84 魔神と転生転移者達
ゼーレとレイラがエレベーターで天の世界へと上がっていた頃。
天の世界では、ライトニング、テンヤ、アカネがタルタロスと戦っているところに、ミズキが来ていた。
「ミズキ! 何でここに来たんだ!?」
普段焦ることの無い漆黒の男が、口調でも分かるほど取り乱した。
「アンナ様とノア、そして私の判断で、サポートをしたほうがいいと判断しました。ですが、この計り知れない程の魔力量、この人が邪神ですか?」
彼女の長い青髪が夜風に揺られ、月光を反射していた。
「あぁそうだが、ミズキが邪神を知っているということは、シエルが皆に伝えてくれたのか。流石出来る子、シエルだな」
「私も一緒に説明しましたよ」
僕がシエルの有能さに心の中で感謝していると、影の中からディストラが飛び出してきた。
「うわっ! そうか、もう夜だから起きてたのか。ありがとうな、ディストラ」
「フフッ。じゃあなんか邪神がいるみたいなので、私は隠れるとします。私ではどうあがいても神を殺せませんし、ライトニング様の邪魔になりますから」
「あぁそうしてくれ。やばっくなったら誰かのサポートを頼む」
「もちろんでございます。私は貴方の為に動く陰の実力者なのですから」
ディストラはそう言って、僕の影に入っていった。
「なっ! ライム以外にも悪魔と仲が良い獣人が居たのか!!」
あっ、やべ! フライムの情報操作で、邪神たちの中で悪魔と仲が良い奴はライムって事になってるんだった。
「騒ぐな。我が誰と仲がよかろうと、お前には関係のないことだ」
「残念だが、それが関係あんだよ!!」
タルタロスがそう叫びながら右腕を上げると、はるか上空に象1頭分程の巨大な岩の塊が無数に創り出されていった。
その光景はまさに絶望色に染まり、地球最後の時を彷彿とさせる景色だった。
何だあれ? 昔戦った時には使ってなかったよな?
まぁ神も成長するという事か。
ライトニングは深呼吸をし、嗤った。
「あれは、隕石か! 落ちてくる、逃げるぞ! アカネと、えっとぉ~、ライトニングとそのお仲間さん!」
テンヤが水色のレンズ越しに細目で岩をみてそう叫んだ。
「分かった」
アカネはそれに賛成し、テンヤと共に逃げようと隕石に背を向けた。
「その必要はありません」
逃げようとしている二人に、ミズキがそう呟いた。
「いや、いくらそいつが強くても、ライムを吹っ飛ばした奴だぞ! せめてあいつが戻ってくるまでは耐えないと」
「いえ、ご心配ありません」
ヤバい、ミズキが必死にライトニングの正体を隠そうとしてくれてる。
まぁ実際、ここで正体をばらしたら、タルタロスにもばれるんだよな。
でも、このままだとミズキとテンヤ達の仲が悪くなってしまう。
それは困る。この戦いが終わった後は、テンヤ達も僕の組織に入ってもらうつもりだからな。
ハァ~、こいつらにはいずれ話す必要があるし、今話しても問題はあまりないか。
その間も、ミズキとテンヤ達は言い争っていた。
「ハァ~。逃げなくても大丈夫。だって、僕はライムだから」
僕がそう言うと、辺りは静まり返った。
数秒後。
「ハァァァ~!!!」
ミズキ以外の三人は、大きな声をあげ、暫く唖然としていた。
「ラ、ライトニング様。正体を明かしても宜しいのですか?」
ミズキは困惑と焦りでしどろもどろになりながら、恐る恐るそう聞いてきた。
「うん、この二人は信頼できる仲間だからね。ただ、状態を明かしたことで、確実にこの場でタルタロスを倒さないと、後々面倒くさくなる展開にはなっちゃったかな?」
「おい! てことは、今の所悪魔と仲が良い悪魔以外の奴はお前しかいないということだな?」
タルタロスは、苦笑いをしながらそう聞いてきた。
「う〜ん。始めてそういう話を聞いた時には、この大陸中を探せば未だ他にも居るかも知れないじゃん。って思ってたけど、君達が他に悪魔と仲良くしている人を見つけていないという事はそういう事何じゃない?」
ライトニングは軽い雰囲気で話した。
「ハハッ、お前の言う通りそうかもな。じゃあ我ら邪神の敵はお前だけということだ」
「そうなるね。それで、いつまでその隕石を止めておくつもりだ?」
不敵な笑みを浮かべているライトニングは、周りの者から見ても確実に邪神以上の風格を放っていた。
「ふっ、神々の世界で生き残ったからって随分生意気な奴だ」
タルタロスはそう言いつつ、もう一度右腕を上げた。
タルタロスの極限まで鍛え抜いた筋肉は肥大し、血管は浮き出て、赤黒のオールバックにした髪は夜風で揺らめいている。
「押し潰れろ! 異端者!! 『流星群!』」
タルタロスがそう言いながら、思いっきり右腕を下げ、無数に浮かぶ岩の塊は、僕達目掛けて炎を纏いながら一直線に落ちてきた。
だが、ミズキとテンヤ達はその場に留まっている。
皆んな僕を信頼してくれてるんだな。
なら、その信頼に応えないと組織の盟主は名乗れない!
