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雷鳴の猫王と勇者達の旅路〜猫の獣人に転生した中二病、勇者達を魔王の元まで導かん〜  作者: 一筋の雷光
凛然編

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40 新たな旅立ち

 魔将軍コービアを倒した翌日。


「ふわぁ〜、おはよー」


「おはよう、ライム」


 僕達はいつも通り朝6時ぐらいに目を覚ました。


「今日は、9時から子供に稽古をつけるから、あまりゆっくりしてる時間は無いな」


「勇者様は人気だから大変だな」


「うるせぇ」


「ハハッ」




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 僕達は服を着替えて、宿屋の共同スペースへと降りた。


「おはよう、ハルカ」


「おはよう」


「おはよう、ゼーレ、ライム」


 僕達は用意してもらった朝ご飯を食べた。


「そう言えばさぁ、ずっと聞きたかったんだけど、ハルカの旅の目的って何かあるの?」


 僕は、今日でハルカとお別れになるので聞いてみたかったことを聞くことにした。


「そうねぇ〜、まぁ今日が最後なんだし言ってもいいわよ」


「そうか、教えてくれ」


「私の旅の目的はね、色々な種族と仲良くなってある夢を達成することよ」


「夢?」


 って、気になってつい質問したけど、あんま聞いていい話題じゃなかったかな?


「えぇ、旅の目的は色々な種族と仲良くなるだけど、それを達成した先に私のやりたいことがあるの」


「へぇ~そうなんだ。叶うと良いな」


「えぇそうね」


 そう答えたハルカは、何処か暗い表情をしていた。


 や、やっぱりちょっと気まずい雰囲気になっちゃったじゃん!


 ライムは、心の中で一人反省会を開いていた。


「あっ、そろそろ行かないとまずいな。行くぞライム」


「おう、わかった」


 僕達は急いでご飯を食べ終わった。


「ハルカって、今日の夜に出発するんだよな?」


 ゼーレはご飯をかすりながら、ハルカに話しかけた。


「そうよ。今日は夜までレイラと色々話そうと思って」


「そうか。じゃあ、それまでには戻って来るから待っててくれよ」


「わかったわ」




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 僕達二人は、村の噴水で待ち合わせをしていた子どもと会い、そのまま近くの森で戦闘訓練をし始めた。


「おりゃー」


「おぉー、いい感じだぞ」


 ゼーレと子供は木の棒を使い模擬戦をしていた。


 僕は審判役だ。


「とりゃー!」


「ほら、もっと体重を上手く使わないと簡単に防げちゃうぞ」


 ゼーレは楽しそうに子供と遊んでいた。


 それから、僕達は交代しながら時間を忘れて子供と模擬戦などの特訓をした。


 そうしている内に夕方になっていた。


「おっ、そろそろ帰らないとまずいな」


 ライムは二人に向かって聞こえるように話した。


「そうだな」


「じゃあ訓練はここまでだ」


「えぇー」


 子供は物足りないと表情で訴えかけていた。


「ごめんな。お兄さん達はこれから行かなきゃいけない所があるんだ。それに、今日僕達に習ったことを続けていればいつかは絶対に勇者になれるぐらい強くなれるから。なっゼーレ」


「あぁそうだぞ」


「本当!」


「ほんとだよ」


「分かったよ。僕、これからも今日習ったことをやり続けて、いつか絶対にお兄ちゃん達を超えてみせるから」


 男の子は真っ直ぐとした瞳でライム達を見つめた。


「それは楽しみだな。なぁライム」


「うん、いつかまた会おうな」


「うん、今度会う時は戦場で会おうね」


「おう、約束だ」


「約束だよー」


 僕達は互いの拳を前に出し、ぶつけ合った。


 僕達は帰りの準備を済ませた。


「じゃあな、日が暮れるまでには家に帰れよ」


「うん、今日はありがとう、お兄ちゃん達」


「うん、じゃあな」


 こうして、子供は家に帰っていった。


「さて、僕達も宿に戻りますか」


「そうだな」




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 僕達はなんとか夜になるギリギリに宿に着いた。

 宿の前には、レイラと荷物を持ったハルカが居た。


「もう。もうちょっと遅かったら村を出てたわよ」


「ごめんごめん、楽しくてつい遅くなっちまった」


「それと、レイラは今を持って正式に貴方達のパーティーに入ったからよろしくね」


「えっ、なんか条件があったんじゃなかったっけ?」


 森を壊したのを帳消しにできる程の条件って何なんだろう?


