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Islands Pirates ーアイランズ・パイレーツ  作者: 匿名希望の水夫さん
始まりの諸島編
19/32

第19話

 フレンドが0人から3人に増えた一昨日の土曜日。その次の日は部屋の掃除をしたり買い出しをしたりして、身の回りのことを行い……今日はゲームはいいかなと積んであった本を数冊読んでのんびりと終わった。




 そのまた次の日。平日である月曜日の仕事を終わらせ、ログイン出来た頃には夕方の空模様であった。


 彼らから聞いた武器関連の称号。得意なものだと取得が早いとのことだったので、心当たりがある武器を自作することにしようと思う。


 ということで一番最南端である冒険者ギルドから小さな島を経由し、なだらかな中腹に位置する傭兵ギルド、しばらく下って…桟橋を越え、最北端に位置する山の頂上……生産ギルドまで向かう。


 道中の村の様子が少しざわついていた。それとプレイヤーの姿も結構見かける……。NPCとの見分け方は簡単で、頭上のマーカーの有無だけである。名前は一定の距離に入らないと表示されない感じらしい。


 すれ違うプレイヤーの方々には奇妙なものを見る目で見られつつ、傭兵ギルドを通り過ぎ……と下り坂の途中、見覚えのある後ろ姿を目にした。


「おう、元気にしてるか?」


「あ、おにーちゃん」


 その見覚えのあるNPCの女の子に声を掛ける。


 海を展望できる小さな野原。一応の用心として簡素な柵があるくらいのわりと危ない野原にて、その子と見つけた覚えのある白と黒が入り混じった小さな子猫。猫の方はのんびりと日向ぼっこを満喫しており、傍らの女の子はどうやら花冠を作って遊んでいたらしい。


 夕刻の時間帯も終わりが近いので、これからお家に帰るのだという。


 まぁ気温も下がっているのか肌寒い、ワンピース一枚というもの厳しいしな。


「おにーちゃんはこれからお仕事……?」


「あーまぁどうなんだろう?ちょっと物作りするけど、個人的な用事だからなぁ」


「なにか作れるの?」


「ある程度は、だけどね?」


「ふーん……」


 あんまり興味なさそうなご様子……。薄汚れている膝あたりに付いている土を払い、その子がそれじゃあねと手を振り……。


「あとこれ!あげる!」


 帰り際に先ほどまで編んでいた花冠を押しつけられる。


「えーと……ありがとう?」


「おにーちゃん!バイバイ!」


 子猫を大事に抱え、ひた走るその子を見送った。


「………ふむぅ」


 とりあえずそれを頭に乗せ、ズリ落ちないことを確認した後、再度坂を下るのだった。


******


 ちょっとした影を作っている林を抜け、視界が広がる坂の麓あたり……と、なにやら見かけない大きな船を数隻確認した。


(リョウマが掲示板とやらに手助けを求めたらしいが…あれも関係しているのかな?)


 満ち潮の影響か少し海の中へ沈んでいる桟橋を渡り、すぐ側にある停泊所へと足を向けた。全体的に木材で建設されているその停泊場は、足場もしっかりとしており近くには倉庫もあるため、主に漁師が利用していたりする。この付近は村人の大部分が住んでいる地域であるため、一度生産ギルドに卸してその後に販売所に並べるらしい。


 貨物船だろうか?大きな木箱が乗せられているその船を見上げつつ近づくと、声をかけられた。


「お、オメェも来たのか」


「あれ?お爺さんこんなところでどうしたんです?」


 またまた依頼人として知り合った、お爺さんに声を掛けられた。最初の依頼で船を直す手伝いをしたお爺さんである。


 普段はもっと南の漁場とかで働いていたはずなのだが……。


「ん?その顔はしらねぇって顔か?昨日ギルドとかにゃあ依頼は出しておいたんだが」


 どうやらこれらの貨物船の積荷を下ろす手伝いをギルドに依頼として出していたらしい。


 まぁ時間もあるし手伝うか。


「そうだったんですね、自分も手伝いますよ」


「すまねぇな、若え奴らも引っ張ってきたがずいぶん物が多くてな……」


 というわけで、比較的一人で持てそうな物を優先して運ぶことになった。重たい積荷の方はあちらで組み作業で運ぶらしい。


 ある程度の幅しかない架けられた板の上を慎重に歩く。船内にも数名のプレイヤーがおり、下ろすのを手伝っていた。


「あれ、君も依頼を受けてきたのかい?」


「いえ、ちょっと知り合いがいたもので手伝いを申し出ました」


「そうだったのか。あ、君は重いものを運べる?難しそう?ならこっちを頼むよ」


 と軽い木箱を二、三個ほど抱え船から出て板を渡り、すぐ側に一度下ろす。NPCのお兄さんに一声かけ、これらも運んでもらうように促したのち、また荷物を受け取りに戻る。


 これらの作業をなん往復かしているうちに、日もすっかり落ちて夜になった。


 周囲を照らすのは月明かりしかなく、篝火も設置はされていないため一度作業は中断となった。また明日にするらしい。


 そのようなことをお爺さんと確認していたその時、貨物船の方から一人の女性が現れた。


「おっともうこんなに暗いのか……。おい!誰か明かりをつけろ!」


 という大声に応えるかのように、明かりが灯された。スポットライトのように照らされたその白衣の女性が続けて指示を出す。


「周囲が照らせるようにカバーをつけろ!夜中でも作業は続けるんだからな!」


 いつの間にか船外に持ち出されていたのだろうその照明機にカバーがつけられ、光が分散し、周囲をぼんやりと明るくする。


 まさかもうすでに電気という文明を手に入れていたのか、という驚きで俺は動けなかった。


「これはまたずいぶん眩しいなぁおい。一体何なんだあれ?」


「おっとこれは失礼したおじ様。私はこの船の責任者でね、電気と照明機という科学の代物さ」


 船の明かりを背に受けた白衣の女性がゆっくりと近づき、お爺さんへ挨拶をした。すると隣にいる俺のことも目に入ったのだろう。


「おや少年、見ない顔だね?手伝いに来てくれたのかな、ありがとうね。私はナツメと言うんだよろしく」


 そう言って、にこやかに微笑んだナツメであった。

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