31 止まらない最強
「おぉーここが僕達の部屋かぁ」
「広いわね」
お風呂を堪能した僕達は、この旅館で一番豪華な部屋の鍵を渡されていた。
旅館の部屋ということもあり、部屋の造りも和風で統一されている。
「じゃあ荷物も置いたし、僕は行く所があるから外に出るよ。一応夜ご飯の時には戻ってくる予定だから」
「うん、わかった。一応マフラーとかしていきなよ。ライムは寒さには弱いからな」
「うん、わかってるよ」
僕は言われた通り、マフラーや手袋を着けて外に出た。
「じゃあ僕達も自由行動にしようか」
「そうしましょ。私、他の所の温泉にも入りたいし」
「そうか、じゃあ僕も夜ご飯には戻るから」
「うん、行ってらっしゃい」
そして、僕達は久しぶりに各々の時間を過ごすことにした。
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僕は、街の広場でこの街の警備をしているというノアとツカサを探していた。
二人はどこにいるのかなぁ。アンナ達に居場所を聞けば良かった。
「てか、街の警備ってことはそこら辺を歩いてる可能性もあるのか。二人の見た目だと、街の人に聞いたほうが早いか」
僕はそう思い、情報を集めることにした。
僕は広場で小さな八百屋を開いているお婆さんに話しかけた。
「あのーすみません。白髪に色々なインナーカラーが入った猫の獣人と、筋肉頭の竜人を見ませんでしたか?」
「竜人の子はわからないけれど、白髪の子なら、荷物を運ぶのを手伝ってくれた後に、あの山に行くって走ってったわよ」
お婆さんはそう言い、街の西にある山を指指した。
「そうなんですね。教えてくださりありがとうございます」
僕はお婆さんに教えてもらった森に向かった。
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暫く歩いていると、剣を交えている音がした。
「ハァハァ、やるなツカサ」
「お前こそ、魔力だけじゃなくなってきたな」
音の正体は、ノアとツカサが稽古をしている音だった。
「あの二人結構いい動きしてるな」
僕は稽古が終わるまで、草むらから稽古を盗み見ることにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
僕が二人を見つけてから30分ぐらいが経った。
「ふぅー今日はこの辺にしとくか」
「そうするか」
おっ、やっと終わったな。
「おーい、二人共お疲れ様」
僕が草むらから出ると、二人は驚いた表情でこちらを見てきた。
「なっ! 見てたんですか、さすがライムですね。気が付きませんでしたよ」
「おう、俺も気づかなかったぜ」
「ヘヘっまぁね。でも二人もだいぶ成長したな」
「そうだろ。ライトニnじゃなかった、ライムさんが村から出ていってからも、ずっと修行してたからな」
「そうですよ。僕も強いのは、魔法だけではあ無くなりましたからね、ツカサと修行した今ならライムに勝っちゃうかもしれませんね」
ノアは、僕と戦いたいんだろう挑発するように言ってきた。
まぁ僕は、この程度の挑発には乗らない。
何故なら僕の思い描く最強は、この程度の挑発に乗るような最強ではないからだ。
ただ、戦いたいという申し出を断るわけにもいかないので、ここはあえて乗ってあげよう。
決して、自分が最強と思っている僕に勝てると思っているノアの発言が、ムカついたとかでは一切無い。
「ほう、言うようになったな。ならその心を折るとしようか」
「ふっ望むところですよ」
「おぉーやるのか、俺も混ざっていいよな!」
「わかったよ。でも、ノアをボコボコにした後でな」
「残念でしたね。ライムは僕がボコボコにしますのでツカサには回ってきませんよ」
くっこいつ、ここぞとばかりに煽ってくるな。
「それと、もちろん本気でやりますよね」
「当たり前だ」
「なら、この森の西側に草原があるのでそこで戦いましょう」
「魔力がほぼ無限の僕達がここで本気で戦えば、ほぼ確実に町にまで被害が及びますからね」
「確かに、そうするか」
僕達は町に被害が出ると予想し、山を超えた先にある草原に向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ライムとノアが向き合っている草原には、そよ風が吹いており、二人の対照的な色の髪を靡かせている。
