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149 破滅の始まり。狼煙上がる神授大戦

 魔王アビス達を追う為、夜空へと舞い上がったライトニング。


 魔王アビス達の後を追ってから十数分後。

 大陸最南端にあるゼーレの故郷の村、イビリーズ村の上空を飛んでいた。


 千年手付かずの海は、海水が澄み渡ってて綺麗だったな。

 やっぱ、人為的にあれこれいじらない方が自然は綺麗なんだよな。

 ま、あの海域が冷たい海域だからってのもあると思うけど。


 後、何とかこの村に来る前にはアビス達を視認できる距離に追いつけたが、流石に初っ端から派手な事はしないか。


 ライトニングが安堵の表情を浮かべた矢先、アビスが黒い魔力を右腕に集中させ、右腕を掲げた。


「魔族の時代が再び始まる……。大陸を滅ぼせ、力の限り暴れろ、魔物ども。」


 アビスはそう言いながら右腕から魔力を放った。

 アビスの右手から放たれた魔力は、アビスの右掌を中心に放射線状に広がり、流星群の様に地上へ降り注いだ。


 その黒い魔力が地上に着くと、黒い魔力は知能無きオーガやゴブリン、そして巨大狼(ジャイアントウルフ)等、様々な魔物が姿を現し、イビリーズ村を襲撃し始めた。


「やはりそう来るか。ラビッシュの情報通りだから焦りはしないが、少し心配だな」


 ライトニングは上空から見下ろしながらそう言った。


「ま、こんな辺境の地に住む者達だ。自分たちで何とか出来るだろ。それに、他の村や街、小さな国にも、ルミナス商会やムーアで生産した大量の武器を配ったと聞いている。我はアイツらに離されない様にするのみ」


 そう言って、ライトニングは更にスピードを上げてアビス達の後を追い続ける。


 一方、アビス側はと言うと。


「ふっ、ライトニング。見ているだけならこちらは遠慮せんぞ」


 そう言って、アビスは北へと上空を移動しながら、大陸各地に黒い魔力を降り注ぎ、魔物達に村や街を襲わせ続ける。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 それから数分後。


 場所は豪雪地帯に位置する雷鳴スーツ製作に協力してくれたジョンさんが居る温泉街。

 ここも、アビスが産み出した魔物達による襲撃を受けていた。


 街では、雷鳴スーツを着た種族性別問わず様々なサンダーパラダイスの戦闘員達が魔物達を食い止めている。


 そして、旅館の社長室では。


「ここはサンダーパラダイスの休憩所の一つ。何より、雪山の旅による疲れを癒す場所。魔物どもに屈してはならん。我らもサンダーパラダイスの戦闘員の人達に続くのだ」


 旅館の社長であるジョンが従業員達に指示を出していた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ほぼ同時刻。

 ライムとゼーレが初めてレイラと出会った、鉱山が近くにある村。


 そこでは、ゼーレに修行をつけて貰った勇者を目指す緑髪の少年が、村の屈強な男達と共に魔物達と戦っていた。


「う〜、やー!!」


 少年は、ナイフで背の小さなゴブリンの棍棒を抑えながら、お腹を蹴って吹き飛ばした。


 少年は息を荒くしながら、戦場を見ている。


「あまり無理するなよ、ヴァンリ」


 少年から少し離れた先では、ヘンリーが大きな鉄製の盾を使ってオーガの拳を受け止めていた。


「父さんは、母さんや他の人の事を考えて。僕は勇者になる男なんだ。こんぐらいの魔物相手なら、一人で生き延びれる」


 ヴァンリはナイフを魔物達に向けて、鋭い緑色の眼光を放っている。


「ふっ、お前はとっくに勇者だよ……」


 ヘンリーは息子の勇気溢れる立ち姿を見て、誇らしそうに言った。


「お父さん、危ない!」


 ヘンリーがよそ見をしていると、黒髪ロングのヴァンリのお母さんが叫んだ。


 その声を聞いて、ヘンリーが右横に視線を向けると、そこには棍棒を振り翳しながら物凄い勢いで走ってくる小太りのゴブリンが居た。


「ラミナ、ありがとう。喰らえ!!」


 ヘンリーはそう言いながら、盾でオーガを吹き飛ばした後、片手に持っていた斧で体勢を崩したオーガの首を切り払う。


 ヘンリーはそのまま、こちらに向かってきていた小太りのゴブリンに斧を振り下ろして、流れる様に斬り伏せた。


 その後も、ヴァンリ達の戦いは続いていく。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 場所はヴァンリ達が戦っている村の近くにある山の中。