「その条件が昨日の深夜に達成されてたのよ」


「へぇ~。ちなみに条件ってなんだったんだ?」


「そうか、ライムは途中で急用ができたとか言ってどっか行っちまったもんな。条件っていうのは……」


 ゼーレが話しかけていると、レイラが話しを割って入った。


「私が話すわ」


「そうか」


 ゼーレは少し後ろに下がった。


「それで、条件はなんだったんだ?」


「条件は、この近くに居るはずの魔将軍コービアの討伐よ」


「っな! へぇ~そうだったんだぁ」


 僕は思わず反応してしまった。


 まじかよ! 僕は条件を知らず知らずのうちに達成してたのかよ。


 僕が冷静になろうと心を落ち着かせていると、ハルカが話し始めた。


「でも、コービアは昨日の深夜、レイラが居た鉱山に突然現れたのよ」


「へぇ~そうだったんだぁ~、大変じゃん」


「そうなのよ、でも貴方も噂とかで知ってるとは思うけど、そこにいきなりサンダーパラダイスの盟主ライトニングが仲間と共に現れてコービアと戦ったらしいの」


 ハルカは何だか楽しそうに話していた。


「その中でコービアはライトニングの魔力を手に入れてライトニング達を追い詰めてたんだけど……」


 いや、別に周りを考慮しなかったらあんな奴瞬殺だったし。


 ライムは心の中で不貞腐れていた。


「我が妹レイラの力、『ミラーハート』により無事倒すことに成功したのよ!」


 ハルカは自慢げに話した。


「なんでお前が自慢げなんだよ」


「別に良いじゃ無い」


「てか、『ミラーハート』って何なんだ?」


「それ、僕も聞きたい」


 先程まで静かにしていたゼーレがライム達の話しに自然な感じで入った。


「『ミラーハート』は、レイラが魔法の最高地点、魔力の覚醒をしたことにより得た『全てのエネルギーを跳ね返す』力よ。勿論レイラ自身の魂の強さにもよるけどね」


 チートじゃねぇか。


 すると、話を聞いていたゼーレがハルカに質問をした。


「魔力の覚醒って何だ?」


 そうか、ゼーレは知らないのか。


「魔力の覚醒は元々持っている魔力と魂の性質。つまり心の中にある意思みたいなものが混ざって一つになることで起きる現象のことよ。そして魔力の覚醒が終わると、元の魔法に魂の特性の効果が付与されるの」


「へぇ~」


 ゼーレはあまり理解できていないなか、呆けた顔で相槌を打っていた。


「だから、貴方の白い光魔法もそれによるものだと思うわ」


「えっ! 僕いつ覚醒してたの?」


「いいえ、貴方の場合は最初から備わっていたもののはずよ」


「最初から?」


 ゼーレの頭は完全にはてなで埋め尽くされていた。


「えぇ、だって魔力の覚醒は元々勇者の素質としてエルフ族や狐の獣人族に伝わるものだから、勇者の貴方は元から持っていた物なのよ」


「へぇ~そうだったんだぁ」


 ゼーレは自分の体のあちこちを見ていた。


「体を見たってわからないぞ」


「っ! そんぐらいわかってるよ」


 ライムに茶化されて、ゼーレの顔が赤くなっていた。


「てかさ、そもそもの話なんでレイラはコービアがこの近くにいるって知ってたんだ?」


 僕はレイラに質問した。


「それは、5日前に近くの山でコービアと戦ったからよ」


「5日前ってことは……」


「そう、あの山が壊れているのは、私とコービアが戦ってコービアの攻撃を私が跳ね返したからなの」


「へぇ~。でも、確か爆発音は1回だけだったんだよね? レイラの魔法であんな事ができるとは考えられないし、一体コービアはどんな奴をコピーしてたんだ?」


 ライムは、ずっと重いリュックを背負って立っていたので、少し姿勢を崩した。


「名前や魔法の効果は分からないけど、とにかく素の力があまりにも強すぎたわ。後、魔将軍クラスなのは間違いないと思う」


「なっ!」


 僕はそいつに心当たりがあった。


 それって多分ゴウエンだよな。

 5日前ってことは多分ゴウエンがディストラの監視に来たタイミングでコピーさせてもらったんだろ。


「何か心当たりがあるの?」


 僕は思わず反応してしまったので、3人に不思議がられた。


「あっいや、別にコービアにコピーされた奴はすげぇ奴だなと思っただけだよ」


「そうね。正直ミラーハートが無かったら確実に殺されてたわ」


 僕達は少しの間沈黙した。


「まっまぁ、今はそんなやつのことを考えてもしょうがないさ」


 ゼーレは、場の空気を変えようと元気よく話した。


「そうだな」


「まぁそういうことなので、これから私の可愛い可愛い妹のことをよろしくね」


「ちょっと辞めてよ姉さん。恥ずかしい」


 レイラは、少し照れくさそうに言った。


「うん、分かったよ」


「任せとけ」


「それじゃあ、私はもう行くわね。今までありがとう。また会いましょう」


「うん、またね」


 僕は少し手を振りながらそう言った。


「また絶対に会おうな」


 ゼーレは、真っ直ぐな目でそう言った。


「うん、バイバーイ」


「またいつか会いましょう姉さん」


「うん。また100年後とかに会いましょう」


 ハルカは、荷物を持って村の西に進んで行った。

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