第24話
いいねと評価ありがとうございます。
焚き火の木が爆ぜる。そのバチっとした音は周囲の暗闇に溶けていった。それに応えるかのように、虫の声が聞こえてくる。
語るだけ語って去っていった背中を思い返す。
「………………」
心情を語るお爺さんの姿は、とてもゲームの中の住民だとは思えないほど情緒豊かだった。
(スパコン?かなんかで管理してるのか?お金掛かってるなぁ……)
なんて感心するくらいには。
さて。
どうしたものか。
お爺さんは吐き出して気持ちが軽くなったのだろうが、俺は戸惑うばかりである。特に何かしてほしい……ってわけでも無さそうではあった。
それに……、
「ロバートと探索したあの遺跡ってなんだ……?」
壁画に描かれていたような話は、ついぞ出なかった。大昔の話で、今の時代にまで伝えられていないのか?それとも全くの出鱈目?
「ひとまず、明日考えるかぁ……」
そろそろログアウトの時間だ。
明日はログインして、それからどうするか考えよう。
そして次の日。
ログインしてさぁ活動するぞ!と息巻いた俺の目の前に通知を知らせるウィンドウが開かれた。
どうやらまたスキルや称号を獲得したらしい。
「うーん……」
ゲーム内か、現実の日付を越えると経験に応じて獲得する……?とか?そんな感じのシステムなのだろうか?他のゲームで言えば敵を倒して、戦闘終了する時にスキルや称号を獲得するのが普通であるはず……。いやまぁ俺がプレイしたことがないゲームには、似たようなものもあるのかもしれないが。
「つまり、うまく使えば効率よく覚えれるのでは……?」
もしや天才か!?……まぁすでに広まっているテクニックだろうし、そんな夜更かしとかしてられん……。土日でどうにかって感じかね?昼の12時に一度、ゲーム内では日付が変わるし。
それはそれとして、確認しておくか。
称号
《初めての採取》
・採取行動を一回行うことで獲得
・採取をする行動に補正をプラスする(微)
・世界にはいろんなものが眠っている!君は幾つ手に入れることができるかな?
スキル
《バインド》:アクティブスキル
・注視している対象に所持しているロープを用いて拘束することができる
・クールタイムは1分間
・拘束が失敗した場合、アイテムは消費される
うむ、バインドがうまく手に入ったな!狙っていたとはいえ、こうも簡単に手に入るとは……。アイテムは生成してるわけじゃないのか……、多めに持っておかないとだなぁ。
採取の称号の方は特にないかな。レア率が上がったりするわけではなさそうだ。
今日はログイン後に相棒を取り出し、道中にあるちょいと広めの芝生にて軽く思い出し稽古をやっておく。一時期、太り過ぎたかなと護身術教室に一年間通っていたことがある。そこの先生に何故か気に入られ、その先生が個人的に好きな棒術を叩き込まれた……。いやぁ……共感してくれる使い手がいないからって、じゃぁ育てればよくない?で生徒を気まぐれで育てるとかさぁ……。まぁ役には立っていないんだけど……、現実でそうそう棒術のお世話になる事件になんぞ、巻き込まれない方が良いのではあるが。護身術を選んだのも、相手を傷つけず自身の身を守れる術を学びたかったからである。状況によっては傷を負わせることもあると学べたので、それも良かったと思う。
涼しげな風が火照った体を冷やしてくれる。
陽もまだ水平線の上であり、人の通りもいくらか活発であるため……結構な割合で眺められている。
そらね?変な棒を持って振り回して、足捌きを確認してたらね?注目されるよね。
通り過ぎる人たちはみんな微笑ましそうにクスクスして行ってしまう……。
おっと、棒を握る力が強くなっている……適度に脱力せねば。
小休止としてクルクルと遊ばせつつ、本日の計画を立てる。確かどこかのギルドに資料をまとめている本棚があったはずなので、そこで情報の確認を行なって……あとは住民への聞き込みかなぁ。
……よし、ひとまず考えもまとまったし行くか。
******
「すみません、この村の歴史をまとめた資料を探しているのですが、ここの資料室に置いてありますか?」
生産ギルドにまでやってきた俺は、受付にいた恰幅の良いおばさまに聞いてみた。
「えぇ、ございますよ。この村のことを知りたいと聞いてきた者はあまりいらっしゃらないので、奥まったところに置いてありますが……。あ、どうせなら私が取り出しますのでご案内しますね」
「ありがとうございます」
おばさまに連れられ二階へと案内され、奥の個室から本を取り出してくれた。
二階の部屋には壁に本棚がずらりと並んでいて、それらに囲まれるようにいくつかの机と席が用意されている。プレイヤーがちらほらといるので、利用率は地味に高そうであった。
……考察班とやらが頑張っているのだろうか?
「はい、こちらに置いておきますね?ご利用が終わりましたらお声をかけてくださいね」
と言い、おばさまは受付に戻って行った。
「さてと……」
楽しい楽しい読書タイムだ!
えーと、諸島の地図に地形の推移をまとめた資料本、伝統工芸の成り立ちに移住民のおおよその統計結果と住んでいる地域……。島の歴史に祭事の進行形式と連絡方法……これだ!
少しばかり傷んだその皮作りの本を一冊だけ取り出し、表紙を今一度確認する。
「……………………」
色褪せてはいるもののしっかりとした装丁、いやちょっと禿げてるな。表紙の文字は金字である。重大なことを載せているため革の装丁であったり、金字などで目立つようにしている、とどこかで目にしたことがある。
これが、答えを教えてくれるはずだ……。
留め金具を外し、少しばかり分厚い本を俺は慎重に開いた。




