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雷鳴の猫王と勇者達の旅路〜猫の獣人に転生した中二病、勇者達を魔王の元まで導かん〜  作者: 一筋の雷光
終極編

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183 終戦へと向かう盤上

ディストラ、そしてリサとフィオナがフレヤを撃ち倒した頃。

 混沌の世界各地では、次々に魔物達との戦闘が終わりを迎えていた。


 場所は、ライムとゼーレが初めてレイラと出会った、鉱山が近くにある村。


「うしっ! 全部僕がやっつけたぜ!」


 ヴァンリはナイフを夜空に掲げ、翠眼で倒した魔物の死骸を見つめながら血濡れた顔で不敵に笑った。


「ヴァンリ、それは言い過ぎよ。皆んなで頑張ったから得られた勝利なんだから」


 ラミナは黒髪ロングを耳に掛けて、優しい黒い瞳で見つめながらヴァンリに言った後、とある漆黒に包まれた人達の方を向いてこう話しかけた。


「サンダーパラダイスの方々もすみませんねぇ」


 ラミナが申し訳なさそうにする先には、村の近くで魔物達と戦っていた雷鳴スーツに身を包んだ茶髪ロングに青い瞳を長身狼獣人の女の子が全身返り血だらけで立っていた。

 他のサンダーパラダイスメンバーは、怪我人の治療や救助活動の手伝いをしている。


「いえ、私達は虹雷剣様達の作戦と死者を出来るだけ出さないと言う意思を実行に移したまでです」


 長身狼獣人の女の子は、冷静で感情の読めない瞳と口調でそう返しながら、茶髪ロングの髪と茶色くフサフサな尻尾の毛並みを整えていた。


「けっ、魔族共の助けなんか要らなかったのに。魔族に助けられた勇者なんて勇者じゃない!」


 ヴァンリは不満げにそっぽを向いた。


「こら、ヴァンリ。この方々が助けに入ってくださらなかったら私達だけでは村を守れなかったでしょ。ほんと、ヴァンリのその自信は何処から来るのかしら?」


 ヴァンリを見つめるラミナは、困った表情を浮かべて溜息をついた。


「ラミナ良いさ、言わせておけば。自ら作り上げた根拠なき自信も、いつかは花開く」


 汗だくで乱れた短髪の緑髪を整えながら、ヘンリーは真っ直ぐとした翠眼で勇ましいヴァンリの姿を誇らしそうに見ている。


「お父さんも昔から自分を大きく見せる言葉ばかり使っていたけれど、男ってそう言う物なのね」


 ラミナはヘンリーの屈強な肉体にそっと体を預ける。


「ハハッ、そうだな」


 ヘンリーは堂々とした体幹でラミナを受け止めて豪快に笑っている。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 一方、魔界の南川の海岸付近。

 『烈日之帝王軍(レツジツ)』所属のリアムとエレナは、白基調に赤の装飾が施された軍服を魔物の様々な血の色で彩りつつも、無事に勝利を手にしていた。


「勝った……。勝ったぞー!」


 リアムは透き通った翠眼で魔物達の死骸を見つめ、剣を夜空に高く掲げて叫んだ。


「「おぉー!!」」


 リアムに続いて、『烈日之帝王軍(レツジツ)』とヘルホワイトの面々も轟然たる雄叫びを上げて戦場の空気を揺らす。


「ちょっとうるさいんだけど。リアム君のせいだよ」


 エレナは疲れ果てた様子で軍旗を支えに座り込んで耳を塞ぎながら、綺麗な水色の瞳でリアムを見上げて文句を言った。


「アハハ、ちょっと舞い上がっちゃった。軍に入ってから何回か実践したことあったけど、この規模は初だからさ」


 リアムは汗でびしょびしょになった薄い茶髪ショートの前髪を掻き上げて苦笑いをエレナに向けた。


「ハァー、もう疲れたぁ。今すぐ寝たい、寝て良い、リアム君?」


「何言ってるんですか。僕達二人は一時的にとは言え、ホノカ様とハルカ様から『烈日之帝王軍(レツジツ)』と『ヘルホワイト』の指揮権を任されているんです。負傷者の確認や魔物の死骸処理等を終えたからでないとサンダーパラダイス本拠地には帰れませんよ」


