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雷鳴の猫王と勇者達の旅路〜猫の獣人に転生した中二病、勇者達を魔王の元まで導かん〜  作者: 一筋の雷光
凛然編

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29 勇者の覚醒

 翌日。


 僕たちは昨晩色々あり寝るのが遅かったので昼時に目が覚めた。


「フワァーよく寝た」


 ライムは背伸びをしながらあくびをした。


「久しぶりにこんなに寝たな」


「外で寝たのになんか暖かかったわね」


「そうだな。山小屋で寝るのとさほど変わらない感じがしたな」


「なっ、暖かかったよな」


 まぁ僕がホノカに頼んで近くに炎を出してもらってたからな。


 ホノカは……、あっ! あそこか。


 僕は、遠くからこちらを見ているホノカにお辞儀をした。


「いきなり何してるんだ?」


「別に何でもないよ」


「ハルカ、気にしなくて良いよ。ライムは偶におかしくなるんだ」


 おいっ失礼だろ!


「へぇーそうだったの」


 納得するなよ!


「まぁとにかく用意が出来たら先に進むぞ」


「はーい」


 僕はリュックを持って、ゼーレ達と共に再び北へと足を進めた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 それから北に少し進んだ僕たちは、森で休憩をすることにした。


「ちょっとトイレ行ってくる」


「いってらっしゃーい」


 僕がトイレを済まし、ゼーレ達の元に戻ろうと歩いているとホノカが現れた。


「わっ! びっくりした。ホノカ達か」


「驚かせてすみません。アンナ様から伝言をもらいましたのでご報告をと思いまして」


「アンナから?」


「はい。『ここから3日程進むと、目的地の途中にある街につくので、そこで私達も休日を過ごすから、一緒に休みましょう』とのことです」 


「そっか、分かった」


「それでは失礼します」


 そう言ってホノカはどこかに消えた。


 ホノカと別れた僕は、ゼーレ達の元に戻った。


「おかえり、ライム」


「ただいまぁー」


「昨日のライトニングの魔法を見て、ハルカと話し合ったんですけど。ここからはレイラとすぐに会うんじゃなくて、幾つかダンジョンを攻略して強くなりながら進むのはどうだ?」


 ゼーレは真剣な眼差しでライムに提案した。


「確かにその方が魔王軍の戦力も減らせるし良いな」


「それじゃあ近くにダンジョンがあるみたいなので行きましょうか」


 僕達は、ハルカが旅をする中で見つけたというダンジョンに向けて歩いた。


 ダンジョンに着くと、入口には大きな扉があった。


「なぁハルカ、本当にここがダンジョンの入口なのか?」


「えぇそうよ。でもダンジョンと言うより洞窟と言ったほうが正しいのかもね」


 すると、ディストラが足を引っ張ってきた。


「二人共ちょっと待ってて」


「何だ、またトイレか?」


「あっうん。そうだよ」


「そっかじゃあ待っとくわ」


「うん。ありがとう」




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 僕は近くの草むらに隠れた。


「何だよディストラ。お前のせいで僕が頻尿みたいになってるじゃんか」


「すいません。でもあのダンジョンは初見で行くには危険すぎるのでどうしても伝えたくて」


「危険って何が危険なんだ?」


 僕達は、ある程度の罠なら誰も死なずに来れているし、魔将軍も倒しているのに何が危険なのか不思議だった。


「このダンジョンは、魔王軍の避難場所として作られており、このダンジョンのボスを任されているのは『毒龍 ベノーラ』で、なんの対策も無しに入ると毒竜の毒によって体は溶け、正常な判断もできなくなるんです」


