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129 雷鳴の覇者 ライトニング

 雷霆とシエル達がガルノやスレング達の前に立ちはだかった事により、完全に一騎打ち状態になったリサとフィオナ。


「そうだ、あらゆる生物の空想のエネルギーを具現化出来るなら、空間を断絶する壁も出せる筈だ。今のリサとフィオナが本気で戦うならそれぐらいしないといけんぞ」


 ガルノ達と見合っていた雷霆は、ふとリサに話しかけた。


「確かにそうですね。『空想次元ディメンション・ファンタジー』」


 リサはそう言うと、自分とフィオナを覆うように応接室の中央を黒い壁で四角く囲んだ。


「うん、これでリサ達の戦禍に巻き込まれる心配はないでござる」


 雷霆は壁をコンコンと叩いて確認していた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 『空想次元ファンタジー・ディメンション』で混沌の世界から孤立したリサとフィオナ。

 そんな二人は見渡す限り一面真っ白な世界に居た。


「こんな大がかりな魔法も使えるんだな」


 フィオナは笑いを浮かべながらリサに白い大剣を向けている。


「この空間も誰かが空想した次元に過ぎない。『空想世界神(インターヌ)』の居る世界には知的生命体ではない者達の空想のエネルギーも集約されるからな。もはや何でもありだ」


 リサは紫色の魔力を白い剣に纏わせて楽しそうに笑った。


「そうか。だが、生憎私はこの世界を堪能する気はない。仲間たちが心配なものでな」


 フィオナは白い大剣に黒炎と黒雷を放出させて大気を震わせた。


「これで終わらせる! 『死誘之黒炎雷地獄タナトス・ザ・サンダーインフェルノ!!』」


 フィオナは大気を燃やし尽くさん勢いで燃え上がる黒炎と時空を破壊せんとする黒雷を剣に、リサに斬りかかった。


 一方、リサの白い剣に纏った紫色の魔力は、剣先の一点に集約し、様々なエネルギーが衝突し合っていた。


「受けて立とう。『空想之宇宙創生爆発ファンタジー・ビックバン!!』」


 リサが白い剣を振り払うと、途方も無いエネルギーが一瞬にして爆発し、真っ白な世界は紫色に染まった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 そして舞台は戻り、ラスファート王城応接室。

 そこでは、勝負に勝ったリサがフィオナを見下していた。


「フィオナ・ロワーリ、本当の事を話してほしい。数年前、スラム街で私の友人とその家族を殺したのは、スレングに脅されてたからか、それともあなた自身がそう言う人間なのか。どっちだ?」


 リサは冷たい視線で、座り込んでいるフィオナに剣を向けている。


「あの人達はリサの友人とその家族だったのか……。私は本当に恨まれて当然だな」


 そう呟いたフィオナは口元を固く閉じ、言葉を飲んだ。


 そんなフィオナを見て、リサはゆっくりフィオナの元へと歩み寄った。


「フィオナ、私がお前を直ぐに斬り捨てていないのは、サリファさんがお前の境遇とスレング王の魂之力ソウルについて教えてくれたからだ。このまま答えないのであれば、私は私の解釈のままにお前を斬る」


 リサはフィオナの肩に剣を当てて脅迫した。


奴隷聖女セイントスレイブ……。いや、サリファさんか。あの人には助けられてばかりだな……。分かった、全部話そう」


 フィオナは振っ切れたかの様に爽やかな笑みを浮かべてリサを見た。


「何を考えている、フィオナ。お前はもう許されない立場の人間だ。今更誰かに許されると思うな!」


 スレングの叫びが応接室に響くが、フィオナは止まろうとはしなかった。


「あの時は、本当に殺すつもりは無かった……」


 フィオナの言葉を聞き、リサは剣を鞘に納めた。


「スレングの言う通り、今更私が誰かに許されるなんて思っていない。それでも、リサには本当の私を知ってほしい……」


 フィオナは下を俯いたまま話を進める。


「数年前に私がスラム街に行った時、その時のラストナイトには他の騎士を教育する任務があった。そう、あの時の私の任務は二人の騎士を連れて奴隷を確保する事。でも、その内の一人が抵抗されたからってあの家族を殺したの」


「私があの家族を殺した訳じゃない、これだけは信じて欲しい」


「信じるかどうかは置いといて、あの時貴方は自分の寿命にしたかったって言ってたけど、スレング王に従っているのも魂之力ソウルで脅されてるからじゃ無くて、本当は自分自身の為なんじゃないの?」


