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04 魔王の倒し方

 忍者の悪魔を倒してから2日が経った。


 アンナには村の周辺の調査をしてもらっている。


「雷魔法って便利だなぁ。身体強化までできるなんて」


 そうそう、助けた獣人は見た所犬の獣人だ。


 猫の獣人の皆と仲良くできるかなと心配もしていたが、5歳ぐらいの子どもたちにそんな心配は無用だったらしい。


 僕はノアと一緒に村を見て回っていた。


「なぁなぁ、犬の獣人は鼻がいいって本当なのか?」


「あぁ、魔力の匂いだって嗅ぎ分けられるんだぜ」


 犬の獣人の子は、両手を腰につけ、自慢げにそう話した。


「すっげー」


 別の所では、何をして遊ぶかを話し合っているみたいだ。


「なぁなぁ、鬼ごっこやろうぜ!」


「オニゴッコ? 何だそれ?」


「鬼ごっこはな、一人が狩る側でそれ以外が獲物役をやる狩りの練習だよ。ライム兄ちゃんが教えてくれたんだ」


「へぇー面白そうだな。やろうぜ」


 村では、犬と猫の獣人の子供達がワイワイ話し合っていた。


「うんうん、みんな仲が良くて何よりだ」


 僕は腕を後ろで組みながら村をノアと共に見て回っている。


「そうですね。これからも仲間を増やしていくので、今から仲が悪かったら先が思いやられますし」


 暫く僕達が村を見て回っていると、周辺の調査をしていたアンナが帰ってきた。


「ただいま、ライム」


 アンナは突然僕の前に現れた。


「うん。おかえり、アンナ」


 僕は、アンナの耳を右手で触りながらもう片方の手で頭を撫でてあげた。


「もう、耳あんま触んないで……」


 アンナは顔を赤らめながら、耳に触れている僕の手を退けようと手を上げてきた。


「へぇ~。でも、尻尾は正直みたいだよ?」


 僕はニヤつきながらアンナの尻尾の方を見た。


 そう、実はアンナの尻尾は嬉しそうにゆらゆらと揺れていたのだ。


「っ!」


 それに気がついたアンナは、恥ずかしそうにうつむきながら頬を赤くした。


 僕達がそんなやり取りをしていると、子どもの相手をしていたノアが僕達のところへやって来た。


「おかえりなさいアンナ。それでまだ残っている獣人はいましたか?」


「えぇ居たわ。でもほとんどの獣人が滅んでいたの」


「滅んでいた?」


「そのままの意味よ。大人だけでなく子供までもが殺されていたのよ」


「何故だ?」


 僕はアンナに質問した。


「私も分からないわよ」


 アンナは首を横に振りながら話した。


「ライム、貴方はどう思う?」


「うーん。もしかしたら、戦力を増やす必要が無いことを勘づかれたのかも」


「どういうこと?」


 アンナとノアは、ライムに耳を傾けた。


「ほら、魔王には息子がいるだろ。そして悪魔や魔物も大勢居る……」


「それがどうしたって言うの?」


「僕さぁ、赤ん坊の頃からずっとこの世界の歴史を調べてたんだよ」


「ライムはやっぱり化け物ね」


「そうですね」


 2人は互いに僕を見ながらそう言った。


「そしたらさ、1000年前に勇者達が魔王に負けてから今までの間、ずっと勇者が生まれてないみたいなんだよ」


「勇者が生まれないとどうなるんですか?」


 ノアは不思議そうに首を傾げながら尋ねてきた。


「魔王が倒せないんだよ」


「なんで? そもそも勇者って魔王を倒したら勇者って呼ばれるんじゃないの?」


 まぁアンナの言い分は正しい。


 だが……。


「それが違うんだよ。この世界では魂に攻撃できるやつのことを勇者って呼ぶらしい」


「魂に攻撃?」


 ノアは、不思議そうにしながら僕に質問した。


「そうだ。なぜなら魔王の一族は他の生物とは違い、魂を滅ぼされない限り死なないんだって」


「チートね」


「そうだな。そして魂を攻撃する方法は未だに見つかっていないんだ。だから、魔族以外の種族は生まれつき魂に攻撃できるやつが生まれるのを待っていたんだ」


「でも、それが何故魔王が戦力を増やさなくて良い理由になるの?」


 アンナがそう僕に聞いてきた。


「それは、まぁだってさ。人間より力が強いと言われている僕ら獣人の大人達ですら、一方的に魔王軍の力でやられたんだ」


「それなのに、勇者の居ない人間に怯え、本能を抑えてまで戦力を増やす必要は無いと思う」


「それもそうね」


 そこまで話すと、ノアが不思議そうに質問してきた。


「待ってくれ。人間ってそこまで弱いのか?」


「うーん、それがわかんないんだよな。家にあった本には獣人やエルフ、悪魔のことは書いてたけど人間の歴史については何故かあやふやに書かれていたんだ」


「それは怪しくないですか? だってライムのお母さんって全ての種族の歴史を調べていたんですよね?」


「あぁそうだ」


「なにか裏がありそうね」


 僕達は頭を抱えて、暫く無言で悩んでいた。


 うーんどうしよっかなぁ。


「そうだ!」


「どうしたの? ライム」


「あのさぁ、僕が人間の国に行って人間の強さを調べるってのはどう?」


 僕がそう言うと、2人は少し考えている様子だった。


「確かにあなたが行くのが一番安全だわ。でも、まだ生き残っている獣人も居るけどどうするの?」


「それはアンナとノア、そしてここに居るみんなで救ってくれ」


 僕は何も考えてない風に軽く言った。


「ライム、正気なの? まだ殆どの子がまともに戦えないのよ?」


「それは大丈夫。僕がみんなを強くするから……。それに、助けた犬の獣人にも強い子がいるみたいだしね」


「え? どの子だ?」


 ノアは周りの子供を見回しながら話した。


「それはね、君だよ」


 ライムはそう言いながら、一人の女の子に近寄った。


「どうも初めまして。僕はサンダーパラダイスの盟主、ライトニングです」


 ライムがそう話しかけた犬の獣人の女の子は、色が濃いめの青目と青髪ロングで、前世のハスキー犬を彷彿とさせるような容姿をしていた。

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