「めっちゃやばいじゃねぇか?」


「はい、ですので私が毒竜の対策をお話しますのでそれをゼーレ達に伝えて下さい」


「うん、ありがとう。てかハルカは入ったことがあるっぽいけど何で平気なんだ?」


 流石に光魔法が得意なエルフでも、体が溶けるのは治せないだろうしな。


「それは、エルフが生まれたときからあらゆる状態異常耐性があるからでしょう。それに加えあのエルフはエルフの中でも強い方な様ですし」


「そっか。それで対策って何をすれば良いんだ?」


「対策と言っても、あのエルフに状態異常耐性の付く魔法を掛けてもらえばそれで大丈夫ですよ」


「何だ、そんなんで良いのか」


「はい。逆にそれぐらい簡単でないと、避難場所として機能しませんからね」


「それもそうか」


 なんか遊園地みたいな感覚になってるけど、ダンジョンって魔王軍が他の種族と戦う為の拠点なんだよな。


「後、正直炎竜よりかは弱いので安心して大丈夫ですよ」


「そうなのか、教えてくれてありがとうな」


 こうして、ディストラから助言を貰ってゼーレ達の元に戻って行った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 僕はゼーレ達の元に戻り、ディストラから助言を貰いそれをゼーレ達に伝えた。


「え、私そんな危険な状態だったの」


 レイラは、ライムの話を聞いて青ざめていた。


「そうみたい」


「てか、ライムはこの短時間でそのことを誰から聞いたんだよ」


「いやー、戻っている途中にこのダンジョンに入ったことあるって言う冒険者に会ってさぁ」


「へぇー。まぁとりあえずハルカ、僕達に状態異常耐性の魔法を掛けてくれ」


「わかったわ」


 ハルカはそう言い、僕達に状態異常耐性の魔法を掛けてくれた。


「じゃあ開けるぞ」


 僕は扉に手を当てて、二人の顔を見ながら喋った。


「オッケー」


「大丈夫よ」


 僕は大きな扉を開けた。


「わぁー暗いな。ゼーレ、火を頼む」


「うん」


 ゼーレは炎属性の魔法で辺りを照らした。


 そして、僕達はベノーラの守るダンジョンに入った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「うわぁー何だコイツ!」


 僕達はサソリみたいな魔物に囲まれていた。


「うぅー、僕虫嫌いなのにサソリみたいなやつ大型犬ぐらいでかいじゃねぇか」


「くそっ来るな!」


電気之銃弾(エレキショット)


「このっ!」


「こっちに来ないで!」


 僕達は何とか魔物を倒し、先に進んだ。


 流石は毒竜が守るダンジョンだ。

 罠は全て毒に関するものだった。


 僕は足元にあった毒を踏んでしまった。


「うわっ! 地面に毒が塗られてるのか。ハルカの魔法が無かったらこのダンジョンきつかったな」


「有っても、きついものはきついけどな」




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 そして、十何個かの罠に掛かりながらも何とかベノーラの居るボスの間の扉の前にたどり着いた。


「やっと着いたな。じゃあ開けるぞ」


「うん」


 僕が扉を開けると、中から強烈な毒霧が流れてきた。


「ヤバ!」


 僕は急いで魔力で、身体強化をした。


「おいっ! ゼーレとハルカも早く身体強化をしろ、ハルカは追加の状態異常耐性の魔法を全員に掛けてくれ」


「わっ、わかったわ」


 僕達は皮膚が少し焼けたぐらいで何とか持ちこたえた。


 あっぶねぇ、もう少しで骨まで溶かされるところだったな。


 僕が前を見ると、そこにはドラゴンと言うより龍といったほうが正しいような、とぐろを巻いてこちらを見つめる緑色の龍の姿があった。


 すると、いきなり扉が閉まった。


 なる程、侵入者は絶対に逃さないという訳か。


「よし、それじゃあハルカは光魔法でアイツの視界を塞いでくれ!」


「了解!」


 ハルカはそう言うと、魔力を体中に込め開放した。


光輝之妖精(フェアリー・ルミナス)


