第6話
送り返した遣いの者が大勢を引き連れて舞い戻ってくるのは早かった。
目に見える暴力でもって、属国となることを押し付けられて……。
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ロバートは当てがあるのか、冒険者ギルドが建っている島からしばらく歩き……離れ小島のような小さな小さな浜辺しかないところまでやってきた。
「ここですか?」
「……うーにゃ?テキトーに歩き回ってるだけだ」
うぉい。
もう一度地図を取り出し、他の情報がないか確かめだすロバート。
「……宝の地図ってわりと不親切ですよね、3Dで出して欲しいんですよねー」
「それじゃあ浪漫がねぇだろ?」
そういうものですかねぇ。
「一体どこから手に入れてきたんです?クエストの報酬とかです?」
手に入れた経緯からある程度情報も絞れるのでは?と質問してみる。
「あーどうだっけなぁ、ほかの海賊からかっぱらってきたのか貴族様の気まぐれクエストで受け取ったのか……」
いつの間にか手に入れてたって感じか。
「うーん、ちょっと見せてもらえますか?」
手渡しされたその地図を見る。
古ぼけたようなそのペラ一枚の羊皮紙、それにインクで描かれているのはこの諸島だろうと思う。どこかで見覚えがあったその形の一部に印が付けられている。おおよそ島の外縁と思しき箇所にある。
「けどまぁ……」
島自体が小さいから誤差ではあるんだよなぁ。
「とりあえずこの印のところに行きますか?」
「まぁ任せるわ、もう何回か探してたやつだから暇つぶしの一つって感じだしな」
さいですか。
というわけで、印の地点まで移動し特に何も目につくものはなく……おそらくは地下か上空の地点だと思い立ち、小さな島の外縁を歩くこと数十分。
「洞窟があったのかぁ」
ちゃんと言うなら入り江と言ったところか。
海から波の侵食を受け、抉り取られた崖の内部に入り込む。引き潮だったのか足首辺りまでの浅瀬、奥に行くにつれて水がなくなっていき、入り口からは海の光の反射でおおよそ高さ2mほどの天井がキラキラしていた。
そして行き止まり、そこには二つの蝋燭に灯った火が揺れていた。目線の高さのその蝋燭に挟まれる形で壁には四角い溝……固く閉ざされた石扉があった。
「当たりだなぁ?坊主」
「そうみたいですね。……こういう仕掛けには心得がおありですか?」
トレジャーハンター。いわゆるダンジョンや迷宮の財宝を手に入れるため、罠やモンスターなどを退けるのが得意な職業?のような物。宝箱に仕掛けられたトラップを解除したり、謎解きをして正解を導く……と映画なんかでは見かける。
「いんや、うちではそういうの得意なヤツに任せてるから俺には無理だわ」
と言いつつ、
「まぁこういうのは力ずくでもどうにかなるだろ!」
大物のカトラスを振りかぶり勢いをつけて扉に叩きつけた。
硬物がぶつかる音が響く洞窟の中、慌ててしゃがみ耳を塞ぐ。
「ギミックで解けってことだなあこれは……」
土埃が舞っていたのが落ち着き、扉とロバートの姿をはっきりと視認する。
傷ひとつついておらず、また罠も作動していなさそうなので良かったと人心地……。
脳筋だなぁ……。
「とりあえず少し時間ください、仕掛けがないか探してみますんで」