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雷鳴の猫王と勇者達の旅路〜猫の獣人に転生した中二病、勇者達を魔王の元まで導かん〜  作者: 一筋の雷光
凛然編

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25 光と陰の出会い

 僕達3人は、レイラに会うために北東にある村に向かっている。

 今の豪雪地帯は秋に入ったばかりだが、体温を奪うには十分すぎるほど寒い。


「後どれくらいで小屋に着くの?」


 僕が聞くと、ハルカは体を震わせながら答えた。


「後30分程山を登れば、小屋に着くはずだ」


「あと30分かぁ。冬でもないのにこの寒さ、冬になるまでにこの地帯を抜けたいな。ゼーレ」


「それはレイラ次第だろ。村からもう出てるかもしれないし」


 僕達は凍えながら小屋まで登った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 数十分後。


「ハァ疲れたー。ゼーレ、この小屋には木材はあるか?」


「うん、まだ少し残ってる」


「そっか、ならもう全部使っちゃおうぜ」


「でも全部使ったら、木材を集めなきゃいけなくなるぞ? 前の小屋で大変な目にあったのを忘れたのか?」


 豪雪地帯の山小屋を使うときは、木材を使い切ったら補充するというルールがある。

 まぁこのルールが無かったら、前の僕らみたいなことになるもんな。


「まぁあの時は岩山だったから、下まで行かないと駄目だったていうので大変だったけど、今回の山は自然がいっぱいの山だから大丈夫だって」


「それもそうか」


 ゼーレはそう言って、木材を暖炉に入れ火を点けた。


 木材を入れたゼーレは僕に質問をしてきた。


「それで、この木材は夜になる頃にはなくなるけどいつ木材を取りに行く?」


「どうしよっかなぁ」


 あっ確かここの森には、山賊が居るってハルカが言ってたよな。

 あえて夜に木材を集めに行ったら、山賊が襲ってきてくれるかもしれないな。

 ついでに狩りも出来れば完璧だ。


「じゃあ今日は登山で疲れたし、夜までのんびりして狩りのついでに木材を取るのはどうだ?」


「でも、この森には山賊がいるんですよ。日が昇っているうちにやったほうがよくないですか?」


「アタシもゼーレに賛成だな」


 こいつ等、人に聞いといてわがままだな。


「まぁ万全の状態の僕らなら、山賊ごとき遊び相手にもならないし大丈夫でしょ」


「確かにそうですね。じゃあ夜になるまでゆっくりしますか」


 よし作戦成功だぜ。


 そして僕たちは夜まで小屋の中でのんびりしていた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 薪を集めるため夜道を歩いていると、ハルカが文句を言ってきた。


「明かりがないからほとんど何も見えないじゃないかライム。こんな危険な所に美少女エルフを連れ出すとかどうなってるんだ」


「だから昼間にやろうって言ったのに……」


「まぁまぁ狩りは基本夜にやるものだから。それにハルカは旅をしてるんだから夜道には慣れてるだろ」


 夜になったので僕達はまず狩りをしていた。


 夜の森の中を歩いていると、少し先にウサギが数匹居た。


「よし、今夜の晩御飯はウサギで決定だ」


 ウサギを狩ることにした僕は、早速ハルカに指示を出した。


「じゃあハルカ、早速僕たちにバフをかけてくれ」


「うん、わかった」


 そう言うと、ハルカは僕とゼーレにスピードアップのバフをかけた。

 バフを掛けられたライムとゼーレの身体の周りはピンク色に発光している。


「これは魔法のあらゆるスピードも上げるから、いつもより早く魔法を打てるし、着弾も早くなるから力加減には気をつけろよ」


「あぁわかってるよ」


「それじゃあ僕は得意な光魔法を打つよ……。せーのっ!」


 僕達は息を合わせてウサギの居る場所に魔法を打った。


 森に大きな爆発音が鳴った。

 僕達は、自分の魔法の威力に驚いて、思わず耳を塞いだ。


「ちょっとあなた達何やってるの!」


 そう言うハルカの雰囲気は今までと違い、柔らかい感じに変わっていた。


 僕たちは力加減をミスってウサギを仕留めるには十分すぎる威力の魔法を打ってしまったようだ。


 まぁ僕は、山賊に気づかせるためにわざとやったんだけどね。


 だが、ゼーレは割と焦っていた。


「まっまぁ、ウサギは消し飛んでませんし予定より多く取れたので結果オーライでしょ」


「そうだよ。わかったらさっさとウサギ全部持って小屋に戻ろう」


「あなた達、本当に勇者パーティーなのよね」


 ハルカはだいぶ、僕らの適当っぷりに呆れている様子だった。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 小屋に戻った僕たちは、早速夜ご飯を食べていた。


