第2話
その島々は遠い異国と異国のちょうど狭間、中間地点付近に位置していた。支配地を広げんとする遠い隣国からの遣いがやってきたのは当然のことだった。
島々……諸島の取りまとめをしていた人物はこれを了承。血を見ることを望まなかった彼は、それで何が変わるのかと疑問であった。
彼は祭事を執り行う最高責任者でもあった。祭事……海に住まう荒神、かの龍族を鎮めねばこの島々は海の底へと……。
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「ではいってらっしゃいませ」
恭しくお辞儀を返してくれる受付のお姉さんことNPCさんに軽く頭を下げ、依頼書を数枚片手に冒険者ギルドから出た。
「うーん……」
以前と、日差しは強く肌を焼いてくるのがむしろ健康的に思えるくらいには、外に出ていなかった我が人生……日焼けの判定もこのゲームにはあるのだろうかと疑問を抱きつつ、目をそらし続けている疑問が一つ。
他のプレイヤーの姿が見当たらない、ということ。
「一年前にリリースしたタイトルだし、初心者エリアは過疎ってしまうのかねー?」
そう。この島、諸島の中でも最南端に位置する島に降り立ったその時から今までにであったのは島の住民であるNPC数人だけ。
プレイヤーの所持できそうな大型船でもあるかと思えば、埠頭の辺りには彼らの管理している小舟が少しあるくらいだった。
まじで人の気配がなくて困る。
「ふぅ……」
ため息ひとつ。
よし、ソロで遊ぼう!と切り替えたのは冒険者ギルドを見つける少し前のこと。
始まりの諸島、この島々は中小の五つの小島を木製の桟橋にて行き来できる設計になっているらしく、渡っている際には住民もよく利用していることがよくわかった。何人かすれ違ったからね。住居は主に海の上に立っている木造建てである。いわゆる水上家屋というやつ?だろうか。世間話してみると受け答えがはっきりしているのはさすがだなとは思ったね。潮の満ち引きもあるという情報を手に入れれたし。
さて、中小でも村が収まるほどの大きい三つの島にはそれぞれギルドが存在している。先述した冒険者ギルド。三階建てのログハウスで、主に依頼を受けるところという側面と情報をまとめ、管理しているところでもあった。主にモンスター関連だったけどね。一階はロビーに受付、依頼掲示板があり、入り口の扉を開けると吹き抜けが天井まであり広々と感じられた。二階と三階には本棚とギルドの応接室があるらしいとか。あと受付のお姉さんがネームプレートを付けていた、NPCにも一人一人名前を設定しているらしい。
次に、傭兵ギルド。こちらもログハウスだが二階建て仕様。他は同じく一階はロビー、受付、依頼掲示板。こちらの場合はプレイヤーからの依頼を提示しているらしい?とのこと。移動できる範囲の依頼が張り出される仕様なのだとか。二階の本棚には世界の情勢関連がちょこちょこ残されている。あまり機能してなさそうな感じがしたかな。
最後に、生産ギルド。この諸島の主な販売所として機能している。住民が最も集まる場所と言ってもいい。他と同じくログハウスで二階建て。特徴的なのはレンタルルームだろうか?使用料を支払えば作業部屋を借りれるらしい。部屋数はいくらあるのだろうか……?そのあたりはとてもゲーム的だなと思う。
「……にしても」
手に持った依頼書を見る。
【依頼内容】:隣のおじいさんの船に穴が空き、壊れたので材料となる木材を持ってきてほしい。
・納品 木材×10
【依頼内容】:漁に出ようと船を出したが、増えすぎたデンキクラゲのせいで沖にまで出れなくなったのでどうにかしてほしい。
・討伐 デンキクラゲ×25体
【依頼内容】:まいごのこねこちゃんをみつけて。
・調査 みーちゃん(白と黒のトラ柄な子猫)
「あんまりいいのがなかった……」
大体似たり寄ったりの依頼しかなく、もうこれでいいやと適当に見繕った限りであった。
ま、まだまだ始まったばかりだしのんびりやっていこう。さぁ冒険の始まりだぜ!