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137 赤き鬼教官率いる軍隊

 深夜0時。

 サンダーパラダイス本拠地の中央に聳え立つ五階建ての洋風な豪邸。


 そこの四階にある会議室に、大きなリュックを手に持ったライトニングが到着した。


「シエル達はまだ帰ってきてないのか……」


 でも、リサとユキネは間に合ったみたいで良かった。

 テンヤとアカネもちゃんと居るし。


「じゃ、後はユキネさん次第って事で」


「いや〜、この一瞬でそんな強そうなのを思いつくなんて、流石私の天才君、だね」


 アカネは満面の笑みでテンヤの頭を強く撫で回して褒めた。


「そうですね。教えてくださりありがとうございます、テンヤさん」


 ライトニングが会議室に入ると、さっきまで隣の席と言う理由で話しをしていたテンヤとアカネとユキネが話しを辞めて正面を向いた。


 ライトニングは重々しい会議室を堂々と寛歩しながら、中央のシックなデザインの王宮チェアに腰掛けた。


「えぇ……。でも、ルナさんやディストラさんも付いていますし、シエル達三人もナイトサンダーズを任せるに値する実力者です。いずれ帰ってくる筈よ」


「そうだな。じゃあ僕は朝までにはゼーレ達の所に帰らないといけないから、早速始めよう。魔王軍との戦いに向けた最後の会議を……」


 ライトニングは不敵な笑みを浮かべる。


「進行はアンナに頼む」


「承知しました……。先ず初めに、我々サンダーパラダイス側の戦力を整理したいと思います」


 アンナは資料を手に椅子から立ち上がる。


「一つ目の戦力。サンダーパラダイス自身が持つ戦力は、私を含めた虹雷剣七人とシエルさん達が指揮するナイトサンダース300名。そして、大陸各地にいるメンバーが戦闘員以外も合わせると200万人程。そして、黒天の厄災として知られるルナ様」


 やっぱ、戦闘員以外も合わせるとバカみたいな桁になるな。

 マジで、小さな国なんて余裕で作れるぞ。


「最後に、我々サンダーパラダイスの盟主であるライトニング様と影からサポートされているディストラさんに加えて、つい先日組織名が決まったアカネ率いる軍隊、『烈日之帝王軍(レツジツ)』です。この軍隊の戦力は、700程となっています」


 アンナは、燃え上がる太陽が中央にデザインされ、その上に『烈日之帝王軍(レツジツ)と書いてある旗を長机の中央に広げた。


「最近、見所のあった若い奴が一気に成長して、教育すんのが楽しいんだ」


 ホノカは軍旗を見ながら笑顔でそう言った。


 ふっ、かっこいい旗も作って、気合いは充分ってか。

 てか、レツジツの下にある文字、魂之力ソウル名みたいだな。


「なぁホノカ。このレツジツって、ホノカの魂之力ソウル名から取ったのか?」


 ライトニングがそう問うと、ホノカは嬉しそうに話し始めた。


「よくぞ聞いてくれた! そう、私の魂之力ソウル名は『烈日之帝王(烈日の覇者)』。あらゆる物質を烈日の如き炎へと変える力だ。それと、『烈日之帝王軍レツジツ』専用の軍服も、人数分ちゃんとルミナス商会に作ってもらったぜ」


 はへぇ〜、ホノカもちゃっかり強い魂之力ソウル貰ってんだな。


「ホノカさん。そんなに強い魂之力ソウルを持っているなら、何でヒストア王城での戦いでは使わなかったんですか?」


 ハルカは少し不満げに言った。


「あぁあれは、あそこで私が魂之力ソウルを使うと、貴方の魂之力ソウル的に共闘が難しくなるから。流石にあの二人相手に共闘を捨ててまで魂之力ソウルを使って勝てる自信は湧かなかった。それに進化した獣人やエルフ程、魔力もないからな」


 ホノカとハルカの会話が終わったのを確認したアンナは話しを再開する。


「続いて、元ナハト教団エンペラーズの一つ、『蒼の眼』のテンヤさんとその助手、アカネさんと元魔王軍のロイヤルティーナイト代表者ミアさんです」


 呼ばれたテンヤ達はその場で立ち上がって一礼し、再び席に着いた。


「最後に、人類史上最強の魔剣士と謳われ、先日ラスファート国王に着任したばかりのリサさんと『奴隷聖女(セイントスレイブ)』と呼ばれていたサリファさんです。リサさんに関しては極秘情報ですので口外無用でお願いします」