「ここなら街まで被害が及ぶ確率はほぼ無いですし、どんだけ壊しても草原ぐらいなら軽々僕が治せるので安心して本気でやりましょう。一応音属性も扱えるようになったので、それで音を外に漏らさないドー厶を作りますね」
そうだった、こいつマジのチートやろう何だった。
「あぁ出し惜しみはしねぇぞ」
ライムはそう言い、マフラーなどの防寒具を脱いでツカサに渡した。
「これを頼む」
「はいっわかりました。ノアなんかに負けないでくださいよ」
「当たり前だ」
「準備はできたようですね」
その間に、ノアは音を遮断するバカでかいドー厶を展開していた。
「あぁそれじゃあ行くぞ!」
ライムは魔力を高め、周りに雷が漂い始めた。
「数の暴力でねじ伏せてあげますよ」
ノアも魔力を高め、虹色の魔力で出来た柱ができた。
ライム達は、魔力を全開放した。
「くそっ! やっぱり魔法を使えるって良いな」
ツカサはそう言いながらライム達のそばを離れた。
「行きます! 『土之丸天井』」
ノアはまず土魔法で、ライムの視界を奪ってきた。
『風之斬撃』
次に風の斬撃を飛ばして来た。
『雷撃之機関銃』
ライムは土のドームでどこから攻撃が来るかわからなかったので、とりあえず辺り一帯を攻撃して土のドームを破壊した。
「なっ斬撃だと! おらぁ!」
ライムはとっさに剣を抜き、斬撃を全て薙ぎ払った。
「さすがだな、ライム」
「お前こそ戦い慣れしてるな」
「ありがとうございます」
「今度はこっちから行くぞ!」
ライムは魔力と雷魔法で身体強化をし、一瞬でノアに近づいた。
「なっ!」
ノアはすかさず剣を構えた。
ライムはノアの首目掛けて剣を振った。
「ふっ流石に防ぐか。だが踏み込みが甘いな」
「くっ!」
ライムは力を込めノアを吹き飛ばした。
「おいおい、この程度で僕に勝てると思っているのか?」
ライムは挑発するように、バカにした雰囲気で喋った。
「思っていませんよ!」
ノアは勢いよく風魔法で空に浮かんだ。
「ライムのような一属性のみを極めていては、到底たどり着けない魔法の使い方を見せてあげます」
ノアはそう言うと、雪と小さな岩ぐらいの大きさのひょうを降らせた。
「僕が寒さに弱いからか? 残念だが体は温まってるから無意味だぞ」
「ふっ」
ライムがそう言うと、ノアは不敵な笑みを浮かべ攻撃を再開した。
『稲妻之海!』
ノアがそう言うと、大量の水がこちらに向かってきた。
「うわっ!」
ライムはノアが出した水に巻き込まれた。
「なっ! 体が痺れてる」
「水の中に雷を混ぜているのか?」
体が痺れていたので、剣を手から離してしまった。
「うーん、ひとまず水から出ないとな」
ライムが水から出ようとしていると新たな魔法が僕を襲った。
「そんなに水から出たいのなら、僕が引き上げてあげますよ」
『炎之暴風!』
ノアは炎の玉を突風で無造作に高速で操ることで熱い暴風を起こし、水ごとライムを上に巻き上げた。
「今度は熱風か! イテッ」
その間もひょうは振り続けているので体に当たって痛かった。
暴風に巻き上げられたライムは体制を整え、魔法を打つ構えをした。
「させません!」
ライムに魔法を撃たせまいと、ノアは台風を起こした。
雪やひょう、水などがさらに荒ぶり僕の視界を悪くした。
「くそっ、何も見えねぇ」
ライムが体制を立て直している最中にはノアはもう次の魔法の準備をしていた。
ノアが拳を握り、拳の周りに風が起こり始めた。
『風之拳!』
ノアは下に向けて拳を放ち、下に向かって突風を起こした。
それに巻き込まれたライムは、炎の玉や水、ひょうなどと一緒に地面に叩きつけられた。
「ぐはっ」
「どうしました? ライム。貴方はこの程度でやられるような実力じゃないでしょ?」
ノアは台風を解除し、ゆっくり降りてきた。
「くそっ、やるなノア」
「早く立って下さい。ほら落とし物ですよ」
ノアはそう言いながら、ライムの方に剣を投げた。
「おぉありがとな」
「ふっ、やっぱり貴方は凄いですね。出し惜しみせずに済みそうです」
「おう、どんと来い!」
ライムがそう言うと、ノアは地面に手を付き魔力を込めた。
すると、地面から何個もの木の根っこが出てきた。
『木之鞭!!』
「なっ!」