「それは違う! 私自身、本当に人並みの寿命で良いの。エリーや他の皆んなと幸せに暮らせればそれで良いの……」


 何か、さっきからフィオナが幼く感じるな。これが本来の彼女の姿なのか。


「でも、人並みの幸せを手に入れる為には堕ちるしか無かった。スラム街出身の貴方なら分かるでしょ」


「おい、ベラベラと喋りすぎだ、フィオナ」


「ハァー、お前等にはこれからも我の操り人形で居て欲しかったが、どうやらここまでのようだな」


「『王之呪(支配の呪い)』よ、反逆者を呪い殺せ。『王呪之懲罰(解放の音)……』」


「フィオナ! 破滅帝を雷霆さんへ!」


  リサがフィオナに叫んだ。


「ぐっ! 『反転死誘之黒雷炎(タナトス・リバース)』」


 フィオナは黒雷炎を雷霆に纏わせた。


「やっと帰ってきたか……」


 雷霆がそう呟く声色は、悍ましい程に低いライトニングの物だった。


 雷霆がクナイを素早く懐から取り出して地面に突き刺すと、クナイが突き刺さった所から影が飛び出して、雷霆は大きな影に飲み込まれた。


 数秒後。

 雷霆を覆う影に一筋の黒雷が降り落ちた。

 黒雷が落ちて影が散っていくと、その中から漆黒の雷が波打つ様に広がっていく。


 そして、その中心には禍々しい仮面を被り、雷鳴スーツを身に纏いしライトニングが、漆黒の剣を片手に佇んでいる。


 スレングは驚きのあまり魔法を途中で止めてしまっていた。


「お前は雷鳴の猫王、ライトニング! まさかここで会えるとは!!」


 スレングは恐怖に満ちた笑いを応接室に響かせている。


魂之力ソウル等、肉体以外の力に直接攻撃するのは、フィオナとの戦いで有効な手段なのが分かった。我の究極之魂アルティメットソウルは解釈を広げる程に強くなる……。同じく魂に干渉できる『魂神(アニマ)』とは訳が違う」


「もう我に破滅させれぬ物など無い……」


 ライトニングの周りには漆黒の雷が漂い始めた。


「よって、その名はこの瞬間を持って捨てる。これからの我は、森羅万象を破滅へと導く『雷鳴の覇者ライトニング』……」


 体に芯が入っているかのように真っ直ぐと立っている黒き猫獣人と漆黒の雷は、夕焼けに照らされておぼろげに赤く光っていた。


「雷鳴の猫王は、そうだな……。勇者パーティーのライムにでも譲るとしよう。リサよ、国王が死んだ後の事は全て任せるぞ」


「はい」


 リサの返事を聞いたライトニングは、フィオナの後ろに座り込んでいるスレングにゆっくりと歩みを進めた。


「やはり雷霆とライトニング、そしてライムは、全て同一人物だったのか」


 フィオナは自身を横切るライトニングを見ながらそう呟いた。


「お、おいフィオナ。我を守れ!」


 スレングは叫ぶが、フィオナは振り返る素振りを見せなかった。


「ちっ、フィオナ! せめて貴様だけでも道連れにしてやる」


 スレングはフィオナに右手をかざし、魔力を高めた。


「うっ!」


 スレングが魔力を高めてから時間が立つに連れ、フィオナは苦しみ始めていた。


 だが、それでもライトニングの歩く速さは変わらない。

 ゆっくり一歩ずつ、空気の重くなる足音を鳴らしていく。


「ハハッ、まだ余裕があると思っているのか? ライトニング。残念だが、これは今すぐにでも爆発できんだよ! 王呪之懲(解放のお)……」


 スレングがそこまで言うと、ライトニングはスレングの視界から音も無く一瞬で消え去った。


 次にスレングが意識をフィオナに戻した時には遅すぎた。


 激しい雷鳴が鳴り響き、スレングの後ろからは悍ましい殺気が放たれていた。


 スレングは自身の背面から放たれている凄まじい殺気に気づいて振り返ろうとしたが、その瞬間に意識を失った。


 そう、スレングは既にライトニングによって首を切断されていたのだ。


「肉体、精神、魔力や魔素、そして魂とそれに眠る力。その全てを破滅させ、永遠(とわ)の終焉を告げる究極覇技、『黒雷魂覇道斬スプレマシー・ライトニング』」


 スレングの頭が床に転がり、体は雪崩のように倒れた。


「お前が起爆タイミングを自由に操作できるのは知っていた。ま、そもそも魔力の上がり方でバレるがな」


 ライトニングはそう言い終わると、ライトニングが立っている場所からは逆方面の隅に居るガルノ達を睨みつけた。


 フィオナはリサとの戦闘の後に追い討ちをかけるように負荷が掛かったせいか、部屋の壁にもたれて気絶している。


「ちっ、誰か一人ぐらいは死ぬと思ってたのに」


「まさか、私達の敵全員生き残るなんて……」


 ガルノとエスメは殺気を放ちながらライトニング達の前に出た。


「しゃねぇな。めんどくさいけど、魔族の本気を見せてやるか、エスメ」


「そうね」


 ガルノ達が隠していた魔力を一気に上げると、応接室の空気は一変した。


 そして、ガルノは赤い風を己の両拳と額に生えている一本の角に、エスメは九尾の尻尾のように血の棘を出現させた。


「こっからは、もう大人しくなんてしねぇ。人数不利だろうが全力で相手してやるよ」


「ナハト様の為にも、ここで死ぬ訳にはいかない!」


 そう言うガルノとエスメの瞳は、闘気に満ちていた。

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