「そうだった。それに、本拠地まで何日も掛かるからまだまだ全然休めない〜」


 エレナは憂鬱そうな半目状態の水色の瞳で美しい夜空を見上げて溜息を吐いた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ほぼ同時刻。

 ガンナー王が指揮を取り魔物達と戦士が戦っていた武装国家ムーアでは。


 既に戦いを終え、王城に戻ったガンナーが高そうな椅子に座りながら、元ガンナーの取り巻きだった緑髪のチャラそうな男にこう聞いた。


「ソラ、救助活動の方は?」


 窓を半開きにしている為、ガンナーの血の様な赤黒いメッシュが入った黒のツーブロックヘアが夜風で靡く。


「はい、ガンナーの兄貴。負傷した戦士並びに建物の崩壊に巻き込まれた国民の救助は概ね順調だそうです。後は近隣の村や小国に、我が国の武器や戦士の手配をする書類に判子を頂ければ、今日は終わりです」


 服がボロボロなソラは、和やかな雰囲気で書類の束をガンナーの座っている席に置いた。


「ハァー、お前はいつも明るいよな。時々眩しいぜ」


 ガンナーは漆黒の瞳で書類の束を見つめながら重い溜息を漏らした。


 その後数秒沈黙の間があったが、ガンナーは直ぐに気を引き締める。


「ん、ゔん。ご苦労、ソラ」


 ガンナーはソラを真剣な眼差しで見て言った。


「では、失礼します」


 そう言って、ソラは一礼した後、扉の向こうへと消えていったのだった。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 それから少しして、ラスファート王城城門前。

 そこでは、ホノカとシエル達ナイトサンダーズ、そしてマーシとステラが辺りの魔物達を掃討し終えて集まっていた。


「アンタ凄えな。ガチで人間か?」


 マーシはホノカの肉体を凝視している。


「マーシ、エルフの人が話したそうにしてる」


 ステラはダウナーな口調でマーシを止めた。


 マーシがホノカきら離れた事で、シエルが報告を始める。


「ホノカ様。付近を捜索していた所、ナイトサンダーズ空挺班班長のスヤカから情報が入りました。ナイトサンダーズは中央区の魔物を制圧し、その他の区を担当しているサンダーパラダイス戦闘員も順調に制圧を進めているとの事です」


「あのハヤブサ獣人の女性か。流石空挺班班長、情報収集が早いな」


「報告ご苦労、シエル。マーシ君とステラ君も、私達の兄妹喧嘩に付き合ってくれてありがとう。後であの騎士にも礼を言いに行かねばな」


「礼ならもう聞いたから良いぜ」


 ホノカ達が振り向くと、そこにはエリーと一緒に歩いて来ているライアンが居た。


「皆さん、お疲れ様でした」


 エリーは太陽の様に周りを明るい気分にさせるにこやかな笑顔を浮かべて優しい口調で言った。


 数分後。

 ホノカ達がライアン達と話していると、男勝りで豪快な女性の声が正面から聞こえて来た。


「おぉー、エリーも無事だったか。それにしてもアタイより早いなんてやるじゃねぇか」


「いえ、ライアンさんの助力もあり、早く魔物の掃討が終わったんですよ」


「やっぱライアンは優しいなぁ」


 ファティーは満面の笑みを浮かべながら、ライアンの灰色ツンツン髪をわしゃわしゃと荒く撫でている。


「うるせぇ、東南区と北東区の壁がそこの姉ちゃんに燃やし尽くされて跡形も無く消えたから一応見に行っただけだ。それより、マテオの奴とは一緒じゃないのかよ」


 ライアンは照れくさそうに頬を赤らめながらファティーに聞いた。


「あぁ、一応会ったんだけど。なんか北西区の掃討は完了したから、『ロイヤルティーナイト』っつう魔族の連中と近隣の村とかにも支援しに行くって、アタイに作戦完了の報告任せてどっか行っちまった」


