71 天才少年と二人の子悪魔少女
俺は生まれた時から物を作ることが好きだった。
俺の名は如月天夜。高校2年生にして、天才発明家だ。
小学生の頃には、既に色々なおもしろロボットを発明しては、よく賞をもらっており、一時は天才少年として、よくテレビにも出演していた。
だが、そんな事がいつまでも続くわけもなく、俺のブームはとっくに過ぎ去り、俺はすっかりテレビに呼ばれることはなくなっていた。
それでも、俺は発明を辞めることはしなかった。
当然だ、テレビに出たくて発明を始めた訳じゃないからな。
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今、俺は皆んなが帰って誰も居ない科学部の部室で次に作ろうとしているロボットの設計図を見ながらロボットを作っている。
「う〜ん、この部品はこっちに変えたほうが良さそうだな……。って、ヤベェ眠くなってきた。ふわぁ〜」
俺は、ずっと次に何を作るかを考えながら実験をしていたので、頭が回らなくなってきて、机に突っ伏して寝てしまった。
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数分後。
「お〜い、天才君。そろそろ帰る時間だぞ〜」
俺が顔を突っ伏していると、聞き馴染みのある、低めだがどことなく明るい雰囲気も纏っている声が耳元でそう囁いてきた。
「う〜ん、俺は疲れてるんだ、もう少し寝かせてくれ」
「いやいや、もう下校時間ギリギリだし駄目だよ。ほら、頑張って起きるよ〜」
俺は声の主に両腕を引っ張られながら起きた。
「ふわぁ~」
俺は目をこすりながら、声がした方向を向いた。
するとそこでは、紺色の瞳と紺色ボブヘアで、引き締まった体をしている幼馴染の東雲明音が夕日に照らされながらこちらを見ていた。
「やっぱり明音だったか。陸上部はもう終わったのか?」
「もうとっくに終わってるよ。いつも通り待ち合わせしてたのに来ないから、いつも通り起こしに来てあげたんでしょ」
明音は、いつも通りという言葉を強て少し不機嫌そうにしながら俺に顔を近づけて、そう言った。
「まぁ良いわ。さっさと帰りましょ」
「へ〜い」
俺は適当にそう返事し、ロボットの部品の片付けを始めた。
「もう。いつもそうだけど、動きが遅い。しょうがないから私も手伝ってあげる」
俺がゆっくり片付けていると、明音も部品を片付け始めた。
「手伝ってもらって悪いな」
「いつもの事なんだし、別に礼なんて良い」
明音はそう言って、部品を袋に分けていった。
俺達が片付けをしていると、校庭の方から明音を呼ぶ女の子達の大きな声が聞こえてきた。
「明音〜。また明日〜」
声が聞こえると、明音は咳払いをしながら窓の方に近づいていった。
「ニッヒヒ〜、また明日ね〜」
明音は声を少し高くして、女の子達に向かって手を大きく振りながらそう言った。
「ほんと、明音って俺意外と話してる時は明るいよな」
俺は、工具などを入れ終わったカバンを背負って立ち上がりながら、明音にそう言った。
「何で? ダメなの? 天夜の前でぐらい素で居させてよ」
「別に、駄目だなんて一言も言ってないだろ」
そう言って、俺達が部室の扉を開けた瞬間。扉の先から、前が全く見えない程の強い白い光が発せられた。
「なっ! 何だ!!」
「眩しい!!」
俺達は思わず目を押さえたが、そのまま白い光に包まれ、意識を失った。
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一方その頃。混沌の世界では、ライムが黒雷無双を完全に会得し、『炎竜 ヘルグラン』に見事勝利していた。
そして、またまた時を同じくして、ムーアから海を少し北東に進んだ上空。
そこでは魔神タルタロスが、悪魔の女の子と、ある計画を実行しようとしていた。
悪魔の女の子はピンクのパーカーを羽織り、白の短パンを履いて雪の様な真っ白く美しい足を露出しており、短パンの後ろに空いている穴からは悪魔の尻尾が出ていて、いかにも小悪魔っぽい可愛らしいファッションをしている。
容姿はライムと同い年ぐらいで、フードを被って少し隠れている髪はウェーブショートボブの薄いピンク、瞳は淡い碧眼をした自信に満ち溢れた凛々しいオーラを纏う女の子。
「おい、ミア。本当に責任はお前一人が背負うんだよな?」
「もちろん。私の得意魔法は精神魔法で、そこに追加効果で、『絶対に相手を支配する』効果が付いてるから、転移した奴がどんな奴だろうと好きにはさせない」
ミアは、不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
「まぁでも、転移した奴がお前より強かったら、その追加効果も意味無いんだけどな」
「チッ、うっさいわね。さっさとやってくれる?」
ミアは、タルタロスを睨みつけながらそう言った。
「はぁー、邪神と言えど、俺も神の一人なんだけどな。じゃあ、まずはここにでかい島を作るか」
タルタロスはため息を吐きながら、両手を前に出し、魔力を込めた。
「じゃ、やりますか」
タルタロスが魔法を発動すると、海と海底は揺れ、見る見るうちに海の中から地面が盛り上がって、更地の大きな島が現れた。
