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雷鳴の猫王と勇者達の旅路〜猫の獣人に転生した中二病、勇者達を魔王の元まで導かん〜  作者: 一筋の雷光
黎明編

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49 動き出す闇の世界

 ライムがゼーレ達の元に向かっていた頃、魔界の最北端にある魔王城のとある一室。

 そこには、魔王の側近である邪神達が集まっていた。


「よっと」


 タルタロスは、窓から魔王城へ入った。


「やぁ〜タルタロス。オリードはどうだったんだ?」


 そこには、他の神達がそれぞれ豪華な椅子に座っていて、金髪ウェーブショートに緑のフードを深々と被り目元を隠した男がタルタロスに話しかけた。


「あぁー、なんかお前の妹が噂のライムを連れてきてたぞ」


「へぇ~」


 金髪の男はそう言いながらそっぽを向いた。


「何だよ、その興味ないですよみたいな態度は。本当はシスコンのくせに」


「ちっ、そこまでじゃねぇよ」


 金髪の男はそう言いながら、タルタロスを睨んだ。


「あぁ〜、分かった分かった」


 タルタロスはそう言って軽く流した。


「てか、魔王のやつはどこに行ったんだ?」


 タルタロスが金髪の男に質問した。


「あぁ、魔王ならいつも通り息子を説得しに行ってるぞ」


 それを聞いたタルタロスは、大きくため息を吐いた。


「はぁ~、ナハトの野郎もよく折れねぇよな。()()()を受け入れれば、一瞬で最強になれるってのに。だって、今のナハトでも充分()()()を満足させれるだろ?」


「誰かに頼って強くなるのが嫌いらしいからな」


 そのやり取りが終わると、漆黒の短髪に黒装束で目元を隠した細い体型の男が話し始めた。


「それで、タルタロス。勿論ライムを殺すなんてことはしてないよな?」


 その声はとても気だるげな声をしていた。


「おう、勿論してないぜ。……てか正直な所、他の神に邪魔されかねないあの場所で殺せそうに無かった」


 タルタロスは、言葉を詰まらせながら話した。


「何故だ? お前なら他の神に邪魔される前に殺せるだろ?」


 黒装束の男はタルタロスに問いた。


「いや、それがライムはデスラントの本気のパンチを食らって生きてたらしいぜ」


「っ!」


 その瞬間、玉座の間の空気が凍てついた。


 少しして、紫色の短髪に青い瞳をした筋骨隆々で筋肉が巨大な男が話し始めた。


「おいおいそれは確かなのか? だって、破壊神であるデスラントのパンチは、力の神である俺様の衝撃を与える攻撃とは違って、触れたものを破壊するパンチ何だぞ。神でもない奴が耐えれるとは思えないが」


「それは俺も思ったが、どうやら本当らしい」


 そして、また玉座の間に暫く静寂が訪れた。


 暫くして、黒装束の男が話しだした。


「なぁタルタロス、確かライムって勇者パーティーだったよな?」


「あぁそうだぜ」


 タルタロスの返事を聞くと、黒装束の男は不敵な笑みを浮かべた。


「ならさ、そろそろムーアに着く頃だろ? そして、ムーアはそろそろアレが始まる時期だ」


「あぁそうだが。……まさかお前! あの作戦を実行するのか!?」


 タルタロスの顔が青ざめた。


「あぁ、あの作戦ならライムは殺せなくとも、勇者とその仲間を運良く殺せる可能性があるからな」


 黒装束の男は不敵な笑みを浮かべている。


「確かにあの作戦なら行けるかもしれないが、作戦を実行すれば人間の国がいくつも滅びかねないぞ。そうなれば、オリードに居る連中が黙ってないだろう」


 金髪の男は、黒装束の男に反論した。


「そうだな。でも、神は神を殺せないだろ? 天使が俺等に勝てるわけがねぇし」


 黒装束の男は金髪の男の意見を一蹴した。


「そうだが、そのルールはヘルトのジジイとゼイトが作ったルールだ。作った本人なら破る判断をする可能性だってある」


 金髪の男は更に反論した。


「ふっ、アイツラは自分達のルールを破るなんてことはしない」


「まぁ、確かにそうだな」


 タルタロスは黒装束の男の意見に賛同した。


「はぁ~分かった、その作戦に乗ろう」


 金髪の男は、諦めて作戦に乗ることにした。


「んじゃ早速ムーアに行ってくるわ」


 黒装束の男は、そう言って椅子から立ち上がった。

 

