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雷鳴の猫王と勇者達の旅路〜猫の獣人に転生した中二病、勇者達を魔王の元まで導かん〜  作者: 一筋の雷光
凛然編

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27 VS魔将軍ラヴィーネ

 魔将軍の一人、ラヴィーネと戦うことになった僕たちは、ラヴィーネの魔法で気温が下がっていることによりうまく体を動かせずにいた。


「くそ、寒すぎる」


 ただでさえこのダンジョンは氷の壁で出来てるし、そもそもここが豪雪地帯だから寒すぎるってのにこいつの魔法のせいでさらに寒くなっていやがる。


「寒すぎて体が上手く動かせない」


 こいつの魔法はおそらく氷魔法だろ、氷魔法はユキネとの練習試合で見たことあるが、雪を出したり氷を出しまくったりするから雷魔法だと戦いにくいんだよな。


 どうしようかと辺りを見渡すと、隠れているホノカ達を見つけた。


 うーん。正直ホノカ達に手伝ってもらったら簡単に勝てるんだけど、それだとゼーレのためにならないもんな。

 今回は僕もあまり手出しはしない方向性でやるか。


「何もしないなら妾から行くぞ。『氷柱之槍(アイシクルスピア)!』」


 ラヴィーネがそう言うと、幾つもの氷の槍が前から迫ってきた。

 

