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雷鳴の猫王と勇者達の旅路〜猫の獣人に転生した中二病、勇者達を魔王の元まで導かん〜  作者: 一筋の雷光
黎明編

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50 ヒーローは魔王?

 時は進み、世界が月明かりに照らされる時刻。ムーアに無数にある人気の無い廃墟の倉庫。


 そこでは、武器を片手にギラついている男達と椅子に縛られ、身動きを封じられた紫色のショートヘアに赤と水色のオッドアイの瞳をした女の子が居た。


「へっ、お前が王に逆らうからいけないんだぜ」


 金髪でチンピラ感のある一人の男がナイフを片手に女の子に近づいてた。その顔は下心を隠そうとせず、ただただ自分のことしか考えておらずこちらの気分が悪くなる様な顔をしていた。


「あんたの国ではどうかは知らんが、この国じゃ王の奴隷になるなんて光栄なことなんだ。それなのに」


 倉庫にあるものを積み上げた高台で、ガタイが良く、腰に剣を携えている男が女の子を見下ろしながら話した。


「くっ、一国の王女かつ姉である私を奴隷にしようとするのも頭おかしいですけど、誘拐を命ずるなんて弟には本当に失望しましたよ」


 女の子はガタイの良い男を睨みつけながら話した。


「おぉおぉ、威勢だけはあるんだな。だがあんたの弟の言った通り、魔法と歴史の研究が最重要とされるヒストア王国のクロエ王女だけあって、体力は無いからあっさりと捕まったな」


 ガタイの良い男は鼻で笑いながら話をそらした。


「あっさりって、私が逃げてから随分と時間が経ってると思いますが?」


 クロエは馬鹿にしたようにふっ、っと笑いかけながら話した。


「ハッ、それはスラムの連中が居ない所に誘導してたからだよ。クロエ王女のあられもない姿は、スラムの奴らには勿体ないからな。俺等だけで楽しませてもらうぜ」


 ガタイの良い男はニヤリと不敵な笑みを浮かばせながら話した。


「本当に気持ち悪いです」


 クロエは軽蔑の意を込めた目でガタイの良い男を睨んだ。


「ハッ、言ってろ。ここに居る奴らはそういう強気な女の相手をするのが好きな奴らだからよ。まぁ俺は素直な女がタイプだけどな」


 ガタイの良い男は、クロエの顎を上げて自分の顔に近づけていた。


「さぁ、お前等。そろそろ始めても良いぞ」


 ガタイの良い男は、周りの男に聞こえるように話した。


「へへっ、じゃあ俺から始めさせてもらうわ」


 そう言って、金髪の男がクロエの胸元を掴んだ。


「なっ! ずりーぞ」


「うるせぇ。俺が捕まえたんだから当然の権利だろうが!」


「おいおい、早く始めろよな」


 ガタイの良い男は、溜息を吐いて呆れていた。


「分かってますよ」


 男はそう言って、クロエの服を破き始めた。


「ひっ!」


「へっ、いい反応するじゃねぇか」


 男は更に服を破こうとした。


 その時、近くに誰も居ないはずの倉庫の外から一つの足音が聞こえた。


「あん? こんな時間に誰だ? おい、お前見てこい」


「はぁ~分かりましたよ」


 そう言って、ガタイの良い男の近くに居た腕を組み眠そうにしながらクロエを見ていた茶髪の男が倉庫の扉まで歩いて行った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「ちょっと。誰だか知らないですけど、今此処は立入禁止にしてるんで、別の場所に行ってもらえません?」


 茶髪の男はそう言いながら倉庫の扉の取っ手に手を伸ばし、扉を開けようとした。


「っ!」


 茶髪の男の背筋が凍り、一気に目が覚めた。今まで感じたことも無い殺気を感じたのだ。


 茶髪の男は、咄嗟に後ろに下がろうとバックステップをした。


 その瞬間、雷鳴が鳴り倉庫の扉が変形した。と思ったのもつかの間、倉庫の扉が茶髪の男目掛けて飛んできた。


「ぐっ!」


 空中に居た茶髪の男は避けることが出来ずに扉とぶつかった。


 茶髪の男は扉と共にガタイの良い男が座っている所まで吹き飛ばされた。


「おい何だ!」


「何が起こった!」


 男達は慌てて戦闘態勢に入った。


 そして、土煙の中から一人の人影が見えた。


「ん? 獣人か?」


 誰かがおもむろにそう呟いた。


「おいおい、獣人が相手かよ。おもしれぇじゃねぇか」


 そう言って、ガタイの良い男が座っている高台から飛んで降りた。


 少しして、獣人が土煙から姿を表した。男は赤と黒で統一した服装で、上には毛皮のコートが一枚、下はサラサラとした生地のズボン。そして、顔には赤と黒で描かれた狐の面を被っており、その姿はまるで獣を従える獣神と魔王を混ぜた様な姿をしている。