「まだまだ行きますよ!」
ノアはそう言うと、魔力を再び全開放した。
「流石のライムでも魔力の総量だと僕以下だからな。手数の多さで圧倒してやるよ!」
そう言うと、ノアは自身の後ろに炎の剣や光の矢、水の弾丸、雷の龍など20種類以上の魔法を出した。
「この量の魔法を一度に食らえば流石のライムでも一溜まりもないでしょう。どうします? 降参しますか?」
「へっ、するわけ無いだろ」
「そうですか、死んでも知りませんよ!」
ノアはそう言うと、出していた魔法を全て僕の方に放った。
「くっ、この手はライムの時は使いたくなかったが、仕方無いか」
ライムは魔力を高め雷を黒い雷に変化させた。
「スゥー……行くぞ! 僕の最強技! 『魂斬之無限黒雷斬撃!!』」
ノアと僕の魔法がぶつかり合い、地面はえぐれ、周りには何十回も爆発音が鳴り響いた。
「オォー!」
「おぉー!」
数十秒に及ぶ魔法の打ち合いが終わった。
「ハァハァ、流石に疲れるな」
「ハァハァ、黒い雷なんて知りませんよ。また強くなったんですか」
「あぁそうだぜ」
「そうですか……。それでは、そろそろ周りを壊しすぎてきてるので、次の魔法で終わりにしましょうか」
「そうだな」
ライムがそう答えると、ノアは両手を挙げて下に下ろすと共に次々と、各属性を使って12個の玉を自身の後ろに作った。
「今はまだ12属性しか思い通りに扱えませんが、それでも最強の技を編み出すには充分ですからね。今度こそ死んでも知りませんよ」
ノアが作り出した十二個の玉は、段々姿を変えていき、ノアの背後には十二体の龍が現れた。
「こっちは一属性しか使えないが、それでも最強になるには充分なんだ。そっちこそ死ぬんじゃねぇぞ!」
ライムは居合の構えをとる。
ライムはノアの出した雷龍のお陰で新しい技を思いついていた。
出来るかどうかは賭けだが、僕にできないことなどあるはずがないからな、多分行けるだろ。
ライムの周りには漆黒の雷が漂っている。
ライムに漆黒の雷が落ち、漆黒に輝く獅子の雷獣を纏った。
「行きますよ!」
「来い!」
漆黒の雷獣は唸っている。
『憤激之星!!』
ノアの叫びと共に、十二体の龍がライムに向かって前進していく。
『獅黒迅雷!』
ライムが前に飛び出すと同時に、纏っている獅子も走り出した。
ノアの放った龍がぶつかって来たが、漆黒の雷獣を纏っているライムが止まることはなかった。
この技には、『森羅万象に阻まれない最強』っていう効果を付与してるからな。
その効果のついた雷で作った雷獣がダメージを受けて止まるはずがないんだよ。
「くっ流石ですね。ですがまだ手札はあるんです、絶対に止めてみせますよ」
だが、ライムの纏った漆黒の獅子が止まることはなかった。
物凄い雷鳴と共に漆黒の獅子がノアを通り過ぎた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「グハッ!」
ノアが倒れると同時に音を遮断していたドー厶が消え去った。
「ふぅーなんとか出来たな。おーい大丈夫か?」
僕が倒れているノアに聞くと小さな声で返事をした。
「なんとか生きてますよ」
「そっか良かったぁ」
「ちょっと手を貸してくれませんか?」
「わかった」
僕はノアの手を掴んで起き上がらせた。
「うわぁ、お互い服もボロボロですね」
「そうだな」
「とりあえず草原を元に戻しますか」
ノアはそう言うと、僕らの戦いで荒れ果てた草原を自然魔法を使い、草原を元の形に戻した。
「自然魔法ってすげぇな」
「そうでしょ」
草原が元通りになると、僕のマフラーなどを持ったツカサが走ってきた。
「おーい二人共大丈夫か? すっげえ戦いだったな」
「おぉーツカサ、マフラーとか持ってくれてありがとうな」
「いえとんでもないです。はいっお返しします」
僕はツカサからマフラーなどを貰い着た。
「ふぅー温かいなぁ。やっぱ防寒具は最高だな」
「それでライムが勝った訳だけど、俺と戦えるか?」
「うーん…まぁ戦えないこともないけど、流石にこの服のままじゃ戦いづらいし、もう夕暮れ時だからまた今度あった時で良いか?」
「しょうがないな。絶対だからな」
「おう、絶対だ」
こうして、ノアとの対決に勝った僕はノア達と共に山を超え、すっかり辺りが暗くなった頃に旅館に戻った。




