86 神を超越した後の残響
『創星爆雷覇』により、一度破壊され、タルタロスを除き全てが修復されたクレイエス。
建物が修復されただけでなく、魔族や人間、その他動植物までもが健康な状態に復活した。
『天の世界』があるビルも例外ではなく、屋上も元に戻り、綺麗な状態に修復されている。
そしてライトニングは、『天の世界』から少し見上げた上空に浮遊していた。
「なっ! 何が起きたんだ!?」
「ビルが壊れる前に戻っている?」
ゼーレとレイラは戸惑いながらビルの柱などに触れていた。
「ハァー、さすがライトニング様。ますます好きになっちゃいました」
ミズキは両手を胸の前で合わせ、ライトニングを恍惚とした表情で見つめていた。
「くそっ、追いついたと思ったのに。また遠い存在になったな」
ノアとミズキは、暫くライトニングを見つめた後、窓から下へと静かに飛び降りた。
「遂に神殺しに成功したか」
「うん、そうだねテンヤ。私達の戦いは此処から始まるの」
テンヤとアカネは空を見上げながら涙ぐんている。
「おぉー良かった良かった。ちゃんと全部復活できてる」
空中に浮遊しているライトニングは、戸惑いながら辺りを見渡しているゼーレ達をみて呟いた。
その後、ライトニングは静かに夜の暗闇の中へ消え去っていった。
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数分後。
テンヤとゼーレ達が色々話し合っていると、エレベーターの扉が開き、ライムが走ってきた。
「はぁー。一応聞くけど、今回はどこ行ってたんだ?」
「あ、いや〜、ほら此処って広いじゃん? それで迷子になっててさ。そしたらいきなりビルが揺れたから、一旦避難してたんだよ」
ライムは苦笑いを浮かべて話した。
「ほんと、貴方勇者パーティーとしての自覚あるの?」
レイラはため息を付きながら、呆れていた。
「あはは、ごめんって」
「お仲間同士で話してる途中悪いんですけど、ゼーレさんとレイラさんは、一回このビルにある病院に行ったほうが良いと思いますよ。まぁ医者も避難してるはずなので、いつ戻るかわかりませんが」
「そうだな。魔力も切れてて、回復魔法は使えそうに無いしそうするよ」
「それじゃあ行ってくるな」
「じゃ」
ゼーレとレイラはエレベーターで下に降りていった。
「うん。いってらっしゃい」
ライムは笑顔で二人を見送った。
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数分後。
アカネがマグカップに紅茶を入れ、ライムはテンヤ達と向かい合わせにソファーに座った。
「いや〜、ライムにあんな趣味ができていたとは。それに加え、前言ってた組織がサンダーパラダイスとは驚きだねぇ」
テンヤは、ニヤニヤと嘲笑を浮かべている。
「別に、理解されたいなんて思ってないし」
「いや、別に良いと思うよ。実際その趣味のお陰で結果が出てる訳だし」
本当に思ってないのに。そんな事言われたら、僕が理解されたいって思ってるみたいになるじゃん。
「まぁ何でも良いけど、取り敢えずライトニングの正体が僕だって他の誰にも言わないでね」
「オッケー、わかってる」
「誰しも秘密は持ってる物だもん。誰にも話さない」
テンヤとアカネは、真剣な表情で深く頷いた。
「うん。そうしてくれると助かる」
ライムはそう言って、紅茶を一口飲んだ。
「それで、一応聞くんだけど、サンダーパラダイスに入らない?」
ライムは不敵な笑みを浮かべてそう言った。
「あぁ。元々ライムと共に行動をするって作戦で転移してきたんだし、魔神が倒された今、俺達を縛る物は何も無い。何かミアの支配魔法も解けてるみたいだし、この国にはミアが連れてきて、俺の知識を教え込んだドワーフの職人が多く住んでいるから、ほっといても勝手に技術は進歩していくだろう」
テンヤに続いて、アカネも話し始める。
「そうね。それにサンダーパラダイスに居ても、クレイエスの政治の事とか他の小さな問題とかは、この機械で連絡を取り合う事が可能だし」
アカネはポケットから、ピンクのカバーを付けた全面タッチパネル式の細長い端末を取り出した。
「それはスマホか!?」
ライムは目を見開いて、机から身を乗り出した。
「うん。まぁでも、まだ俺の魂之力ありきで実験的に作っただけだから、電話とかメールとかしか出来ない」
テンヤが、ポケットに入れていた黒と水色のカバーを付けたスマホを取り出す。
「量産やアプリの開発とかは、作るノウハウや素材の備蓄、そして工場の確保が必須になるから、数年か数十年先の話になるだろうな。だから、今の所は俺とアカネ、後はミアやロイヤルティーナイトと信用できる技術職の人達数人しか持ってない秘密道具みたいなもんだ」
テンヤは得意げに話しを続ける。
「て訳だから、クレイエスについても何も心配もいらない。俺達は入るよ、サンダーパラダイスに」