 獣人の男は、後ろにある月光により照らされており、逆光で獣人の男の姿がほとんどシルエットと化している。


「ハッ、よく見えねぇが随分と気合の入った格好じゃねぇか。てか獣人も服を着るんだな」


 ガタイの良い男が馬鹿にしたような口ぶりで話した。


「アハハハ、ちょっと笑かさないでくださいよぉ~」


 周りに居る男達は皆お腹を抱えて笑った。


「ふっ、そんな事を喋る暇がお前らにあるとでも?」


 その声は、その場の空気を震わせるような低く、しかし何処か子供っぽさを感じる声だった。


 獣人の男のコートが風でなびく度、月光を反射している。


「チッ、ちょっと俺等人間より力が強いからって粋がんなよ。クソガキが」


 ガタイの良い男は舌打ちをしながら獣人の男を睨みつけた。


「おかしいな。この国では力が全てなんだろう? 現にお前らは自分より力の弱い女の子を誘拐して楽しんでるじゃないか」


 獣人の男はガタイの良い男の言葉を軽く流した。倉庫は2人の殺気で確かに空気が重くなっていた。


「あぁ、そうだな。だが、例え人間より力が強い獣人でも、武器も持っていないガキがこの数相手に勝てるとは思えねぇんだが?」


「そうか? お前がそう思うのなら、そうなのかもな」


 2人は互いに譲らず煽り続けた。だが遂に終わりを迎える。この言葉の戦いを先に終わらせたのはガタイの良い男だった。


「チッ、いちいち鼻につくガキだな。直ぐにでもあの世に送ってやる。おいガキ、名前ぐらいは聞いといてやる。名乗れ」


「俺は己が力を正義とする者、アシュラ」


 アシュラはガタイの良い男の質問に答えながら拳を握った。


 アシュラが名乗ってから暫く倉庫には静寂に包まれた。この場にいる全員がお互いの間合いを探り合っているのだ。


 少ししてガタイの良い男が静寂を破った。


「ハッ、アシュラか。強かったら覚えといてやるよ! お前等掛かれ!」


 ガタイの良い男がそう言うと、周りに居た男達が一斉にアシュラに向かって走り出した。


「ふっ。比べるまでもないが、やはり邪神より遅いな。これでは本気を出すには惜しいな」


 アシュラはそうつぶやき拳を握った。そしては目を瞑り、その場で動きを止めた。


「おいおい、ビビってんのかぁ?」


 そう言いながら、一人の男がアシュラの首をナイフで斬った。


 その瞬間、アシュラの姿が男の視界から消えた。


「それは残像……」


 アシュラは男の耳元でそう囁いた。


 次の瞬間、強烈な爆発音が倉庫に響いた。そう、この音はアシュラが地面を蹴った際に起きた音で、アシュラは音より速く移動していたのだ。


「っ!」


 気付いた時にはもう遅い、男はアシュラにみぞおちを殴られ吹き飛んでいった。


「へっ、中々やるじゃんかよ。次は俺の相手をしてくれよ」


 そう言いながらガタイの良い男が剣を持ってに突進してきた。


「ふっ、俺とは言わず全員相手にしてやるよ」


 アシュラはそう言いながら魔力を拳と足に集中させた。


「正直、俺が本気を出すにはもう少し力が足りないが、一人ずつ相手にするのも面倒だ。俺の奥義で終わらせてやろう」


『黒雷無双』


 アシュラがそう言うと、周りに漆黒の雷が漂い始めた。


「っ! 何だその色は!」


 男達は漆黒の雷を目の当たりにし、驚いていた。それもそのはず、この世界には通常漆黒の雷を出す魔法使いはいないのだから。


 初めて見る光景に戸惑い、男達の踏み込みが少し甘くなってしまった。


 その瞬間を強者が逃すはずがない。アシュラは深く踏み込み、拳を構えながら飛び出した。


『奥義 闇夜の黒き一閃』


 アシュラがそう言うと、アシュラの体を漆黒の雷が覆い尽くし、倉庫の影も相まってアシュラの姿が男達からほとんど見えなくなっていた。


 次の瞬間、男達は確かに自分達の前を通り過ぎる何かを感じた。感じただけだった。

 感じた頃にはもう遅く、既にそこには男達の肉体は細胞も残らず消えていた。


 闇夜をさらなる漆黒にて破壊する静かなる漆黒の一閃。それが『奥義 闇夜の黒き一閃』。


「どうなってるのよ」


 クロエは一瞬の出来事に理解が追いつかず呆然とアシュラを見ていた。


 アシュラは男達の全てを破壊して倒したので、返り血を浴びていない。その不気味な光景がより一層クロエの心を恐怖へと落としていった。


 アシュラは握った拳を見つめながら立っていた。


「やはり、お前らには勿体ない力だったな」


 アシュラはそう呟くと、クロエの元に歩み寄った。


「ひっ!」


 クロエは恐怖で思わず目を瞑った。


 だが、少しすると腕や足が自由になる感覚をクロエは感じた。


「拘束が解けてる?」


 クロエは目を開け、自身の腕や足を動かした。確かに拘束は解かれていた。

 ただ、何故拘束が説かれたのか分からず、事実だけを整理する事しか出来なかった。


 何故なら、クロエにとってアシュラは、いきなり現れ、大量虐殺をした凶悪犯で、これから自分も殺されると本気で思っていたからだ。


「あっあの。有難う御座います」


 クロエは事実を整理した後、取り敢えず感謝の言葉を言わなければと思った。


「別に礼なんて良いよ。それより、君の名はなんて言うんだ?」


 アシュラの声は、穏やかな声色に変わっていた。


「私はヒストア王国の王女クロエ・ヒストアと申します」


 アシュラの話し方が変わったことにより、クロエの緊張が少し解れ、明るい雰囲気に変わった。


「へぇ~、王女だったんだぁ」


 アシュラはそう言って頭を縦に振りながらそっぽを向いた。


 おいおいまじかよ。確かに物語の重要人物だとは思ってたけど、まさかの王女様を救っちゃったよ。メッチャテンション上がるんだけど。


 アシュラはそんな事を思いながら心を踊らせ、心の中でガッツポーズをした。

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