第13話
木々の合間から差し込まれる日差しを受けながらリョウマと共に海岸へと坂を下っていた。目的地としてはその先の海の中、サンゴ礁である。その道中簡単にだが本日の行動スケジュールを話しておく。
「自分はあまり戦闘の経験がないので、もし魔物が現れた際にはお願いしますね」
「おう」
PK、プレイヤーキラーというものはどうやら一人でもプレイヤーを殺してしまうと自動で切り替わってしまうらしい。PKに襲われ、返り討ちにしてもなってしまうのだとか。
「ところでリョウマさんの腕前はどれほどなのでしょうか?」
強さの基準が全くわからない俺としては、こういう時にでも情報を集めておく方が良いだろうとそういう判断であった。
「あ〜……どうだろうな?こう明確に数値化されているわけでもないからなぁこのゲーム」
聞くところによるとギルド関連でもさまざまな依頼を受けれるそうなのだが、簡単な依頼や難しい依頼を自身で判断して受注していくそうで、いわゆるギルドランクと言われるものはないのだそうな。
「じゃあ難しい依頼で失敗してしまうと……?」
「信用を失う、ってわけだな。まぁ挽回するためにまた簡単な依頼をこなして評判というか印象を良くしていく必要が出てくる。信用が高く、実績も十二分であれば追加報酬が出る時もあるからな」
特に重要な依頼というものが存在し、それらは一度顔合わせの機会を設けるのでギルドとプレイヤーと依頼人の三者面談という形になるとのこと。
「逆に言えば雇用主にアピールすることで報酬の交渉が可能だったり、詳しい条件の見直しなんかも可能だから個人的にはありがてぇ制度だけどよ」
なるほどなぁー。傭兵プレイヤーも結構大変そうだなぁと思うのであった。
「それで俺がどれくらいつえーかって話に戻るが、俺以上に強い奴はごまんといるからなぁ。でもまぁこの辺の魔物だったら余裕だから安心しな」
そういってこちらの肩を軽く叩いてにこやかに笑う。
「武器はその大剣ですか?」
彼が背負っている大きな大剣。無骨な鉄の肌を晒し、その方刃には魔物のものだろう爪のようなものが点在して固定されておりとても痛そうだ。
「少し持ってみるか?重いぞぉ」
スラっと片手で背中から取り出しこちらへと持ち手を差し出す。
というか片手で振り回せるってどんな身体能力だ……?
「では少しだけっ!?」
彼に倣い片手で受け取ろうとしたその時、その重みに耐えかねて前のめりに体制を崩してしまった。金属音を耳にしつつ開いている片手でなんとか突っ伏すことを阻止できたが、手を離さなかったその大剣の重さのなんとも言えなさよ……。
ひとまず地面にそれを横倒しにし、それから両手で持ち上げようと少し前のめりになり全力を振り絞った。
「ぅん〜!!!」
びくともしやがらねぇ……、あれこのゲーム能力値を振るゲームじゃなかったよな?
「アッハッハッハ!」
それを見て楽しそうに腹を抱え笑うリョウマである。
「いやーすまねぇすまねぇ。このゲーム、能力値といったものが無い代わりに称号やスキルなんかでプレイヤーそれぞれの得意分野が変わる仕様でな?」
そういって自身のステータス画面を一部だけ見せてくれた。
「この称号のおかげで軽々振り回せるようになるんだぜ」
《大剣を会得せしもの》
・大剣の扱いにある程度慣れた者が獲得できる。
・大剣をある程度自在に操れるようになり、片手でも振り回せるほどになる。
・大剣を扱う際のスキルにある程度の補正がプラスされる(中)
「武器系統の称号?」
「簡単にいうとそうなるな、他にもナイフやハンマーに槍……弓矢とか短銃がなんかがあるぜ」
プレイヤーが同じ武器系統を使い続けると手に入るらしい。
「これは他の武器も手に入るのでしょうか?一種類だけではなく」
「あー大剣の称号とその他の称号が取得できるかって話だな?それは確か出来るようになっていたはずだぜ?それで二刀流を体現している奴もいたし、弁慶みたいに色々な武器を持ち歩いて使いこなしている奴もいるらしい」
ひょいっとまた片手で持ち上げ納刀すると、
「とりあえずは使いやすい武器を見つけることだな、それから他の武器に手を出しゃあいい。安全に戦える状態を早めに整えておくと楽だぜ?」
と、付け加えたのだった。
******
生い茂る緑の草木を越えると日差しをもろに受け、しばし目を細める。陽の光に慣れた頃には、見慣れた砂浜と水平線まで遮るものがない青色が広がっていた。まぁデンキクラゲは漂っているのだが。
「そういえばお前自分の舟はあるのか?」
「はい?持っていませんが」
え、この調査って舟必要だったのか……。
「いやまぁ泳げるならサンゴ礁まで確か近いはずだから、そこまで問題はないんだが……」
ある程度サンゴ礁の上まで行ってそこから潜り込んだ方が早いだろう、とリョウマが言う。
「あんたが依頼主だからな、そっちの希望に従うぜ?」
と言ってくれたので、泳いで向かうことにした。その際に彼から使用アイテムとして、シュノーケルを譲ってもらい準備は万端である。
砂浜から海に足を踏み入れ、ひんやりとした感覚とさざなみの音をBGMとしつつ、リョウマに周辺のデンキクラゲを退治してもらっていた。
「一振りで広範囲のクラゲが倒せるのってすごいですよね」
「刀身がでけぇからな、あと俺の与えるダメージが大きいんだろう」
なんて言葉を交わしつつ、上半身も海に沈むほどの水位のところまでやってきた。シュノーケルを使用状態にし、一息。海へと飛び込んだ。
水中眼鏡が白い泡を掻き分け、その景色を映した。
波に漂いながら見下ろすその景色。
水面から差し込む光が線となり海中に形を与える。
色とりどりの小魚が転がっている岩に群がり、小さな貝が砂の上に散りばめられ、少しばかりの海藻が頼りなさそうに揺れる。海中を一色の色で例えるのならばターコイズブルーであろうか、目線を海面に向ければ泡立つ模様が見てとれた。
(本当に海を泳いでいるみたいだ……)
隣ではリョウマが同じようにシュノーケルをつけ、こちらにサムズアップしていた。そして、こちらが意思疎通ができそうだと感じたのだろう……一つの方角をまっすぐに指差した。
(サンゴ礁の場所を知っているのか、ありがたい)
2回ほど頷き彼の誘導に従い、水を蹴るのだった。




