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Islands Pirates ーアイランズ・パイレーツ  作者: 匿名希望の水夫さん
始まりの諸島編
20/32

第20話

「お隣が明るくなったと思ったら……ナツメさんが来ていたんですか」


 ナツメと挨拶を交わしていたその時、二人組が隣の貨物船からやってきた。


 その男は黒に見えるほど暗い深緑のさっぱりとした髪型で、ほとんど瞼が閉じてるんじゃないかってほどの糸目、パリッとした白いシャツと黒のスーツベストを着ており、その上から薄い白いコートを羽織っていた。その男性の少し後ろには秘書であろうか?しっかりしていそうな顔立ちと眼鏡を掛けた、スーツ姿の女性を連れ添っていた。


「あんたも無事に来てたんだね、コタロウ」


「えぇはい。……ところでこの微笑ましい彼は、ナツメさんのところの新しいメンバーですか?」


「いや違うよ、私のところではないな」


 俺の頭頂部を見ながら言うコタロウは、とてもニコニコしている気がする。


「そうでしたか、初めまして僕はこういうものです……どうぞよろしくね」


 そんな風に畏まりながら渡された名刺のような厚紙……いやこれ名刺だ。


「ゴールドペッパー商会……代表?」


 二、三人の影が名刺に落とされているため読みにくいことこの上なかったが、じっくりと眺めたその名刺には確かにそう書かれていた。


「それは僕たち向けでね……どうも今回は助かりました、こういう者です。何かございましたら僕たちゴールドペッパー商会に」


 暗くて見えなかったのだろう、すぐそばにいたお爺さんにも名刺を渡し、


「それではこれで失礼します。ナツメさん、あとはお任せしてもよろしいですか?」


「あぁ、今夜中で終わらせるよ。お爺さんも君も助かりました、もう終わりが近いのでお手伝いは今日までで大丈夫です。ありがとうございました」


「ふむ……そうか。あい、わかった。おいお前ら!撤収するぞ!」


 倉庫の方に散らばっていた若い衆をまとめ、撤収したお爺さんを眺めつつ……俺も目的地に向かうか。


「あぁそうそう、君って魔ナマコっていう魔物を知っていたりするのかな?」


 立ち去ろうと踵を返した時にコタロウから尋ねられた。


「はい、知っていますけれど……」


「そうか。あとで僕の知り合いが聞きに来ると思うから、その時はよろしくね?」


「はぁ……」


 生返事をしてしまったが、まぁいい。なんとはなしに、そそくさとその場を立ち去った。




 急ぐようにして港から出ていく少年を三人は見ていた。


「……あれが野良の初心者、ということで決まりかな?」


「身なりからして、おそらくですが」


 コタロウがポツリとこぼした言葉を後ろに控えている女性が拾う。


 モミジくん……秘書の格好をした(させている)彼女に振り向き、


「ではこちらの用事が落ち着いたら、人当たりの良さそうな人を派遣するとしようかな」


 ふふふ…かの少年を調べて、面白そうならばちょっかいを出すのもいいかもしれない。


「まーたなんか悪巧みしているだろ、あんた」


 と、ナツメさんに睨まれてしまった…が惚けておこうかな?


「はてさて…、僕はただのしがない商人プレイヤーですよ?えぇはい」


 にこやかに微笑んだ外面を被る。


「なんでそんなアバターを作るかなぁ…余計に胡散臭いから、逆効果だろそれ」


「なんでですか?糸目キャラはイケメンって相場が決まっているのに……」


 カッコいいと思うのだが。モミジくんにも聞いてみよ。


「モミジくんはどう思う?」


「……………」


 心底嫌そうな顔をするなぁ……僕は笑顔になるけどね!


「カッコイイ、とオモイマスヨハイ……」


「カタコトだなぁ!いいね!面白いよ君!」


「はいはい!いくらリアルの知り合いとはいえ、いじめないの!」


 ナツメさんに怒られてしまったので謝ろう。


「ごめんね、モミジくん」


「いいえ……これも仕事なので……」


 やっぱつれぇわ……とぼやきつつ、ため息を吐くモミジくんは置いておいて。


「それでナツメさん、荷物を下ろし終わりましたらこちらに連絡をください。それまでに僕は村長さんに話をつけてきますので」


「あいよー、そっちの許可が下りたらこちは好きにするけどいいんだよな?」


「えぇ構いません。不都合なことがあればすぐに連絡入れますが……ある程度は許容範囲ですし」


 僕たちの計画、というよりは僕が巻き込んだ形ではあるのですが……。村長さんのところへ早めに行くとしますかね。


「それではこれで失礼します」


 軽く頭を下げて港から出ていった。


******


 生産ギルドについたのでひとまずは道具を買わねばならない。


 この作業用の道具類がイヤに高いのだ……。そのせいでクラゲを突いて小銭を稼ぐ羽目に……。


 久方ぶりにやってきたギルドの中に入り、その広いロビーを見渡し……。


「あれ?珍しいですねロイナさん」


「今日はこちらですか?こんばんは」


 いつもは冒険者ギルドの受付をしているお姉さんがいた。


 どうやらたまに生産だけではなく、傭兵ギルドの方へも交代で受付をしているのだそう。


「ちょっと作っておきたいものが出来たので。販売所はあっちですか?」


「あ、はい。少し奥の方になります」


 入り口近くには受付カウンターがあり、両サイドの壁側に依頼書を貼るボードを掲げ、中央に一本の大黒柱を中心に座りやすそうなベンチ、その周辺に食事などをするためのテーブル席が設けられている。


 村を通る時にも人の数が増えたなぁと実感したが、いくつかのテーブル席が埋まり、談笑しているプレイヤー達を見るとこう……あれだね。MMOしてるって感じるよね。


「今夜は人が多いですねぇ」


「えぇはい。どなたかが情報を流してくれたらしく、みなさん集まってくれたみたいです。ギルド依頼の方もこの人数なら負担なくお任せできると思います」


 独り言じみたつぶやきを拾ったロイナさんはそのクールな表情をわずかに崩した……。俺でなければ見逃してたところだね。


 奥の販売所へとテーブルの合間を進んでいくのだが……イヤに注目されるなぁ今日は。視線がちらちらとこそばゆい。


 俺は何かした覚えがないので堂々としたものだが……、心当たりがなくても居心地が悪く感じるぜ。


 ってこれはあれか!頭に乗っている花冠の影響なのでは!?


 ……だがまぁいい、ログアウトするまではこれは乗せておくと決めている。……いややっぱ外そうかな。


 販売所の前でそうウジウジしているのも時間が勿体無いので、さくっと購入しよう。


 ある程度の見本と野菜市みたいな並べ方をされたカウンターの前に立つと、システムの機能が働いて購入のメニュー欄が表示される。こういうところはゲームらしいなと思う。


 その商品タグの一部に道具類のタグがあり、その一覧からいくつかのアイテムを選び購入した。


 最終確認のウィンドウを承認し、


「これください」


「はいよ、まいどあり」


 数万分のチップが支払われる……。ロバートから受け取ったチップがある程度底をついたか、初心者ブーストはこれで終わりだな。今後は自前でどうにかしないと……。


 購入したものは結構多く……生産道具である、木工類、裁縫類、彫金類に革細工類…採取類として、ツルハシと斧を購入。釣竿も惹かれるものではあったが……結構ギリギリなのでまた今度である。


 アイテム欄はもう少し余裕があるくらいなので、全て納めて入り口のカウンターに戻る。


「また何か御用でしょうか?」


「はい、レンタルルームを利用したいのですが……」


「かしこまりました、少々お待ちください」

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