「いやー、やっぱ味方にバフをかける光魔法は凄いな、ライム」


「そうだな、正直威力の上がり具合にびっくりしたよ」


「まぁ私もエルフの中でも強いほうだからね。でもレイラはこの何倍ものバフをかけれるし、回復や攻撃魔法も柔軟に使える優秀なやつだから期待してもいいわよ」


「あぁ期待しとくよ」


 僕たちが雑談をしながら食べているといつの間にか食べ終わっていた。


「ご馳走様でした」


「ふぅーお腹いっぱいだ」


 片付けをしていると、ゼーレが話しかけてきた。


「それじゃあ、そろそろ木材を取りに行こうか」


「そうだな」




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 小屋から出た僕達は暗い森の中、薪に使えそうな木材を探していた。


「なかなか木材に使えそうなのが落ちていませんね」


「そうだね」


 そろそろ山賊が襲ってきても良い頃合いなんだけどな。


 その時、後ろから殺気を感じた。


「来たか!」


 僕はゼーレや山賊の目を盗み姿を消した。


「あれ? ライムはどこですか?」


「さぁ? さっきまで居たんだけどな」


 その瞬間、山賊がハルカ目掛けて斬り掛かった。


「ヒャッハー!」


「ハルカさん危ない!」


「クッ」


 ゼーレはハルカを庇い、かすり傷を負った。


「大丈夫!?」


「えぇかすり傷ですから。それよりライムはどこに行ったんだよ」




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 その頃、僕は小屋に戻り、漆黒のコートと剣、そして仮面を取って近くに居たホノカ達の元に行っていた。


「ライトニング様どういたしますか?」


 僕は久しぶりに雷鳴の実力者をやれることにテンションが上がっていた。


「とりあえず君達は僕の近くにいてくれれば良いよ。山賊は僕が倒すから」


「了解しました」


 すると、影の中に居たディストラが出てきた。


「始めまして、サンダーパラダイスの皆さん。僕がライトニング様の影の中に居るディストラです」


 いきなりのことでホノカ達は戸惑っていたがすぐに状況を整理し冷静になった。


「こちらこそ始めまして、私はホノカです。これからもライトニング様のことをお願いします」


 挨拶を済ませたディストラは僕に話しかけてきた。


「それでライトニング。私はどうしたら良いんだ?」


「あぁ今回は出番ないよ」


「えぇー」


 僕がそう言うと、落ち込みながら影の中に入っていった。


「それじゃあ行こうか」


「はい」


 僕はホノカ達を連れてゼーレの元に戻った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 僕が戻ると、山賊のほとんどが倒れていた。


「流石は勇者だな」


「よっと」


 僕は雷鳴と共に、戦っているゼーレ達の前に割って入るように空からホノカ達といきなり現れた。


「誰だ!」


「なっ! あなた達は誰ですか?」


 誰か、と山賊とゼーレに聞かれた僕は、深淵から発せられたような深く低い声で話し始めた。


「我らは勇者達を陰から導くサンダーパラダイス……。そして、我は雷鳴の猫王ライトニング。いずれ、雷鳴の覇者と成る者」


「ライトニング? ハッ、調子乗りやがって」


 すると、後ろのほうに居た山賊がいきなり斬り掛かってきた。


「ふん、ライトニングなぞ知らん名だな。だが、俺達の邪魔をしようってんなら容赦はしねぇぜ!!」


 山賊はライトニングの首を斬ったその場に居た山賊たちは皆そう確信した。


「ふんっ、この程度か……」


 だが、ライトニングは誰も追えぬ速さで背後に立っていた。


「なっ! 何でだよ!?」


 山賊は胸を斬られ、自身の血で赤く染まっていたのだ。


 その光景を見た山賊達は僕を恐れ、すぐさま逃げようと走り出した。


「なんかあいつやべぇぞ」


「お前ら、逃げるぞー!」


 逃げようとする山賊を横目に、ライトニングがホノカ達に指示を出した。


「お前ら……、ひとり残らず消せ」


「了解です」


 ホノカ達は炎を出し、山賊達を焼き払った。


「ぎゃゃゃ」


「熱いっ!!」


 山賊たちが灰となり辺りが静まり返ると、ホノカ達はどこかに消えた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「ゔっゔん、あぁあぁ」


 僕は低い声からいつもの声に戻した。


 格好も戻した僕は、木の陰からふらっとゼーレ達の元に戻った。


「皆んな大丈夫? なんか大きな音がしたけど」


「ちょっと、どこに行っていたんですか? ライムがいない間に山賊に襲われたり、ライトニングと名乗る獣人が現れたり大変だったんですよ」


「へっへぇー、僕がトイレに行ってる間にそんな事があったんだぁ」


「トイレって、あなた本当に危なかったんだからね」


「ごめんなさい」


 その後、木材を集め直した僕たちは小屋に戻った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「いやー、今日は大変だったな」


「ライムのせいだけどね」


「ごめんって」


 小屋に戻ったライム達は、すぐに横になって寝る準備を済ませていた。

 そう、皆んな疲れていたので、その日は木材を置き場に置いて、すぐに寝たのだ。

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