96 大陸一美しい国 ヒストア王国
ヒストア王国に有るとある普通の住宅建物。
そこには、フードを深部と被り、水平線に見えるオーバートロカム号を見つめているルークとセイカが居た。
「あれは……、勇者達が乗っていると言う船ですね」
「あぁやっと来たな。ぽっと出の偽モンが」
「ハァ〜、別に偽物じゃないんですけどね。セイカ、勝手な行動をしないでくださいよ」
「分かってる。ここに来るまでに苦労してるんだ。ただで帰るなんてあり得ない……」
二人は暫くオーバートロカム号を見つめると、屋上から飛び降り、姿をくらました。
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数分後。
ライム達はヒストア王国の近くにある港町に到着していた。
「ふぅ~。船旅って結構疲れるな」
「その割には元気そうだけどな」
「そうね……。獣人がこの程度で疲れるとは思えないし」
船から降りたライムとゼーレ、そしてレイラは伸びをしながら船を降りた。
「ゼーレ君。私達は船の荷物整理や補給しないといけないものとかがあるから、先にヒストア王国に行っててくれないかい?」
エマは、船の上で木箱を持ちながら話した。
「まぁ良いですけど……」
ゼーレはどこか不安そうな表情を浮かべていた。
「安心しろ、今日の夕方には終わる量だ。何しろ、ボク達が秘密のカギを持っているわけだからな。ヒストア図書館で落ち合おう」
スズリは、船の壁にもたれながら、少し錆びついたカギを指でくるくる回して下に居るゼーレに話した。
「そうだな」
ゼーレは笑顔を浮かべて、再びエマの方を向いた。
「それでは、僕達は先にヒストアに向かっておきます」
「うん。用事が終わったら私とスズリもすぐに行くよ」
エマはそう言うと、木箱を持ってどこかへ移動した。
こうして、ライム達は途中で馬車を捕まえてヒストア王国まで移動したのだった。
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数十分後。
「おぉー、ここがヒストア王国かぁ〜」
ヒストア王国に入ったライムは、目の前の美しい光景を堪能しながら歩いていた。
建物の外壁は基本的に白と青で塗られ、街中に水路があり、澄んだ水が流れている。
まさに、大陸一美しい国の名に恥じぬ景観だ。
「ヒストア王国って言う割には、王城らしき建物が無いな」
ゼーレはヒストア王国内部を見渡しながら呟いた。
「ゼーレ。あそこに大きな建物があるでしょ?」
レイラは、ゼーレの隣に擦り寄りながら、肩を優しく叩いてヒストア王国から少し離れた山の中腹ら辺を指差した。
「あの大きな建物、『ヒストア図書館』の一部分を王城として使っているのよ」
レイラが指差した所には、外壁は他の建物と同様に白と青で塗られて爽やかな感じだが、建ってから時が経っているのか、所々にツタが伸びている趣あるお城の様な建物があった。
「へぇ~、王城が国の外にあるなんて珍しいな」
「旅をしてるエルフだけあって、レイラは物知りだよな」
「ふふ〜ん。私はこの大陸を何度も旅してきたからね。知らないことの方が少ないと思うよ」
レイラは自信満々に言い放った。
「てか、ヒストア図書館ってことは、スズリが落ち合おうって言ってた所じゃないか?」
ゼーレは慌てた様子で話した。
「そうだよな。夕方に終わるって言ってたけど、早めに行っとくか」
ライムがそう言うと、ゼーレとレイラは前を歩き始めた
「あんなでかい図書館、僕初めてだよ」
「私も入ったことはないから、楽しみ」
ゼーレとレイラが前を歩く中、ライムは何かを感じたかのか、自身の足元にちらっと視線を落とした。
「ふっ、有能な仲間が居ると、リーダーが暇になっちまうぜ」
ライムはゼーレ達に気づかれぬ内に、直ぐ後を追った。
こうして、ライム達は散歩を早々に切り上げて、ヒストア図書館へと向かった。
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「やっばぁ〜」
僕は思わず言葉をこぼした。
ヒストア図書館に入った僕達は、目の前に広がる光景に圧倒されていた。
外装とは違い、壁や小物などが暗い色で統一されたシックな内装。
三階構造で、エントランスが天井まで吹き抜けている。
所々に置かれた背の高い茶色の棚には、びっしりと分厚い本や資料が並び、人が行き交っている。
「ん? この魔力はもしかして……」
ライムはおもむろに三階を見上げた。
そこには、白いフードを被った金髪ロングにピンク色の瞳をしたエルフが一人で椅子に座って本を読んでいた。
あれって……、ハルカだよな?
