第22話
月曜日に投稿したかったです……()
いいねと評価ありがとうございます。
次の日ログインしてすぐ目にしたのは、獲得した称号があるというウィンドウの知らせだった。
《初めての生産》
・生産を一回行うことで獲得
・生産する行動に対して補正をプラスする(微)
・失敗は成功の母!千里の道も一歩から!君はどこまで高みに手を届かせれるのかっ!
……ここの運営はちょいちょい熱いのでは?
だがまぁ、個人的にはそういうのは嫌いではないのでフレーバーテキストの楽しみ?として捉えておこうかな。
確認が終わったところでメニューを閉じる。この後は廃れた教会にまで行き、木を切り倒し、木材に加工して……。
チェーンソーなんて持ってねぇな。
手元にあるのは斧とノコギリだけ。
おっと……?コレは詰んだか?
頭をひねりつつも足は教会を目指していた。道中見かけたプレイヤーの方には挨拶を忘れないようにする。あ、こんばんわ〜。
まぁ手順はある程度わかってるからいけるか……。
ぺこりとお辞儀をしてすれ違ったプレイヤーから目線を外し、緩やかな坂を登り……教会へと到着。
「いつ来ても人の気配がないなぁ」
さてと、周囲の雑木林を見てみるが薪なんかに出来そうな太さのものは数本くらいしかなかった。
夕暮れ時というのもあり、あまり遅くまで作業は出来ないだろう。2、3時間を目安に行動しないとな……。
鉈を持っていないので、生い茂っている草木をかき分ける役目は歪み棒こと俺の相棒である。
「いや、ないな……これはないわ」
ダジャレっぽくなってしまったぜ。武器として扱う前に普通の棒として扱ってしまうことを許して欲しい……!
まぁあまり戦闘とかしたくない性分だから、一体いつ頃そんな出番があるのか……そもそも、出番もなしに使い果たす可能性もあるんだよなぁ。
アイテムの詳細を見る限り、耐久度というものは存在していないように見えるが……。しまっているカトラスを取り出し、その刃を確認してみる。
「やっぱちょっと汚れてるし……欠けてるな」
損耗具合が見てとれる、というよりはわざわざそういう風に描写している時点で変なこだわりである。それこそ耐久値でも設定しておけばゲージか数字で管理できる。そっちの方が手間がかからなくていい。
「ふむ……まぁいいか」
なぜか錆びてないカトラスをアイテム欄に放り込み、作業を始めるか。
立て掛けておいた棒を取りなおし、好き放題生え伸ばしている雑草をかき分け、足で踏み折る。ある程度まとめて同じ方向へ倒し、捻ってひと束にして……ノコギリでまとめてぶつ切りにする。……あまり刃にはよくなさそうだけれど、今度は鉈も買おう。あぁ……金がねぇ。
それをいくつか繰り返し、ほどほどの広さを確保する。視界が開けている方に倒す方がまだ安全だろう。薪にする以外の細い木は今のうちにノコギリで切り倒しておく。細い木はそれほど高くないので枝葉を先に切り、その後に根本から幾分か離れた所にノコギリを切り付ける。
ノコギリの金板がたまにたわむ音を響かせつつ、シュコシュコと前後に動かす。
「……………………」
……いや、明らかに不審者の図よなこれ?
「ふぅ……」
中程より少し奥、そこまで切り込んだので足でその細い幹を奥へとゆっくり押していく。
メキメキメキッと軋ませながら倒れていくが……切れ込みを入れた部分がまだ繋がっている。
片足で地面に押さえつけつつ、ノコギリでその部分を切り進めていけば……よし。
「やっぱ結構かかりそうだなぁ……」
これは一本薪にできればいい方、か……?