「よし、これで準備は整ったんだし、早速転移魔法を発動してね」
「へいへい」
タルタロスがそう言うと、空気は揺れ、転移魔法を展開した所からは、まばゆく光る白い光が広がった。
そう、天夜と明音が“元から“転移する事が決まっていた時間に、偶然タルタロスが転移魔法を発動したのである。
白い光が徐々に収まり、天夜と明音が転移し終わった。
「ここは何処だ?」
天夜は、冷静に辺りの景色を見渡していた。
「な、何なの?」
明音は、不安そうにしながら、天夜の腕に抱きついた。
「ハハッ、一人だけ転移させようとしたのに、偶然2人も同時に転移するとはな。運が良いじゃないか」
「えぇ、2人共アタシの奴隷にしてやる」
ミアはニヤニヤしながら、天夜達の方を見てそう言った。
「じゃあ、予定通りに魔力の覚醒を引き出すか」
タルタロスはそう言うと、天夜達の足元に魔法を展開した。
「えぇよろしく、魔神様」
次の瞬間、天夜達は紫色の渦に巻き込まれた。
「何だこの感覚。体が……いや心が痛い!!」
「いや、ヤメテ!!」
天夜と明音は暫く奇声を上げて、悶え、苦しんでいた。
数秒後。紫の渦は消え、天夜達は地面に倒れこんでいた。
「ふっ、無理矢理覚醒させたから気絶しちまったか。後は任せたぞ、ミア」
「りょーかい」
ミアが適当にそう返事すると、タルタロスは何処かへと飛んで行った。
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天夜達が気絶して数時間後。辺りが夕暮れに染まりかけていた頃、天夜達はようやく目を覚ました。
「くっ、体中が痛え」
「天夜。私、何か心の中が変な感じする」
天夜達はそう言いながら、起き上がった。
「なっ! 明音。何だそのピンクの髪色……」
「天夜こそ、水色の髪が生えてる……」
「は?」
そう言い合う二人は、天夜の方が黒髪に水色のメッシュがまばらに入った髪色に変化し、明音の方は紺髪にピンクのインナーカラーが入った髪色に変化していた。
そう、2人は強制的に魔力の覚醒をした事で、髪色だけ少し変化してしまっていた。
「おっ! やっと起きたか。おはよう」
そこに、天夜達が起きるのを待っていたミアが話しかけた。
「っ!」
「ひっ!」
2人は自分達が置かれている状況を思い出し、恐怖で足が竦んでおり、明音は天夜の影に隠れた。
「あぁー、自己紹介がまだだったな。アタシは魔王様に仕える魔将軍ミア。アンタ達の主人だから、逆らわない事」
ミアは、天夜達に釘を刺すように強く言った。
天夜達は状況を整理しようとして、暫くの間口を閉じていた。
だが、天夜は直ぐに冷静さを取り戻し、ミアに対して話しかけた。
「な、なぁこの状況から推測するに、俺達は転移させられたんだろ? その目的を教えてくれないか?」
そう聞かれたミアは、少しの間顔を曇らせていたが、直ぐに答え始めた。
「目的……そうね、アンタ達を転移させた目的は、魔族以外の知的生命体をこの世界から駆逐する為よ」
ミアは不敵な笑みを浮べて言った。
「まぁ知った所で、お前達はもう既にアタシに逆らえなくなってるから何もできないんだけど」
「そうか。まぁ元々逆らう気はないが、話してくれてありがとう。それで、逆らわない変わりにと言っちゃあれだが、この世界の歴史について調べたいんだが、そういう本がある所に案内してくれないか?」
「何故、この世界の歴史を知りたいの?」
「俺は文化の違う国に行く際も先ず、歴史を知り、その国の文化や当たり前とされている事を知って、それに従う事が大切だと思っている。それが世界単位なら尚更だ」
天夜はミアにそう力説した。
「後、単純に魔法の世界の歴史に興味がある」
そう答えられたミアは腕を組んで考え込んだ。
「う〜ん。あっ! それなら大陸の北西にあるヒストア王国に行けば? あそこなら大体の歴史は知れると思うし」
「ヒストア王国?」
「ヒストア王国は魔法と歴史の研究が重要視されている国で、多くの考古学者や魔法使い達が研究を続けている。この大陸で歴史を調べるには一番最適な場所よ」
「それならそこに行きたいんだが良いか?」
「勝手にすれば? 私はこの島をアタシの奴隷を使って国にしとくからさ」
国にするって簡単に言いすぎでしょ。でも、悪魔なら簡単なのか? そう言うのも調べたほうが良さそうだな。
「でもさ、勝手にどっかに行っても良いのか?」
俺は念の為、ミアにそう聞いた。
「ふっ、アタシの魔法は、支配した奴とどんなに離れていても魂で繋がっているから、裏切ろうとしてもすぐに分かるの。分かったら変な気を起こさないことね」
ミアはそう言って、紙に何かを書きながらポケットからお金を出した。
「はい、これがヒストアまでの行き方と人間達のお金。大陸まではアタシが浮遊魔法で連れて行ってあげる」
「ありがとうございます」
天夜はそう言いながら、紙とお金をミアから受け取った。
「あ、ありがとうございます」
天夜の陰に隠れていた明音が恐る恐る出てきてミアに礼を言った。
「礼なんて要らない。さっさと大陸に行くぞ」
そう言うミアの顔は、少し赤くなっていた。
こうして、いきなり異世界転移させられた俺と明音は、ミアに連れられながら、ヒストア王国に向けて西に進むことになった。