「そうか、良かった。じゃあ早速だけど、サンダーパラダイスの拠点がある混沌の大森林に行こっか」
「は? 混沌の大森林って此処から船や馬車を使っても一、二週間は掛かるぞ。勇者パーティーの人達はどうするんだよ。まさか放ったらかしか?」
テンヤは呆れ顔を浮かべている。
「大丈夫。僕なら本気で走れば一日も掛からないし、二人はディストラの魔法で影に入って僕と一緒に移動して貰うから」
「あれ? 影魔法って誰かを影に入れられたっけ?」
アカネが首を傾げながら聞いてきた。
「あぁ、うちのディストラさんは魂の特性、もとい魂之特性持ちだからな。他にも色々な影の使い方ができるんだぜ」
僕は誇らしげに話した。
「ふっ、すげぇな」
テンヤは、いろいろな意味で呆れていた。
「そうでしょ? ほら、ディストラ出てきて」
「初めまして、テンヤ様、アカネ様」
ディストラは直ぐに影から出てきた。
「おぉー、ディストラって悪魔だったのか。悪魔も仲間にするなんて、流石は元まお、ん!!」
テンヤはライムによって強く口を塞がれた。
「おい! むやみやたらにディアブロの正体を明かすなよ! そろそろ明かすつもりだけどさ……」
ライムは小声でそう話した。
「ごめんごめん」
テンヤも小声で返した。
その後、テンヤ達はディストラの影に吸い込まれるように入っていった。
「あっ! 拠点に行く前になんか理由つけて今日と明日を自由行動にしてもらわないと」
ライムは呟き、エレベーターで下へと降りた。
その後、ゼーレ達を説得したライムは自由行動の権利を貰い、気配も無く、音も無い神速の速度で拠点へ向かった。
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一方その頃。
大陸側のクレイエス港では、国民はナイトサンダーズ達にお礼を言い、各々の帰る場所に戻り始めている。
そして、ナイトサンダーズ達は綺麗に整列してノアとミズキを待っていた。
「お疲れ様でした。ノア様、ミズキ様」
シエルが深く頭を下げながら言うと、後ろに整列していた者達も同時に頭を深く下げた。
「皆んなも国民の避難や護衛、お疲れさん」
「流石は、アンナ様がライトニング様の為に作った組織ね」
「ありがとうございます。私たち一同、身に余る光栄です」
シエルは頭を下げたまま言った。
「それはそうと、ノア様、ミズキ様、そこの人達って誰なんですか?」
アイは、ノアとミズキの後ろに居るミアとロイヤルティーナイトを指差した。
「ちょっとアイちゃん。真剣な場なんだから」
カルラは、慌てふためきながら小声でアイに言った。
「ふふっ、別に良いわよ。ノア、貴方が話してあげなさい」
ミズキはそっとノアの背中を押した。
「はぁ~、そりゃあボクが話さないとだよな」
ノアは頭を抱えてため息をついた。
「申し訳ございません。ノア様」
シュランはそう言いながら、申し訳無さそうに頭を下げ、その他ロイヤルティーナイトも同じように頭を下げた。
「フンッ! アタシは頼んでなんかないんだからね!」
ミアは腕を組み、頬を膨らませてそっぽを向いた。
「分かってる。決めたのはボクだから、
ボクが話す」
その後、ノアはナイトサンダーズの皆んなに、ミアの過去やロイヤルティーナイトに戦う意思が無いこと、自分達の仲間になりたいと思っている事などを話した。
「そうだったのですね、了解しました。私共の方で各地の仲間に伝えておきましょうか?」
シエルは、ミア達の顔を伺いながら話した。
「いや、そりゃあそうしてくれたら助かるが、君達はライトニング様をサポートしたいと言う者の中から選びぬかれた者達だ。なのに、最近は僕達の雑用ばっかだけど良いのか?」
「そうよ。私達が虹雷剣だからってライトニング様のサポートをするの遠慮してない?」
ミズキは心配そうに話した。
「いえ、我々は虹雷剣の皆様のサポートもライトニング様のサポートの一環だと考えております。それに、……」
「それに?」
「あの方をサポートする事ってあまり無いんですよね」
シエルがそう言うと、後ろのナイトサンダーズ達も頷いていた。
「あぁ確かに。戦闘面においては、ライトニング様が全部片付けちゃうし、情報収集も勝手にやっちゃうものね」
ミズキは静かに頷いていた。
「ま、それでも君達をもっと頼ったほうがライトニング様も楽だと思うし、一度ボク達の方から伝えとくよ」
ノアは余裕の笑顔を浮かべていた。
「ありがとうございます」
シエル達含め、ナイトサンダーズは皆、お辞儀をした。
「それで、やはり我々の方でロイヤルティーナイトの皆さんとミアさんの事をお伝え致しましょうか?」
「あぁうん、よろしく頼むよ。本拠点に居る人達や他の虹雷剣とか、ライトニングにはボクから話しとくから、他の所を頼んだ」
「承知しました」
シエルはそう言いながら、進化している獣人達に目配せをした。
数十名の獣人達はコクリと頷くと、風のような速さ、かつ波音も立てずに大陸の方へと海の上を走って行った。