 リサとサリファは緊張しながら立ち上がり、一礼してから座った。


「それでは続いて、サンダーパラダイス所属者以外の味方勢力の確認です」


「初めは、ハルカさんが盟主を勤めておられる『ヘルホワイト』。構成員数は百名程度ですが、魔王との決戦までには更に増える見込みです」


「ライトニング。改めて、私達ヘルホワイトを快く受け入れてくれてありがとう。森を司る神の力、『森神(フォリスト)』の力を存分に発揮する事を約束する」


 ハルカは席を立ち、ライトニングの前まで行って握手を求めた。


「ハルカも神授之権能ゴットソウル持ちなのか、頼もしいな。こちらこそよろしく」


 ライトニングとハルカは熱い握手を交わした。


「これで、この場にいる中で我がどんな魂之力ソウル持ちか知らないのはラビッシュとツカサとアンナとかだけ何だけど、教えてくれるか?」


「ボクの魂之力ソウル神授之権能ゴットソウル力神(フォパース)』。常時筋力を強化するだけでなく、触れたベクトルの動きを操れるのです!」


 ラビッシュは自信満々に胸に手を置いて言い放った。


「俺様は『魔力の無い最強』だからな。魔力を使う魂之力ソウルも当然無い!」


 ツカサは右拳を強く握りしめながら言い切った。


「わ、私の魂之力ソウルは、仲間に自身を元にしたステータス値を割り振れる究極之魂アルティメットソウル『統治者』と……」


 アンナは頬を赤らめて言いづらそうにしていた。


「ん、どうしたんだ? あ、もしかして恥ずかしい名前の魂之力ソウルなのか?」


 ライトニングが狼狽えていると、アンナは下を俯いて恥ずかしがりながらも、小さな声で話し始めた。


魂之特性ユニークソウル、む、結ばれ……」


 頬は更に赤く染まり、アンナは恥ずかしさのあまり、顔を上げられずに居た。


「『真実之愛(結ばれた魂)』よ!」


 アンナは顔を赤くしたまま、勢いに任せて大きな声で言い放った。


 大きな声で言い放った後、アンナは再び下を俯いて、しばらくの間恥ずかしくて顔を上げられなかった。


 そんなアンナの隣に座っているノアは、顔を上げられないアンナを見兼ねて口を開いた。


「『真実之愛(結ばれた魂)』は、魂を捧げたいと想う程愛している相手と、魂が繋がる魂之力ソウルらしい」


 ノアがそう話すと、アンナが少し強めにノアの横腹を叩いたが、ノアは話しを辞めなかった。


「そんで、魂が繋がった相手のステータスや魂之力ソウルがアンナの持つステータス等に上乗せされるって言ってた」


「……、そうよ。だから、今の私が魂之力ソウルを解放すれば、貴方より強くなれる。そして、貴方から貰った力を仲間達に振り分けられるの」


 観念したアンナは恥ずかしそうにしながら説明した。


「え、その組み合わせめっちゃ強いじゃん。もしかして、僕の破滅帝も皆んなに振り分けられるのか?」


「まぁ今まではその必要がなかったからやってなかったけど、多分できると思う」


 その言葉を聞いたライトニング、そしてテンヤとアカネは、ガッツポーズをしながら顔を見合わせた。


 破滅帝を皆んなにも分け与えられるなら、この世界で邪神を殺せるのが僕だけじゃなくなる。

 アンナから皆んなにも、時空の壊し方を教えてもらっとかないと。


「『真実之愛(結ばれた魂)』、僕にも発現しなかったのが惜しいな」


 ライトニングは残念そうに椅子へともたれ掛かった。


「ライトニング様が魂を捧げたいと想う程、誰かを愛せば発現するかもしれませんね」


 ユキネは悪い顔を浮かべている。


「だ、誰かって……」


 アンナは心配そうにライトニングを見つめている。


 それを他所にミズキがニヤニヤしながらこう発した。


「結ばれた魂……。そう、これは言うなれば、結魂(けっこん)ね」


 それを聞いたアンナは勢いよく席を立ち上がり、動揺した様子でライトニングをチラ見しながら大きな声を上げてこう言う。


