第5話
それからしばらくは平和な日々が過ぎていった。
あれから音沙汰がなかった隣国からの遣いがまたやってきた。
ここら一帯の荒々しかった波が大人しくなったのでこの島に船の停留所を作れと言う。
流石に横暴すぎる、とその使いを送り返した。
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「いつもお疲れ様です、こちらが報酬となります」
依頼をクリアした報酬を相変わらずクールな対応な受付のNPCのお姉さん(ロイナ・モナさんというらしい)から受け取り、冒険者ギルドを後にする。
外に出ると目につく人物が一人……。
「いつまでついてくる気ですか?いい加減運営にメールしますよ?」
「まぁまぁいいじゃねえか坊主」
めっちゃ笑みを浮かべつつそう言う大男。
「あと坊主もやめてください、一応これでも大人なんですよ」
このゲームのビジュアルは基本的にはリアル調ってよりはデフォルメがされていて、とっつきやすいっ感じに仕上がっている。カッコいい・カワイイ感じで、怖い・気持ち悪いといったそう言う表現幅を排除しているっぽいのが、数日デイリーなのか毎回受けれるクエストをこなしている間に浮かんだ感想であった。ただ単に完全に排除しきれていないだけかもしれないけど。
話を戻すと、その表現フィルターとやらはプレイヤーにも適応されるらしい。NPCにも一応そうっぽいっていうゲームの仕様上の原因が一つ。
それと、VRゲームの限界なのかプログラムやエンジンの組み方なのか現実の体の特徴をそのまま持ってきて、動かす方が疲れにくく不快感なくプレイできるので推奨されているらしい。初期アバターを作成するときに注意事項として表示されていた。なので実際の身長である背丈……160cm前後で始めたわけなのだが。これが原因二つ目。
それで初期装備である赤いバンダナとズボンを着た姿というのもあり、少年感が増してしまうのだ。
「そいつは悪かったな、ところで坊主」
坊主やめい。
「このあと暇か?暇ならちと付き合ってくれや」
そういって懐から取り出したのは、一枚の地図だった。
こちらにも見えるようにしてくれているので確認してみるが……、これってこの諸島のものだろうか?
「おいおい気にするところが他にあるだろう?」
ここだここ、と指先を向けられる。わかっているからこそ確認をしたんだ、確認は大事だぞ。
その指先にはバツマークが付けられていた、いわゆるお宝の地図といった感じで。