「ライムと戦うんじゃねぇぞ〜」


 タルタロスは黒装束の男に忠告をした。


「分かってる。アイツラが来る前に帰るさ」


 黒装束の男はそう言って、その場を後にした。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 翌日。僕は帰る途中に寄り道などをしたが、何とかゼーレ達の元に帰っていた。


『黒雷無双』


「オラッ!」


 僕はオリードにて成長したので、シエルから貰った魔王の血が入った瓶を開け、血を攻撃していた。


「ハァア!? 何で壊れねぇんだよ!」


 僕は血に向かって、魔法を放ったが血は少し液体に変わるだけで破壊はできなかった。


「まぁ、何故かほぼ固体の状態から、サラサラの液体に変わってるし、壊す方法には近づいているのかな?」


 僕は、その日は諦めて瓶の蓋を閉じた。


 その後、僕がリュックの中を整理していると、ゼーレ達が起きた。


「う〜ん、おはよう。ライム」


 ゼーレはあくびをしながら喋った。


「うん、おはようゼーレ」


 ゼーレが着替えようとしていると、起きて直ぐに着替える用意をしていたレイラが着替えを持って立ち上がった。


「よいしょっ、貴方達着替え覗いたら殺すから」


 レイラは、僕らに冷たい視線を向けながら話した。


「そんな事しないって、なぁライム」


「うん。だって、僕らは仮にも勇者パーティーな訳だからね」


 ライムとゼーレは、お互いに顔を見合わせて笑顔を浮かべていた。


「それって、勇者パーティーじゃなかったら覗くって事?」


 レイラは、僕に蔑んだような目を向けながら話した。


「さ、さぁ~、どうかなぁ~」


 僕は、少し笑みを浮かべながら話した。


「はぁ~、まぁ貴方達がそんなことしないとは思ってるけど……」


 レイラはそう言いながら僕達から見えない所へ移動した。


 それから数分後にレイラが帰ってきたので、僕達は朝ご飯を食べ、旅を再会した。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 それから1週間程の間、僕達は幾つかのダンジョンを攻略しながら北へと進み続けた。


「そろそろ、武装国家ムーアが見えてくるはず」


 レイラは遠くの景色を見る為、背を高くして太陽の光を手で遮りながら話した。


「いやぁ~、楽しみだな。ゼーレ」


 僕はそう言いながら、ゼーレの肩を叩いた。


「いやいや、ライムお前聞いてなかったのか?」


「何が?」


 ゼーレは、若干僕に引きながら話し始めた。


「何がって。ほら、旅の途中で会った冒険者が言ってたろ、僕達が今から行くムーアは、強さこそが絶対の半無法国家で弱い人は裏で奴隷のような扱いを受けてるって」


 あぁ〜、そう言えばそんな事を聞いたっけ。まぁこの世界は魔力があるお陰で女の人や子供でも強くなれるから、そういう人達が絶対に奴隷になってるわけじゃないと思うんだけど、弱き者を助ける敵か味方かわからない謎の最強戦士とかもやってみたいし、色々作戦を考えとかないとな。


「うん、聞いてたけど僕達なら平気でしょ」


「まぁ、そうかも知れないけどさぁ」


 ゼーレは肩を落としながら話した。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 数時間後、僕達は武装国家ムーアに到着した。


