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152 神狩り

 魔界の南にある海岸で、『ヘルホワイト』と『烈日之帝王軍(レツジツ)』の連合軍が、魔族と魔物の大群との戦闘を開始した頃。


 ヒストア王国外れにあるヒストア図書館入り口付近では、エマとスズリ率いる『紡ぐ者』の全員達がが国の騎士たちと一緒にアビスによって産み出された魔物達と戦っていた。


「これより先には一歩も踏み入れさせるな!」


 エマはピンク色の水を纏わせた黒と紅色のサーベルで、マグマの体を持つ獅子の魔物、『溶岩獅子(ボルグン)』を切り伏せながら、大きな声で指揮を取った。


「港や国までの道はボクが切り開く、『突風之道(スコール・ロード)』」


 スズリは、碧い風を纏った右手を縦一線に振り下ろし、碧い突風が通った所に魔物の居ない道を作り上げた。


 その道を、騎士達は走って行く。


「姉さん、ここの戦力は十分だ。ボクは国の方に加勢してくる」


「うん、ここは任せて。書物もオスカー王様達も守ってみせる」


 エマは襲いかかって来た赤い毒を牙から放出している白い大蛇の脳天をフリントノックピストルで撃ち抜き、ピンクのロングヘアを夜風で揺らしながら、自信満々な笑顔で言い放った。

 その言葉を聞いたスズリは、誇らしげな表情で山を降りて行った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 舞台は変わり、魔界の中心にある『星神巨樹の森(ヴァラ・ヴァルト)』の北側。


 そこでは、邪神達に追いついたラビッシュ達とテンヤ達、そしてあらかじめ待ち伏せしていたハルカとユキネが邪神達と戦闘していた。


「おんぶされてたって事は、ウサギの奴より弱えよな!!」


 フォパースは一瞬でミズキの目の前に現れ、右の拳を構えた。


「貴方の様な脳筋との勝負の場合は、私の方が少し有利なんですよ」


 フォパースの拳が襲いかかる中、ミズキはギリギリで水の盾を前方に出した。


「そんな盾、ぶっ壊れちまうぞ!!」


 ミズキの出した水の盾に拳を思いっきり打ち込んだフォパースは、盾は確実に破壊したが、自身の体も魔界の北側へと吹き飛ばされていた。


「は? ……え?」


 フォパースは自身の描いていた未来とはあまりにかけ離れた現実に、脳は理解する事が出来ずにいた。


「おりゃー! 『破滅之暴風(ルイン・テンペスト)!!』」


 橙色の風を両足に纏わせているラビッシュが、後ろに吹き飛んで態勢を崩しているフォパースの横腹を右足で薙ぎ払って更に北へと吹き飛ばす。


 北へと吹き飛ばされたフォパースは、大きな岩にぶつかった後、蹴りを入れられた横腹を抑えながら立ち上がった。


「くっ、アイツの風の色と進化した獣人にしても異常な怪力。まさかアイツ、俺様の神授之権能(ゴットソウル)持ちか? 面倒だ!」


 フォパースは弾丸の様な速さで、ラビッシュに突っ込んで行った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 一方、『星神巨樹の森(ヴァラ・ヴァルト)』から北に少し離れた所では、全身黒一色の闇と化しているシューゼとバイクに乗っているテンヤとアカネが睨み合っている。


「お前らに手間取っている暇は無いんだが」


 シューゼはテンヤ達との間合いを探りながら話した。


「へっ、悪りぃな。俺達はお前ら邪神を殺す為に長い旅をしたんだ。ここに来て逃す訳には行かない。それとも、神ともあろう者がまだ追いかけっこを続けるつもりか?」


 水色のレンズをしたメガネ越しにシューゼを睨んでいるテンヤは、挑発的にそう言い放つ。


「へへっ、()()()は既に始まってるんだよ」


 テンヤの後ろに座っているアカネが、意気揚々と小悪魔っぽくシューゼに言い放った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 そして『星神巨樹の森(ヴァラ・ヴァルト)』から一番近い所では、ハルカとユキネがルークと戦闘していた。