僕は漆黒の剣を鞘に収め、『破滅帝』を解除し、右手の拳を握った。
ライトニングは右手に魔力を集中させ、黄色い雷を纏った。
「麻痺り、砕けろ! 『超電磁砲之拳!』」
ライトニングがタルタロス目掛けて拳を大振りすると、爆音と共に雷の光が伸びていった。
隕石は雷の光に触れる度、チリのように粉々になっていった。
数秒後。
雷の光は消え、周りにあった雲は消え去っていた。
「フハハハハ。お前の魂之力便利だな!」
「ちっ、こっちは何回も転生や転移を繰り返してやっと手に入れたってのに。やっぱクソゲーだなお前は」
ライトニングが見上げる先には、漆黒の水を自身の前に渦巻かせ、ピンピンしているタルタロスが居た。
「もうちょっと時間があったら、反射の魂之特性も使いたかったが、まぁしゃあねぇか」
「ほんじゃあまぁ、次はこれを耐えてみせろ! 『魔之神』、『魔法之雨』」
タルタロスはそう言うと、様々な属性の魔法を何百と発動し、ライトニング達目掛けて降らせた。
「アカネ、俺の手を掴め。離れるんじゃないぞ」
「分かってる」
テンヤとアカネは、手を繋ぎながらテンヤの指示に合わせて、無数に降ってくる魔法を避けている。
「ミズキ! ……は大丈夫か」
ミズキは、水の壁を使って全身を覆い身を守っていた。
ミズキも強くなってるんだろうけど、タルタロスの魔法を受けきるなんて凄いな。
でも、魔力量がめちゃくちゃ増えてるわけじゃないのに何でだ? あれも魂之力のお陰なのかな。
だとしたら、めちゃくちゃ強い魂之力何だろうな。いつか聞いてみよっと。
「てかさ、お前その体での戦闘経験が浅いのに、よくタルタロスの魔法を避けれてるな」
ライトニングは魔法に当たるすれすれの間合いを見極め、淡々と避け続けていた。
「それは、このフューチャーメガネを使い、相手が魔法を撃つ直前に起きる波動を瞬時に解析し、これまでに集めた膨大な魔法のデータと量子力学で使う波動方程式などを基に、魔法の動きを予測して、避けていると言う訳ですよっと」
テンヤはアカネと呼吸を合わせ、アカネに指示を出しながらそう言った。
「てか、話してる場合じゃないんだよな。アカネ右に3歩だ!」
「了解」
テンヤとアカネは息を合わせ、テンヤの指示で魔法の間を掻い潜り、逃げ続けている。
へぇ~、僕が感覚でやってる事を科学を使ってやってるのか。なんか手間を掛ける方がかっこいいから嫉妬しちゃうな。
まぁ前世で化学知識より、最強になりたい意思を植え付けるのを優先してたから仕方ないんだけど。
「まぁあまりに速いと、俺自身の反応が遅れるんだけどな」
「説明してくれたのはありがとうなんだけど。ごめん、よく分かんなかったわ」
「大丈夫。私も良く分かってないから」
アカネは僕を励まそうとしたのか、元気良くそえ言った。
「なんかありがとう、アカネ。でも、そんなに便利な物、アカネにもあげたら良いのに。なんか理由があるのか?」
「あぁ、あるよ。このメガネの力を正確に使うには、何故予測できるのかを理解して、的確な箇所に魔力を流さないといけないんだ。つまり、量子力学とフューチャーメガネの構造を完璧に把握しておく必要があるから、今の所俺しか使えないんだ」
「確かに、その条件だとテンヤしか使えないか」
そんな事を話しながら避け続けていると、上空で浮かんでいるタルタロスが左手を空に向け、魔法の準備をし始めた。
「ちっ、流石にそれじゃあ倒せんか」
僕が上空を見上げると、そこには漆黒に染まり、夜の空に陽炎揺らめく巨大な炎の玉が浮かんでいた。
「何だそれは!」
ライトニングは拳を強く握り、低い声で、叫んだ。
「これか? これはお前の『破滅帝』と『太陽神』の効果を複合させた最強かつ、この銀河系に産まれしもう一つの太陽……」
ちっ、そう言えばコイツはデフォルトで神授之権能も全部使えるんだったな。
「破滅の太陽に焼かれ、溶け落ちろ。『破滅之太陽』」
タルタロスが左腕を僕らの方に向けると、漆黒の太陽がこちらに迫ってきた。
「駄目だ。データに無い魔法だから未来が見えない!」
「とりあえず逃げましょう。何かまずい気がする」
テンヤとアカネは慌てながら後方へ走り出した。
くそっ! もっと早くから剣に魔力を込めていれば粉みじんに切り刻めたのに。
魔力を込めないと強い魔法や技を放てないのは、今後の課題だな。
「僕でも皆んなを守りながらあの魔法の処理をするのは無理だな。仕方が無い、逃げるぞミズキ」
「はい」
僕とミズキもテンヤ達に続いて走り出した。
「その必要はありません」
この声は、ノアか!
僕が後ろを振り向くと、人影が下の方から飛び出して上空へ飛んでいった。
「そんな危険な魔法、撃たせはしませんよ。『魔支配』、『魔法停止』」
ノアがそう言いながら指を鳴らすと、漆黒の太陽は跡形もなく消え去った。
「ハハッ、お前か! 俺の力を持ってるのは!!」
タルタロスは興奮気味にそう叫んだ。




