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131 最後の魔王の側近

「殺す! 私はまだ死ぬわけにはいかない!」


「まだ戦い足りねぇぞ!! ライトニング!」


 ライトニングの途方も無い魔力を目の当たりにしたエスメとガルノは死を直感し、ライトニングへと集中攻撃を始めた。


 しかし、無数の血の棘は蚊の様に叩き落とされ、極限の感情が乗った赤い風は破滅の雷で完膚無きまでに破壊された。


 一方リサ達はと言うと、その様子を傍観する事しか出来なかった。


 ライトニングの魔力が最高潮に達し、広がった魔力が剣先に集約されると、ライトニングが口を開いた。


「破滅と再生は絶望と希望。我は絶望と希望をもたらす覇者。貴様らにとって我はどっちだろうな? 『創星爆雷(リバイブ・ザ・ライ)……』」


ライトニングがそこまで言うと、突如としてラスファート上空に強大な魔力が現れ、時が止まったかの様にその場に居た全員が静止した。


「おい貴様ら、魔将軍を巻き込むのは遠慮してもらおうか……」


 強大な魔力の発現元からは、ハキハキと勢いのある自信に満ち溢れた男の声が聞こえてきた。


 ライトニング達が声のした方に視線を向けると、赤く輝く夕空に、紫色の短髪に青い瞳をした筋肉が異常に大きい男が浮かんでいた。

 その体からは、オレンジ色に波打つ膨大な量の魔力が絶えず漏れ出していた。


「俺様は力の神、フォパース! この国を塵残さず消し飛ばされたくなかったら、今すぐ戦いを辞めろ!」


 力神、フォパースは腕を大きく振り払い、ライトニング達に強風を浴びせた。


 その直後、一瞬にして王城の二階から上全ての階は殆ど瓦礫と化し、瓦礫となった王城の壁や柱達はラスファート中に隕石のようにして散らばっていっていた。


「は? なんでここが吹き抜けになってんだ?」


 二階の放送室に居たゼーレとレイラは、いきなりの出来事に空を見上げながら口を開けて呆気に取られている。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ライトニング達が熾烈な戦いを繰り広げるラスファート王城応接室に突如として現れた、力の神フォパース。


 その強大な力で吹き飛ばされた王城の瓦礫は、ラスファート全土で猛威を振るっていた。


 王城の瓦礫などが降りかかっている市街地は、まるで流星群が直撃するかの様な地獄絵図と化し、市街地には国民達の断末魔や悲鳴が響いている。


「た、助けてっ!」


「まだ瓦礫が降ってくるぞ!」


 市街地は、瓦礫に潰されて助けを求める者や、国民を守るべく大きな声を張る騎士達で混乱状態になっている。


 そんな中、スラム街のある北東区では、紫ショートヘアの女の子目掛けて、隕石の如く瓦礫が降りかかってきていた。


「キャー!」


 女の子は目を瞑り、恐怖に耐えようとする。


「身体強化、打撃強化。イーサン今よ!」


「おら!」


 岩が砕け落ちる音が聞こえ、女の子が目を開けると、目の前には手を差し伸べるエイダンとその後ろにはサキとイーサン、そしてオスカーが居た。


「ジャスティスクローとおじさん?」


「おっ! 俺様達の事を知ってるんだな。なら話が早い。今から君を俺達の家に案内するから着いてきてね」


 エイダンはそう言いながら、女の子の手を取って歩き出した。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 場所はラスファート王城2階の放送室。


 そこには、大きな玉状の水で身を守っているゼーレとレイラが居た。


「いや、まじで王城の殆どが一瞬にして吹き飛ぶなんて、どうなってんだよ。何か上の方にヤバい魔力を放ってる奴も居るし」


 ゼーレは少し苛つきながら、水の膜の中から放送室を見渡していた。


「そうね。突然のこと過ぎて、放送室全部を守ることもできなかったし。でも、マイクが無事そうで良かった」


 レイラはそう言いながら、水の膜を作っていた水を廊下に放った。


「まぁ、ラスファート中に瓦礫が飛んで行ってたから、いくつかの屋外スピーカーは壊れてるだろうな……」


 ゼーレ達は、放送室のマイクに近づいた。


「あの……」


 レイラは下を俯き、顔を赤らめて恥ずかしそうにモジモジしていた。


「何だ?」


「そろそろ手を離してくれない? 痛いんだけど……」


 ゼーレが自身の右手に視線を向けると、そこにはレイラの手を強く握りしめて離さない自分の手があった。


「あっ! ごめん、レイラ。べ、別にこれはビックリしたり、怖いからじゃないからな!」


 ゼーレは慌てて手を離して早口で喋っていた。


「分かってる。私を守ろうとしてくれたんでしょ?」


 レイラがそう言った後、二人は暫く見つめ合っていた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 舞台は戻り、ラスファート王城応接室。