 そこまで言ったファティーは溜息を吐く。


「あ、南西区の方はジャスティスクローが居る空想教会に任せてあるから大丈夫だぜ」


 ファティーの話しを聞いていたマーシがいきなり目の色を変えて南西区方面へと歩みを進め始める。


「あのおっさん達が働いてんなら、俺達も加勢しにいって追加報酬もらうか。魔力温存の為に歩いて行くぞ、ステラ」


「金貰ったら、この前行きそびれた高い飯屋行こ。あればの話しだけど」


 マーシの後を気だるげな足取りでステラも追う。


「そうだな」


 マーシがそう言った後、二人の姿は直ぐに見えなくなった。


 マーシ達が居なくなって直ぐ、ファティーは辺りを見渡しながら不思議そうな表情で口を開ける。


「そういや勇者パーティーは何処だ? こんな静かなんだ、もう魔王はぶっ倒してんだろ?」


「さっきライトニングが魔界へ向かって飛んで行くのをシエル達と一緒に見た」


「ライトニングは優しいんだよー。きっと勇者達はディストラさんの魂之力ソウルで影の中に匿ってるんだよ」


「この前神の世界に行かれた時もそうしていたみたいですしね」


「んー、いまいち分かんねえ所が多いが……。ちぇ、ジャスティスクローのエイダンが正式に勇者パーティーを空想教会の冒険者に勧誘したいって言ってたのに」


 ファティーは残念そうに夜空を見上げている。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 同時刻。

 破壊された魔王城跡地では、ライトニングとアンナとノア対ガルノとナハトの戦いが繰り広げられていた。


「進化した獣人と魔王で消耗戦やってたら日が暮れる。流れを掴むか……。『稲妻之海(ライトニングシー)』」


 ノアが右手を横一線に振ると、ノアの足元から水が溢れ出す様に現れ始め、ナハト達が立っている場所目掛けて多数の稲妻が中で蠢く巨大な波が押し寄せていく。


「ぶはっ!」


 ナハトとディヒルアは余裕の表情で稲妻を含んだ巨大な波を受け入れたが、全身を負傷しているガルノは軽々と押し流されてしまった。


「クソっ、今更痺れが何だ! 全部巻き上げてやるよ!! 『紅蓮激情之竜巻クリムゾン・トルネード!』」


 ガルノは火傷痕が複数残る痛々しい右腕を素早く上空に打ち出した。


 少しすると、ガルノを中心に周りを押し出す強い風が全方位へと広がりライトニング達は足を止められる。


 足が止まったライトニング達が次に臨戦態勢に入る頃には、魔王城跡地が隠れ切ってしまうほど巨大な紅蓮色をした竜巻がライトニング達を取り囲んでいた。


 巨大な紅蓮色の竜巻の中心に居るライトニング達は吹き荒れる暴風により、立っているので精一杯である。


 紅蓮の竜巻は、魔王城の柱だった物、畳や机や草木、そして稲妻を含んだ大量の水等、周辺にある物全てを巻き上げていく。


「ノア、早く貴方のチート能力で振り払って」


 アンナは金に光る髪を押さえつつ、ライトニングの右腕に抱きつきながらノアに言った。


「分かってる。くそ、あの魔王と神は余裕そうなのにムカつくな!」


 ノアは苛ついた目線でナハト達を睨みながら、左腕に紅蓮の風を纏わせた。


「お前の魂之力ソウルはこれだろ! 『終無激情(クリムゾン・ハート)』だろ! これでお前ごとぶっ飛ばす!」


 そう言い放ったノアはガルノの元へと飛び出していく。


 体がボロボロなガルノは、嬉しそうに笑いながらノアを待ち受ける。


紅蓮激情之突風(クリムゾン・ブラスト)!!』


 ノアが吹き荒れる紅蓮の風纏った左腕を素早く振り払う。


 その瞬間、紅蓮の突風がガルノを襲い、ガルノは一瞬で北の空へと吹き飛び、同時に紅蓮色の巨大竜巻も消滅した。

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