「まぁ納期の期限まで結構あったし、なんとかなるか」
足元に転がった木は広いスペースのところに横にして置いておく。こいつは何かに使えるだろうし。
「よし、次」
******
いくらかの細木を切り倒し、スペースを確保したので……本命をやっつける番だ。
両手で幹を抱えると、少し隙間ができる余裕があるくらいのいいバランスのサイズ感。若干は物足りないだろうが、薪にはなるだろう太さ。剪定されていないのか、少し上くらいで二股三股に分かれていて、そこからさらに枝葉が生え伸びている。
全体の大きさをある程度確かめた後、根元にしゃがみ込み……生え際から少しだけ離れたところに刃を入れる。今度は直径の半分も行かないように注意しつつ、一定のところで止めて……そこから45度の角度くらいになるように、改めて手前からノコギリを進める。
「……よし、と」
切り出した木片を取り出し、外から角度を確認する。
うんうん、まぁ大体いい感じかな?
そしたら反対側、それも切り込みを入れた位置よりは若干高い位置から切れ込みを入れていく。ゆっくり慎重に切り進めて……中程より手前で止めて、離れて確認する。
「あとはゆっくりそっと押すか……」
45度に切り落とした方向へゆっくりと幹を押して……メキメキっと自重でへし折れてくれる。
「ふぅ……」
気がついたらもう陽が沈みそうな頃合いで、急いで次の作業へと移る。
比較的上の方の枝からノコギリで落としていく。先の方が細い枝が多いのもあるし、跳ね返りが怖いからだ。綺麗にできたら今度は枝分かれしている部分の分割だ。寝そべっている幹に片足を乗っけて固定し、ノコギリで切り分ける。薪になるか微妙な大きさなので、買っておいたロープでそれらをまとめて、ようやく本命へと対応できる場面に到着だ……。
「……趣味にしたって力入りすぎだろ」
自分で自分に呆れつつ……大体三等分がいいだろうか?抱えて運べるサイズ的にそう捉えて、ノコギリで一旦目印をつけておく。
「……ふぅ!よし!」
気合を入れて腕を前後させる。ゲームなのに汗が出そうだ……。いや、汗が出るような設計ではないのか、一滴も出てはいないが。体が火照っているような感覚に陥るが、それも気のせいだろう……。現実では火照っているくらいの運動量だし、没入感からそう錯覚してしまうに違いない。
このゲームにはスタミナゲージというものはない。ないが、スタミナ自体はあると思われる。脳が疲れて集中力が低下しているからか、内部データとして設定してあるのか……時たま体が重い時があったりする。
そんな益体もない事柄をつらつら並べつつも、つつがなく分割作業も終了した!
「はぁ……疲れた……」
すっかり暗くなってきたので、切り落とした枝葉で焚き火を拵えるとしよう。
彫金道具の中にマッチがあるので、それを用いて集めた枯葉、細い枝、手持ちの余った角材と火を大きくしていく。砂場の地面のところがあったのでそこに火を焚き、近くに先ほどまとめた幹の束を椅子代わりに小休止。
いやー……やっぱ水分多いと煙いね!もくもくしてるわぁ……。
現実ではやれないよなぁ、消防車とか呼ばれそう。
教会の周囲には雑木林と、ちょっとした庭だったであろう雑草の伸びた地面。割れたレンガで区切られた一画と裏手にはちょっとした井戸らしき物もあった。
「夜だから、やっぱ怖いわぁ」
周りの林も少し手入れしてやれば、木漏れ日がちょうどいい感じになりそうで、いい散歩コースになりそうである……。つくづくと勿体無いなぁとは思いつつも、
「ゲームだしなぁ……」
と、そうも思うのだった。
閑話休題。
重く感じる腰を上げ、買っておいたカンテラを取り出し火を焚べる。
「買っておいてよかったわぁこれ。あると便利よな」
先ほど切り倒した場所、切り株と言うには不恰好なそれ。余分な部分を、ノコギリで削ぎ落とす。
「まぁ平らじゃないけどいける……よな?」
即席の薪割り台として活用する。切り分けた一つを上に乗っけて、斧を手に取る。軽く打ちつけて刃を食い込ませた後は、コンコンと軽く台に叩きつけて木の繊維に沿って裂くように割っていく。これを数回繰り返して、手頃なサイズに割ったらまたロープで束にして置いておく。
これをもう二セット行い、長い長い作業は無事に終了した。