「力の神? 神を自称するなんて大層な自信だな」


 目を覚ましたフィオナは、フォパースの圧に臆すること無く、鋭い眼差しでフォパースを見上げている。


「あ? お前等ラストナイトは、そこの魔将軍から聞いてないのか?」


 フォパースは、フィオナ達を見下ろしながら、ガルノとエスメを指差した。


「あぁ、そう言えば俺様達は嫌われてるんだったか」


 フォパースは頭を掻きながら苦笑を浮かべた。


「フィオナ、あの人は本物です。私の“眼“で見てください」


 意識が朦朧としながらもフィオナの側まで辿り着いたエリーは、薄紅色の瞳を見開らいて顔に冷や汗を浮かべていた。


「っ! 確かに、神と認めざるを得ないか……。それより、リサやライトニング達は私とエリーにだけ手加減してくれたのか。ふっ、そんな事する必要無いと言うのに」


 フィオナは、リサとライトニングを見ながら涙を浮かべて微笑していた。


「あいつ、ライトニングさんと同等の圧を感じる。これが本物の神なのか……。久しい圧だな」


 リサはフォパースの持つ力を見て、恐怖に耐えきれずに笑っていた。


 リサ達がフォパースに圧倒されている中、ライトニングだけは闘志に燃えた黒く熱い眼差しでフォパースを睨んでいた。


 ライトニングは漆黒の剣を鞘に収め、目を瞑って深呼吸した。


「せっかく力の神と手合わせできるんだ。神との純粋な殴り合いを楽しむとするか」


 ライトニングは不敵な笑みを浮かべ、漆黒の剣を影の中に入れた。


「おっ! 確かお前はライトニングか。俺様とやるなら、全力でかかってこいよ!!」


 フォパースは両拳を勢い良くぶつけ合い、更にオレンジ色の魔力を体から放出し、高笑いを浮かべている。


「分かった。だが、ここだとお互いに全力は出せない。別の場所に行くぞ……」


 ライトニングはそう言うと、黒雷を身に纏いながら、完全に吹き抜けとなった応接室から飛び立とうとしていた。


「いや、その必要はない。ここで戦おう」


 フォパースの驚きの発言に、応接室は凍りついた。


「は? フォパース、お前俺たちを助けに来たんだろ? 何で俺たちを巻き込もうとしてんだよ」


 ガルノはフォパースの圧にも負けず、言葉をぶつけた。


「黙ってろ。これもお前らの為になる」


 フォパースの発言に、ガルノとエスメは困惑していた。


 ちっ、こっちは手負いのラストナイト達も守らないといけないし、あっちだって決戦に向けて魔将軍に怪我を負わせたく無い筈なのに。

 何でわざわざここで戦いたいんだ? それに、魔将軍達の為にもなるってどう言う事だ。


 ライトニングは少しの間考え事をしていた。


「ふっ、そういう事か」


 ライトニングはフォパースの意図を理解したのか、不気味な笑みを零していた。


「リサ、お前の魂之力ソウルなら全員を守れるだろ? 放送室は無事だろうし、ゼーレ達と先に合流してくれ。後、フィオナと戦ってた時と同じように我らを空想の次元に隔離してくれ」


「了解しました」


 リサはそう言うと、ラストナイト達とシエル達を一箇所に集め、ドーム状の透明なシールドを展開した。

 その後に、ライトニングとフォパース、そしてガルノ達を空想の次元に閉じ込めた。


「この『空想空間ファンタジー・スペース』は世界と隔離されているから安全です」


 リサ達は手負いのラストナイト達を担ぎながら、放送室を目指して歩いていった。


「さ、これで我も心置きなく戦える」


 ライトニングは見渡す限り真っ白な世界で、己の周りに漆黒の雷を漂わせながら、不敵な笑みをフォパースに向けていた。


「そうだけど、お前細い腕だな。デスラントの攻撃で死ななかったて聞いてたから、もっとゴツい奴かと思ってたぜ。俺様が相手だと折れちまいそうだ」


 フォパースは煽るように、小馬鹿にした感じで笑っていた。


「デスラント? あぁオリードで殺した邪神か。確かにアイツの打撃は痛かったな」


 ライトニングは、デスラントに吹き飛ばされた時の事を思い出して微笑を零していた。


「フォパースよ。一応言っておくが、丈夫で強い奴はゴツいなんて主観的思考だけで相手の実力を語るな。全く、戦いにおいては細マッチョが最適解だと言うのに……」


 ライトニングは拳に漆黒の雷を纏わせて、ファパースを睨んでいる。


「力の神のバカ力見せてやるよ!」


 フォパースは全身にオレンジ色の魔力を纏い、暴風をライトニングに浴びせながら嬉しそうに笑っていた。

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