 そこでも、サンダーパラダイスの戦闘員達が陰ながら魔物達を食い止めていた。


「オリャー!」


 雷鳴スーツに身を包んだ茶髪ロングに青い瞳。

 そして、スレンダーな体型の狼獣人の女の子がゴブリンの首に噛みつき、噛みちぎった。


 首を食いちぎられたゴブリンは声を発する事も出来ず、地面に倒れる。


 それを見ていた筋骨隆々な女のオーガがチャンスと見て、狼獣人の女の子に向かって走り出す。


「グウオォーー!!」


 口に付いた魔物の血を拭っている狼獣人の女の子の背後から、女のオーガが殴りかかる。


「ウゥゥ」


 口の周りにまだ血を残し、月明かりに照らされながら鋭い牙をむき出しにして威嚇しているその狼少女の姿は、まさに狩る側の獣であった。


 だが、女のオーガの走りは止まらなかった。


「オオォー!!」


 そして、女のオーガは狼獣人の女の子に拳を振り翳した。


 その瞬間、女のオーガの頭は炎の球によって吹き飛ばされた。


「っ!」


 狼獣人の女の子が冷静に戻り、炎を球が飛んできた方に視線を向ける。


 そこには、ガッツポーズを取っているオレンジ髪に黄色い瞳をしている背の小さなエルフの女の子が居た。


 それを見た狼獣人の女の子は、安心した様な笑みを浮かべ、再び魔物に向かって走り出していった。


 そしてその後も、その山ではサンダーパラダイスと魔物の戦いが陰ながら繰り広げられ続ける。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 数分後。

 月が見下ろす武装国家ムーアにも、アビスが産み出した魔物達が侵攻していた。


「この国は力の強い者が正義だ。そんな国に住む俺様達が、魔物如きに負ける訳ねぇよなぁ!!」


 ガンナーは、ライトニングが簒奪祭の受付に行く前に参加者達を見下ろしていた時計台で、大きな両手剣を掲げ上げて、国民を鼓舞した。


「やっぱり、戦場に立つガンナーの兄貴は世界一カッケェっす!」


 ガンナーをキラキラとした目で改めて慕い直し、観呼しているチャラそうなガンナーの取り巻きは、腰に剣を携えている。


「今だけでも良い! スラムの奴も富裕層の奴も、階級までも全部忘れて、共通の敵を滅ぼせー!!」


 ガンナーの力強い言葉と共に、国民達は雄叫びを上げながら魔物達に突っ込んで行った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 それから十数分後。

 遂に、アビス達が大陸一の国ラスファート上空へと辿り着いた。


「この国か……」


 アビスは、ラスファートから少し南の上空で、家や街頭で煌びやかな夜景を眺めていた。


「この国と残りの地域にも魔物を産み出せば、我の魔力は殆ど無くなる。力を取り戻すまでの間は頼んだぞ」


「「お任せください、魔王アビス様」」


 アビスの両隣にドラゴンで飛んでいるセイカとエミリアが頭を下げた。


 それを見たアビスは、黒い魔力を掌に集中させた右腕を掲げ、魔力を放射線状に解き放ち、ラスファートを中心とした大陸のあちこちに降り注いだ。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 アビスが放射線状に黒い魔力を降り注がせている時、地上のラスファート南西区にある空想協会では、異変を感じ取ったジャスティスクローとマーシ兄弟が屋上デッキで、流星群の様に降り注ぐ黒い魔力を眺めていた。


「この魔力が、新しい国王が言ってた魔王か」


 マーシは、点ほどの大きさしか無いドラゴンに乗っているアビスの強大な魔力を感じて、自信満々な笑みを浮かべていた。


「俺達二人で充分じゃね?」


 ステラもアビスの強大な魔力を感じても尚、強気な態度でそう言った。


「ふっ、俺達とまともにやりあえたからって、調子に乗るな。相手は魔王軍だ」


 イーサンは背中に斧を刺した状態で腕組みをしながら、アビスの居る方向を見つめている。


「へいへい。んじゃ、俺達は作戦通り北東区に行ってきま〜す。行こうぜ、マーシ」


「おう、行くか」


 ステラとマーシは軽い口調でイーサンをあしらいながら、兄弟仲良く手を繋いで、屋上デッキから出ていった。


「全く。あの態度では、いつか痛い目を見るぞ」


 溜息を吐きながら、イーサンは頭を抱えている。


「ま、親の居ない子供がスラムで過ごしてたら、生き残る為にああ言う性格になるんだろ」


 エイダンは、イーサンの肩を優しく叩いて諭した。


「さ、私達もじっとしていられませんよ」


 サキはそう言って、二人の背中を押しながら屋上デッキを離れた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 それから少しして。


「このぐらいで良いか」


魔法を撃ち終わったアビスは、疲れた様子で右の肩を回した。


「では、我が先陣を切る。二人とも、作戦通りに」


「「はい!」」


 セイカとエミリアの返事を聞いたアビスは、滞空状態を維持しているドラゴンの上で立ち上がった。


「ヒストアよ、返して貰うぞ……」


 そう呟いたアビスは、ドラゴンの上で飛び上がった。


 飛び上がったアビスは右拳を強く握り締める。


 その直後。

 アビスは右腕を雷霆の如き速さで後ろに振り、その衝撃で起こった突風でラスファート王城へと突っ込んで行った。


「ふっ、流石にアビスも魔王だな。ディヒルアに認められるには、最低限あのぐらいのフィジカルは必要か」


 アビス達よりも更に上に浮かんでいるライトニングは、月光に照らされた不敵な笑みを浮かべながら、王城へ飛んでいくアビスを見下ろしていた。

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