「生命の恐ろしさに抱き潰されろ! 『森神之縛八蛇フォレスト・オブ・アブソーブバインド!』」


 ハルカが地面に手を付いて魔力を流すと、地面から大きな桜の木が苗から満開の桜を咲かせるまで一瞬で成長し、大地と空が黒に染まっている魔界に満開の桜の大木が出現した。


 数秒後、桜の木の下から八つの根っこが突き出る。

 地面から突き出て来た八つの木の根っこは蛇行しながら、ルーク目掛けて這い寄った。


「動きが読みづらい……」


 ルークは蛇行しながら近づいてくる木の根っこを何度か交わしていたが、背後に回っていた木の根っこに右足を巻き付けられて捕えられた。


 木の根っこに右足を捕えられたルークを、七つの木の根っこは瞬く間に包囲し、全身をぐるぐる巻きにした。


「自然に抱かれながら圧死しろ」


 ハルカがピンクの鋭い眼光を向けている先では、八つの木の根っこが徐々に巻き付ける強さを強めて行き、ルークは苦しそうに悶えている。


 だが少し経った時、ルークの口から笑い声が発せられた。


「ククッ、終焉之帝(終わりを告げる者)』は、生命力を奪って闇魔法の糧とする力。自然の生命力も対象内ですよ「終焉之導手リード・オブ・エンドハンド


 ルークは、自身を巻き付けている木の根っこに手を触れ、生命力を奪い始めた。


 すると、段々と木の根っこの力は緩んで行き、満開の桜も散っていった。


「相性最悪……」


 枯れ果てた桜の大木と木の根っこを見たハルカは、怒った表情で小さく呟いた。


 ルークは奪った生命力を糧に、両腕に闇の力を宿し、両腕を悍ましい黒腕へと化していた。


「あの時は狭い廊下でいきなり出されたので対処できなかったですが、二度目は流石に対処させてもらいます」


 ルークは自信満々に言い放ちながら、黒い闇に染まった右腕を掲げた。


 掲げられた右手の先からは、闇魔法で作られた玉が出現した。

 闇の玉は渦巻き始め、激しい風を巻き起こしながら肥大化していく。


「クッ、流石に耐えられない」


 ハルカとユキネは、その玉の引力でルークの下に引き摺り込まれて行った。


「貴様らは此処で終焉を迎える。私の前で森の力を使った事、後悔して死ね。『終焉の審判』」


 ルークは、闇の玉の引力で引っ張られてくるハルカとユキネの前に闇に染まった黒腕を突き出して待ち構えている。


「今からじゃ全身凍らせる事は出来ない。せめて両腕だけでも……。『魂封之氷矢ハンター・フォックスアイスアロー』」


 闇の玉に吸い込まれているユキネは、白い氷で出来た矢を手に持ち、ルークと接触する直前に投げた。


 投げられた白い氷の矢はルークの両腕を刺し、当たった両腕を凍らせた。


 白い氷で凍った両腕にハルカとユキネは受け止められる様な形で衝突する。

 その間に闇の玉の威力は落ちて行き、ハルカ達を吸い上げる事は無かった。


「何だこの氷は? 魂之力ソウルが使えない!?」


「ルーク! その氷をぶっ壊さねぇと、お前は死ぬぞ!!」


 離れた所でラビッシュとミズキに少し押され気味に戦っているフォパースが、大きな声でルークに叫んだ。


「その様です、ね!!」


 ルークは、黒土の大地に両腕を全力で叩きつけて白い氷で凍らされた両腕ごと破壊した。


「おぉー、戻りました」


 氷を破壊した事で魂之力ソウルの効果は戻ったものの、ルークの白く美しい両腕からは、切り傷などから血が大量に地面へと流れ落ちている。


「痛そうです」


 ユキネはルークの自傷行為に引いて、視線を逸らした。


「貴方のせいでしょう? ま、治るので良いですが……。私の美しい肌を傷つけた事に変わりはありません」


 ルークが両腕に魔力を集めると、傷口は一つ残らず完璧に塞がり、血も止まった。


「エルフの方は元々気に食わなかったですが、今ので貴方も殺す事に決めました」


 ルークは血の跡が付いている左腕を撫でながら、怒りで歪んだ顔を上げ、鋭く黄色い眼光でユキネ睨んでいる。


「そうか、そうだな。厄介な奴から消すか!」


 フォパースはそう大きな声で言い放ち、雷鳴の様な音と共にユキネへと走り出した。


「なっ! 待つのです!」


「ユキネ、危ない!」


 ラビッシュとミズキは意表を突かれ、動きが遅れてしまっている。


 ユキネの前まで移動したフォパースは、反射神経では反応できない程のスピードでユキネの美しい首筋を右手で強く握りしめた。


ユキネの首を掴んだフォパースは、ユキネの足が宙に浮く高さに持ち上げ、段々と握る手を強めていく。


「かはっ、くっ……」


 ユキネは喉を強く締め付けられた事で、少量の血を吐いてしまっている。


「おい力の神、その子は友人の大切な仲間なんだ。今すぐ手を離せ」


 バイクに乗っているテンヤとアカネは鬼の形相でフォパースを睨んでいた。


「ハハッ、恐いねぇ」


 フォパースは、睨んでくるテンヤ達を軽くあしらった。


「全員、動くなよ。一歩でも動いたらコイツの細い首を握りつぶす」


 テンヤ達に見せびらかす様にしてユキネは高く挙げられ、フォパースは不敵な笑みを浮かべて戦場のど真ん中に立ち続けている。

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