 ライム達の眼前には、城壁など無く、スラム街のような町並みが綺麗な建物を囲んでいる異様な国景色が広がっていた。


「うぉ~、かっけぇ〜」


 ライムは、眼の前に広がる光景に心を踊らせた。


「うわっ、ムーア全体が何か暗い感じだな」


「ちょっとゼーレ。そういうのは失礼になる」


「あっそうなのか。すみませんでした」


 レイラに注意されたゼーレは、頭を少し下げながらムーアに向かって謝罪した。


 その後、ライム達はゆったりとムーアの街を散策している。


「おぉー、やっぱり武装国家だけあって武器屋が多いな」


 ライム達は、街を歩きながら色々なお店を見て回っている。


「まぁ私は魔法使いだから、この国で買う武器は無いけど、貴方達は何か買う物が有ったら言って頂戴。食糧は魔物を狩れば済むから、無駄遣いしないように」


「「はーい」」


 そうそう、少し前からのことだけど、僕らのお金は全てレイラに管理してもらっている。

 僕らはほとんどお金を使わないし、一番生活力のある人が持ってた方が良い。


 それからも、僕達は色々な店を見て回った。でも、正直買う物が無かったので本当に見て回っただけになった。


 ライム達が街を歩いていると、人混みの方から何人もの走っている足音が聞こえてきた。


「おい、待て!」


「ハァハァ……」


「嬢ちゃん観念しな。この国のルールは知ってんだろ?」


 少しすると、人混みの方から人の間をスイスイ進んでいるフードを被り、時々綺麗な紫色のショートヘアが見え隠れしている女の子と、それを追いかける高そうな服を身に着け、武器を片手に持った男数人が見えた。


「っ! おい、ライムあれって」


 ゼーレは、腰に携えている剣に手を掛ける。


「あぁ、多分奴隷にするのが目的だ」


 ライムは、冷めた視線で女の子を追う男達を追っている。


「くそっ! 国のルールだとしても見過ごせない!」


「待て、ゼーレ!」


 ライムは、剣を抜こうとするゼーレの腕を冷静に止める。


「なにするんだよライム! この国は力が全てなんだろ? ならアイツラを殺しても良いはずだ」


 ゼーレは殺意を抑えきれず、目が血走っていた。


「落ち着けゼーレ。よく考えてみろ、力が全てのこの国ならこの場にいる誰かがアイツラを倒して助ける」


「確かに、誰も助けようとしてないな」


 ゼーレは剣を握る手を少し緩めて辺りを見渡す。


「そうだ、ということは何か裏があるのかもしれないだろ?」


「そうかもしれないけど、ならどうすれば良いんだ!?」


 ゼーレは、今にも助けに飛び出しそうになっていた。


「レイラ。悪いがゼーレと一緒に宿で待っててくれないか?」


「なっ! ライム、お前一人でなんとかするつもりか?」


 ゼーレは目を大きく見開いて言った。


「あぁ、勇者が直接関わるよりかは安全策だろ?」


「くっ、分かった。気をつけろよ」


 ゼーレはそう言って、レイラと共に宿屋に向かった。


「あぁ分かってる」


 そして、僕は裏路地に姿を晦ました。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「シエル達、久しぶりだね」


「はい、お待ちしておりましたライトニング様」


 路地裏には、ナイトサンダーズのシエル達3人が居た。


「ライトニング様。ハムハム。私達に会いに来たってことは、何かお願いがあるの?」


「あぁ、ちょっと用意してもらいたい物があってな」


「何なりとお申し付け下さい」


 シエルはそう言いながら、深くお辞儀をした。


「ちょっとさぁ、服を用意してもらいたいんだよね」


 その瞬間、シエル達に緊張が走った。


「っ! 今の戦闘服になにか不備がございましたか」


 シエルは冷や汗をかき、焦りながら聞いてきた。


「いや違うよ。別に不満があるわけじゃなくって、単純に別の服が欲しいんだよね」


 実は、オリードでデスラントと戦った時にメッチャクチャカッコいいシチュエーションを思いついてたんだよね。


「そうでしたか。ではどの様な服をご希望でしょうか?」


「う〜ん、そうだなぁ〜。今回は魔力や力で全てを圧倒する無慈悲なる最強の魔獣になってみたいから、赤と黒の毛皮コートに狐の面と……後は適当でいいや」


「了解しました。この国にもルミナス商会は店を展開していますので、夕方には完成すると思われます」


 うん。もう、今更驚くなんてしないけどさ、正直怖くはあるよね。


「あっ後それと、一応虹雷剣のラビッシュかツカサのどっちかを呼ぶのと、ナイトサンダーズの手が空いている人員を全て集めといて欲しい」


 今回の敵の数は未知数だからな。僕がいくら強くても手が回らない状況になるかも知れないし、命がかかってる戦いで妥協はするもんじゃないしね。


「了解しました。伝えておきます」


「宜しく。じゃあ服ができ次第、僕の所に持ってきてね」


 ライムはそう言いながら、逃げていた女の子の所へと向かった。

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