第7話
さて、薄暗い洞窟内を観察する。
そもそもとして俺個人としてはもうすでにこのゲームに飽きつつある。この1週間、同じような依頼しか受けておらず、島を散策し、戦えるものがいないかと歩き回ってもみたが野生動物しか生息していなかった。魔物と言われる外敵枠はあのデンキクラゲくらいだったのだ。あいつらもあいつらで触角の先端部分にしか攻撃判定がなく、水面に浮かぶ傘の中心を刃物で貫けば一撃で終了。つまり俺はそこまで戦闘経験を積めていない状態でここに来ていた。
扉の設置してある足元に円状の溝が等間隔に並んでいるのがみてとれる。
「ロバートさん松明か何かで天井を照らしてもらえます?」
木材のコップを傾けつつ周囲を見渡していた彼にそう呼びかける。
「天井ね、ほらよ」
アイテム欄から取り出した松明を掲げてもらう。……俺では身長が足りず火がそこまで届かないからな……。
ゆらりと揺れる光源に目を細めつつ、観察する。……同じようにこちらにも溝があるのがわかった。
「一応罠っぽいのは発見しました。あとは扉を開ける方法ですが……」
彼から今度はコップを預かり、海水を汲み上げ……、
「上の方に注意をしててくださいね」
と断りを入れ扉から距離を取ったまま片方の蝋燭の火を消す。汲み上げた水が火を消した瞬間、上下の溝が作動しそれぞれ木片を噴出した。
「これくらったら毒もらいそうだよなぁ……坊主?」
2発目がないことを確認し、散らばりいくつかは岩壁に突き刺さったそれを慎重に持ち上げて言う。その先端はこの暗がりではうっすらとだったが、水気が含まれているのがわかった。
「ひとまずもう片方も消しましょう。その後にまた仕掛けがないか調べますんで」
「あいよ」
先ほどと同じ動作を繰り返し、仕掛けを不発に終わらせる。
ロバートに松明やらを持ち続けてもらい今度は蝋燭の裏やなんかを慎重に調べる。
……そう、変化がないこの状況に飽きつつあった俺は偶然あったPKなんかを信用しここまで付き合ってしまっている。MMOを遊んでいるのにやっていることはオフゲーと変わらなかったからだ。人との交流を積極的にしたいわけではないが、ほどほどに視界の中に誰かの存在を入れていたかったのだ。
「……独身を拗らせすぎたかな」
最近は独り言も増えた気がするな。
とにかくまぁちょうどいいタイミングでおもしろそうな事をしようぜと誘われたので、つい乗っかってしまった感じだなうん。……今回の件でつまらなかったらこのゲームはやめるかなと、そう思いつつ。
「……あった!」
「お!どうした坊主!」
蝋燭がかけられているへこみに腕を突っ込み、目に見えないがおそらくはロープのようなものを掴み思い切り引っ張った。
重いものを引きずる音と共に固く閉ざされた扉が左右に開かれた。
「やるじゃねぇか!」
と背中をバシバシ叩くロバートと共に目の前に現れた下へと続く階段を降りたのだった。