうか?
「文字らしきものは……なさそうですね?」
足元を慎重に確かめつつ壁画に近づく。
2枚の壁画を見比べると、授かる人々と与える蛇といった関係性が窺える。
「それで?ここはどうしたらいいんだろうなぁ?」
扉の前で仁王立ちをするロバート。床の方には罠の気配がなさそうなので並び立つと、目の前の扉には不思議な文様があった。
「パズル要素、ですかねえ?」
一つピースが欠けたスライドパズルがそこにはあった。
……まぁこういうやつならある程度楽なのでテキトーに模様を組み立てればそのまま扉が開いたのでオッケー。
現れた降りの階段を進みまた次のフロアへ。
壁画と扉と一つのオブジェらしきものが鎮座している。それに近づくとまたもやパズルめいていた。
「どうやらここはパズル系が多そうですね」
「珍しくもねえけどな、そういうゲームだ」
左右の壁画には、喜ぶ人々と崇められている蛇が描かれていた。パズルの内容的には正しい順番に並び替える……と思われるものがオブジェの上に設置されていた。ここまで4枚の壁画を見てきたのでおそらくこの順番だろうというもので並び直すと、すぐに扉が開いた。
「ダンジョンってこんな感じなんですかね?」
「なかにはモンスターを倒さないといけないのもあるがな、まぁこの島じゃぁそこまで鬼畜なのはねぇだろうよ」
初心者が最初に来る島々だしな、とロバートがいう。
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こうして幾つかフロアを巡りパズルを解きつつ最深部と思われる重厚な祭壇に辿り着いた。
「何か出そうですかね……?」
「ボスが出てもおかしくはないなぁ」
この部屋の明かりは壁際を等間隔で並ぶ蝋燭と、正面奥の壁画の描かれた大きな扉から入り口のここまでの、一直線に篝火が立っていてとても明るかった。このダンジョンか迷宮か廃棄された神殿かはわからないが、ここ最深部のその灯された火はとても蒼く幻想的であった。二人揃って慎重に歩みを進め、何事もなく壁画まで辿り着く。
「なにも……なさそうですね」
「これはこれで楽でいいな!」
ガッハッハッハと笑う彼を置いておき、壁画を観察する。
……ここに来るまで幾つかの壁画を見てきたが、おそらくはこの諸島の歴史と言っていいものが描かれている、と思われた。
その大きな蛇は人々を救った、それに感謝した彼らはその蛇を崇めた、そして彼らの交流は続き……一人の少女が蛇の前に現れる。彼女は蛇に思いを告げると海にその身を投げ出した。その蛇は海に沈む彼女を救い出し、その身を人の姿に変えた。……そうして二人は平和に暮らしたのだった、的な話の流れだろう。
そしてこの壁画には祀られた蛇の男とその彼女が婚姻の儀式を行なっているところで終わっている。男に向かって跪き、両手を胸の前でクロスさせて首をたれ、その頭に男が冠のようなものを授けている、多分きっとそんな儀式だろうと思う。
その壁画の中央、その冠の一部が窪んでいる。まるで何かはめろ、と言わんばかりに。
「ロバートさん、これまでの道中にこれくらいの大きさのものってありましたか?」
聞いてみるも芳しくなかったので、二人揃って元の道を引き返しよく探し回った。
すると、
「いやぁまさかなぁ」
「こんなところにあるなんて……」
最初の入り口、地上部の本当に入り口にある蝋燭の片方……その底の部分に鉱物が埋め込まれていた。
地上部に辿り着いた時にはもう太陽が沈んでいて、洞窟はすっかり暗がりになっていた。リアル時間換算でもうだいぶ遊んでいられる時間が短くなっている、早めに切り上げないと休日明けの仕事に遅刻するかもしれないなとふと思った。
その足で最深部までトンボ帰り。ー窪みのところにその石を嵌め込もうとしたところで、ゲームらしき表現でもって俺たちを驚かせた。
ゲームのウィンドウが目の前でひとりでに開きーー、
『ーー封印を解きますか?ーー』
と表記された。