 ハルカがそう言うと、ハルカの体が光り輝いた。


「今のうちだ。行くぞゼーレ!」


「はいっ!」


 僕とゼーレは、ベノーラに近づき剣で斬った。


「おりゃ」


「オラッ」


 しかし、斬ったベノーラの体が液体になっており傷が修復した。


「なっ!」


「おい、ゼーレ一旦離れるぞ!」


「あぁわかった」


 僕は、このまま近くにいると危険と判断し一旦下がることにした。


 すると、斬られたことに怒ったのか、ベノーラは鱗の隙間からさらに毒霧を出し始めた。


「くそっ! あまり時間が無いな」


 どうする、黒い雷を使えば一瞬で倒せるのに。


 だが、扉が閉まっている今僕が姿を一回隠す場所が無いから無理だな。


 僕は少し悩んだ末に、あることを思いだした。


 そういえば、黒い雷って勇者の素質があるから魂と魔素が混ざって出たんだよな。

 じゃあ正規の勇者は当然できるはずじゃんか。


 そのことを思いだした僕は、ゼーレにこの場で魔力の覚醒を自覚してもらうことにした。


 勇者の魔力の覚醒の効果なら、毒特攻があるかもしれないしな。


「なぁゼーレ、僕の魂の色って見えるか?」


「大変な時に何をふざけてるんだよ」


「大事なことなんだ!」


 僕が叫んだことで、事の重大さに気づいたゼーレは僕の魂を見ようと、僕の体を見つめた。


「どうだ見えるか?」


「うん、なんか黒いのが見えるぞ」


「そっかなら良かった。じゃあ次に自分の魂と魔素、そして魔力を一つにするイメージで魔法を出してくれ」


「わかった」


 ゼーレが全てを一つにするイメージをすると綺麗に全てが繋がった。


「よし、そのイメージのままベノーラに思いっきり魔法を打ってくれ」


「了解っ!」


 ゼーレが魔力を込めるとゼーレの周りに白い光が漂い始めた。


 そして、ゼーレは右腕を前に出して白い玉を作り始めた。


 白い玉はどんどん大きくなり、ダンジョンを揺らし、大きな音を出している。


 玉の大きさがベノーラ以上になると、ゼーレはようやく魔法を放った。


崩壊之白太陽ホワイト・サン・ブレイク


 白い玉は一直線にベノーラ目掛けて放たれた。


 その玉からは、まるでこの世の全てを抱きしめるような、そんな暖かさを感じた。


 玉はゆっくり地面をえぐりながら進んでいる。


 進んでいる間も大きな音を出している。


「グギャャャァァア!!」


 くそっ逃げるつもりかっ!


 ベノーラは玉を見て、流石に逃げようとしている。


「そうはさせねぇよ……」


「グギャ」


 僕はゼーレ達が白い玉に気を取られている隙に、一瞬で黒い雷でベノーラを攻撃し感電させて動けなくした。


 白い玉がベノーラに当たると、ベノーラの体が光に当たった所からだんだんと消えていった。


 「グァァァア!!」


 白い玉がベノーラを完全に飲み込むと白い玉は一瞬止まり、綺麗に散った。


「うわぁーきれいだなぁ」


 その姿はまるで花火のようだった。


「いやー凄いじゃん。ゼーレ」


「さすが勇者様だな」


「いやー、それ程でも、ありますよぉ〜」


 ゼーレは剣を鞘に収め、ニヤニヤしながらそう言った。


「なんか気持ち悪いな」


「えぇそうね」


「なっ! 冗談だって」


 ゼーレは慌てた様子で僕達の顔を伺いながら話した。


「さぁ、とっととこんなダンジョン出るぞ」


「そうしましょ」


「待ってくれよぉ〜」


 こうして、『毒龍 ベノーラ』を倒した僕達は、ゼーレの魔力の覚醒を無事に成し遂げたのだった。


 それから、僕たちはゆっくり目に旅をして、4日程でアンナが伝言で伝えてきた町に到着した。


 途中で、山賊やナハト教団を名乗る者達に邪魔をされたが、ホノカ達の助けもあり、難なく旅を続けられた。

 ホノカ達には後で、お礼を言わないとな。

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