「ミズキ! ライトニングの前で言わないでって言ったでしょ!!」


「ふふっ、ごめんなさい」


 ミズキは楽しそうな笑みを浮かべ、ライトニングは苦笑いをしていた。


「ライトニング、良かったな。ディアブロの時は全く恋愛運に恵まれなかったのに」


 テンヤは揶揄うようにして話した。


「あの時の我は、魔界を総べる為に毎日魔族達と争ったり、神に抗う術を模索する為に必死だったからな。そんな暇が無かっただけだ。それだと言うのに、テンヤ達は今と同じで恋人関係性だったがな」


 ライトニングは、ニヤついた目でテンヤとアカネを見ていた。


「そ、それは、魔王城に行くまでの間に仲良くなってただけよ」


 皆んなの前で関係性をバラされたアカネは恥ずかしそうにしながら反論し、テンヤは顔を赤くしてウザそうにしていた。


 一連の話しが終わると、ライトニングは椅子の横に置いていた大きなリュックから悪滅光爆剣(デストライトソード)』を取り出してホノカの先まで歩み寄った。


「いつもみんな頑張ってるけど、今日はホノカにプレゼントがある」


 ライトニングがホノカの前まで行くと、ホノカは急いで立ち上がって姿勢を正した。


「この剣は『悪滅光爆剣(デストライトソード)』と言って、ゼーレの先代勇者フラト・エフラームが今で言う魂之力ソウルで作った特殊な光魔素が込められている。フラト曰く、この剣は魔王に対抗する為の希望だそうだ」


 ライトニングは金色と白に輝く剣を両手で横に持って、ホノカの前に差し出した。


「っ! そんな貴重な物頂けません。それに、魔王に対抗する希望なのでしたら、勇者様にお渡しすべきでは?」


 ホノカは焦りながら、あちこちに目線を泳がせている。


「いや、ゼーレは旅の初めから使っている安い剣で十分戦えてるから必要無いよ。それに、ゼーレとレイラが魔王と戦う時は我が加勢するから心配無い」


「ですが、やはり私には荷が重いかと……」


 自信なさげに小さな声でそう呟く声からは、いつもの勝ち気な雰囲気は微塵も感じられなかった。


「ホノカは最終決戦でお兄さんと戦って自分の手でお兄さんを止めたいって言ってたよね?」


「それはそうですが……」


「だったらこの剣を持つべきだ。お兄さんが魔王アビスの血を貰っているのなら、魔王をも恐る特殊な光魔素が込められたこの剣はお兄さんの体にも有効な筈……」


 ライトニングは真っ直ぐとした黒い瞳でホノカを見つめて話した。


「分かったよ、ライトニング。私の負けだ」


 ホノカは吹っ切れたのか、溜息を吐いた後、いつもの明るく勝ち気な雰囲気の笑顔を浮かべながら剣を受け取った。


 その後しばらくの間、二人は互いの覚悟を伝え合うように熱い視線で見つめ合っていた。


 数秒後、ライトニングは自身の席に戻り、話しを続けた。


「ゔっゔん。それではここからは、魔王軍側の主力にどのようにしてこちらの主力をぶつけるかを話し合おう。戦局を俯瞰的に予想するのはテンヤとアンナ、それとホノカが得意だから、この三人を中心に作戦を練る。勿論、これは理想論でしか無い、本番では柔軟な判断を……」


 ライトニングが真剣な表情で話している中、突然ライトニングの後ろにある窓ガラスが揺れ始めた。


 数秒後、窓ガラスは勢いよく割れ、外から数人の影が転がり込んできた。


「ハァハァ。滅龍であるぼくも、流石に同じ滅龍、しかも魔王に操られた奴を相手に逃げるのは疲れるよ〜」


 黒髪ショートの少女が、ガラスが散らばる床に倒れ込みながら弱々しい声を上げた。


「ルナ達!? てか、魔王に操られた同じ滅龍って……」


 ライトニングは椅子から立ち上がり、驚いた表情でルナ達を見ていた。


「うん。ぼくの弟ソルが、魔王ナハトに操られてて、魔王城で寝てたんだよ」


 ルナが倒れながらそう言う近くには、傷だらけのディストラとシエル達が意識を失っていた。

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