ゼーレとレイラは気づいてないみたいだし、あっちも僕らに気づいてないっぽいな。
まぁ屋内でフード被ってるぐらいだから目立ちたくないかもしれないし、こっちから話しかけるのは辞めとくか。
ハルカが同じ国にいるのが分かっただけでも嬉しいし。
「ねぇ、エマさん達が来るまでまだ時間あるし少し休まない?」
レイラは杖にもたれ掛かって浅い息遣いをしていた。
「そうだな。結構山道長かったし、足が棒みたいになってるよ」
ゼーレは両膝を押さえて苦笑いを浮かべている。
「おいおい、重いリュックを背負ってる僕より疲れてどうする」
ライムは、煽るような顔で二人を見て言った。
「貴方が化け物なだけ!」
レイラが疲れている体を振り絞って怒り気味にツッコんだ。
「あぁ〜、今の言葉傷ついたな〜。獣人にだって心はあるんだよ?」
「あぁ、そう言えばそうだったわ。あまりに常識外れで忘れてた〜」
ライムとレイラは、周りから見たら仲が良いのか悪いのか、ギリギリ分からない口喧嘩でふざけ合っていた。
「あれ? もしかして、貴方達は勇者パーティーじゃありませんか?」
ライムとレイラがふざけ合っていると、後ろから誰かに話しかけられた。
「あっ、一応そうですけど……、貴方はどちら様ですか?」
そう言うゼーレの視線の先には、三十代ぐらいのおじさんが立っていた。
黄緑色の瞳と同じく黄緑色の短髪。
おじさんな風貌とは裏腹に体幹の良さがわかる程ブレない体。
そして、穏やかな表情を浮かべている心の広そうなヒゲの生えたイケおじ。
「これはこれは、失礼しました。わたくしはこの図書館長を務めているアルバート・クラークです。アルバートとお呼びください」
「館長さんだったんですね。初めまして、僕はゼーレ、勇者を名乗っている者です」
ゼーレとは、握手を交わした。
「えぇ、存じておりますとも。かの勇者様方にお越し頂き大変嬉しく思います。もし宜しければ、わたくしがこの館内のご説明を致しますがどうでしょう?」
「館長さん直々に案内してもらえるなんてラッキーだぞ。ゼーレ、ここはお言葉に甘えて案内してもらおうぜ」
「おう、そうだな」
「それでは、ご案内いたしますね。ですが、王城エリアは勇者様であれど、事前に予約しなければなりませんのでご了承を」
「分かりました」
クロエに会うのはまだ先になるな。
「私、本当に疲れてるから座ってくるね」
レイラはそう言って隅っこの席までトコトコ歩いていった。
「うん。エマさん達が来たら呼び止めといて」
こうして僕とゼーレは、さんにヒストア図書館館内を案内して貰うのだった。
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数時間後。
アルバートさんに広い館内を案内して貰った為、周り終わる頃にはすっかり日も暮れていた。
「アルバートさん。ありがとうございました」
「いえいえ、何日おられるのかは分かりませんが、ごゆっくり当館でお過ごしください」
アルバートさんは、そう言ってその場を立ち去った。
「おぉー、ゼーレ君達じゃないか。やっと帰ってきたんだね」
「待たせちゃったみたいで、すみません」
「ほんとだよ。このボクを待たせるなんていい度胸じゃないか」
「もう、スズリ。そう言うこと言わないの」
「ふふっ、それじゃあ皆んな集まったことだし、エマさん、王城エリアに行きましょうか」
「そうね」
エマとスズリ、そしてレイラが椅子から立ち上がった。
「え? 秘密の鍵を使うところに行くんじゃないのか?」
クロエにも合いたいけど、何処で使うのかとか、どんな秘密があるのかとか、謎が多すぎてずっと頭のもやもやが消えないから早く晴らしたいんだけどな。
「その鍵を使う部屋に入るためには、ヒストア王の許可が必要なのよ」
何だ、どっちみち行く必要があるなら一石二鳥みたいなもんだし良かった。
「ふ〜ん、じゃあ行くか。王城エリアに」
「うん。話はもう通してるから、私について来て」
こうして、勇者パーティーはエマの案内の元、ヒストア図書館内にある王城エリアに足を運ぶのだった。