 技名を言うなんて、結構ノリが良さそうだな。


 ライムは軽い身のこなしで氷の槍を避け続けた。

 一方ゼーレは上手く避けられず焦っている様子だった。


「うわぁー!」


「落ち着け! よく見れば簡単に避けられるぞ!」


 僕は、ゼーレを落ち着かせるために攻撃を避けながら喋った。


 くそっ、流石は魔将軍だな。攻撃の手が緩みそうにない。


 ラヴィーネは猛吹雪を出しながら、視界が悪くなっている僕たちに常に氷や雪を変形させた魔法で攻撃をしてきた。


雪之弾丸(スノーバレット)!』


「槍の次は弾丸か! 楽しいなぁ!」


「全然楽しくないって!」


 ゼーレはこの状況に嘆いていたが、僕は魔法ぶっぱの戦いをするラヴィーネとの戦いに興奮していた。


「テクニックほぼ無しの戦いも、魔法があれば悪くはないな」


「こんなのどうやって勝つんですか!?」


 うーんどうしたものか、ホノカ達にもあまり手は貸してほしくないんだよな。


 その頃、僕たちの戦いを見ていたホノカ達は僕の行動を疑問に思っていた。


「ねぇホノカ様。なんでライトニング様はあいつを倒さないの?」


「それは勇者を育てるためよ。でも、どうやって倒すんだろうな」


 ホノカは真剣な眼差しでライム達を見ている。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 数分後。


 僕は、戦いの中でラヴィーネの弱点を見つけ、ゼーレにとどめを刺させる作戦を思いついた。


 こいつの弱点は単純だな。僕が間合いに入ろうとしても、気づかずガードしようともしない。

 おそらく、こいつは氷魔法の牽制能力がすごすぎて、今まで近接戦まで持ち込まれたことがないんだろう。なら、僕が上手いこと隙を作ればゼーレの剣術の腕でも勝てるだろ。


 そう思った僕は、ゼーレの元に行き作戦を伝えた。


「おい、ゼーレ今からぼくがあいつに近づくための隙を作る。隙ができた瞬間にあいつの間合いに入って近接戦に持ち込め」


「えぇ、勝てる気しないんだけど」


「大丈夫。お前の剣術にあいつはついて来られない。もしついてこられてもすぐに僕が加勢する。だから安心して飛び込め」


 ゼーレは少し悩んだが、僕の作戦に賛成した。


「わかった。やってみる!」


「よし、それじゃあ行くぞ! ラヴィーネ!」


「アハハハ、何をしようとそなた達は勝てない! 『氷柱之槍雨アイシクルスピア・レイン』」


 ラヴィーネが手を前に出すと、ライム達の頭上から無数の氷の槍が降り注いだ。


「凄い自信だな。その自信を折るのが楽しみだぜ! 行け『雷撃之機関銃(雷撃ガトリング)!!』


 ライムは右手を挙げて叫んだ。

 そして、ライムの出した雷がラヴィーネの氷の槍を次々と相殺していった


「何事じゃ!」


 ふっ、漆黒の雷でなくとも打ち合いぐらいは出来るんだよ。


 僕はラヴィーネが出している無数の攻撃を全て撃ち落とした。


「今だ!」


「うん!」


 僕が合図を出すと、ゼーレは勢いよく飛び出し、ラヴィーネに一瞬で近づいた。


「なっ!」


 ラヴィーネはすぐさま氷の剣を作った。


 だが、間合いに入ったゼーレの攻撃は凄まじく、さらにゼーレは剣に炎を纏わせているので、ラヴィーネの剣はどんどん溶けていった。


 おいおいゼーレ、氷使いの相手にそれはちょっとずるい気もするけど、まぁ勝てれば何でも良いか。


「クッ」


 ゼーレの剣捌きはさらに研ぎ澄まされていき、次第にラヴィーネの体を捉え始めた。


 その間もラヴィーネは氷などで死角からゼーレを狙っていたが全て僕が撃ち落としている。


「その調子だ、ゼーレ。周りの攻撃は僕に任せてそいつを倒すことだけを考えるんだぞ!」


 そして、遂にゼーレはラヴィーネの剣を弾き飛ばした。


「キャッ」


 剣を弾き飛ばされたラヴィーネは、弱々しい声を上げて体勢を崩した。

 その隙にゼーレは魔法を撃つ体勢に入った。


「うぉぉ!」


 ゼーレは剣を振り上げ、魔力を込めた。


 辺りは強く白い光に包まれ、まるで天に登ったようなふわふわした感覚になった。


 暫くすると、白い光は剣先に収束し、誰も動かない無音の時間が流れた。


光之爆轟ライト・デトネーション!!』


 ゼーレが剣を振り下ろすと、物凄い衝撃音と共に剣先から光が拡散しゼーレの前にあった物、全てが跡形もなく消し去った。


 ゼーレの放った光線により、地面の氷はえぐれ、ラヴィーネが座っていた椅子も爆風で壁に衝突して粉々になった。


「あぁあ、あの椅子かっこよかったのに」


 まぁどうせ持ち帰れなかったしいっか。


 僕は、放心状態になっているゼーレの元にハルカと一緒に駆け寄った。


「いやー、凄いなゼーレ」


「貴方達本当に勇者パーティー何なのね」


「何だ信用してなかったのかよ」


「いや、そういう訳じゃなくて。そう再確認できたってことよ」


「ふーん」


「てか、ゼーレ大丈夫か?」


 ゼーレはまだ現実に戻れていないようだ。


 僕は、魂が見えるからどんな能力なのかわかってたけど、ゼーレは自分の魂を見てなかったもんな。


 自分がまさかこんな強いとは思ってなかったんだろ。


 しばらくすると、ゼーレが放心状態から戻ってきた。


「ハッ!」


「おっ戻ってきたか」


 ゼーレは自分がやったことをようやく整理できたようだ。


「まさか僕が魔将軍に勝てるなんて感激だ」


 ゼーレは少し泣いていた。


「おいおい泣くなよ。魔将軍はまだまだ居るんだからさ」


「そうだな」


 ゼーレは涙を拭いた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 僕達は数時間掛けてダンジョンを出た。


 ダンジョンから出た僕たちはボロボロだった。


「くそぉ。帰りも結構罠に引っかかったな」


「もうクタクタよ」


「僕も魔力切れで歩けそうにない」


 ダンジョンから出たライム達は話し合いの末、皆んなの状態を考慮して、今日はこの森で野宿をすることに決まった。


「よし、今日はもう小屋まで行く力が残ってないみたいだからダンジョンの入口で野宿するか」


 そう言うと、ゼーレはダンジョンの壁に寄り添って寝始めた。


「お疲れ様。ゼーレ」


 僕はゼーレに毛布を掛けた。


 僕も寝る用意をしていると、ハルカが話しかけてきた。


「寝るのは良いけど、山賊とかに襲われない?」


「それは僕が守るから大丈夫だよ」


 まぁ実際には、ディストラとホノカ達が守ってくれるんだけどね。


「あなた化け物ね」


「獣人ならこのくらい当たり前だよ」


「へぇーそうなの。ならお言葉に甘えさせてもらって私も寝ることにするわ」


「うん。おやすみ」


 ハルカが寝たのを確認した僕は、ディストラとホノカ達を集めた。


「それじゃあ、後はよろしくね」


「はい、お任せ下さい」


「ライトニング、今日も凄かったぜ」


「ありがとうホノカ……。それじゃあおやすみ」


「おやすみなさい。ライトニング様」


 こうして、魔将軍ラヴィーネとの戦闘は幕を閉じたのだった。

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