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128 黒を支える者達

「おい、フィオナ! 最上階にある玉座の間まで壊すんじゃないぞ!!」


 凄まじい爆風が引いた後、マテオを盾にしていたスレングはフィオナに罵声を浴びせる。


「大丈夫です。少なくとも、私は仲間を巻き込みたくはないので」


 フィオナは目の前のリサを眼に捉えながら、スレングに返事をした。


 そして、ラストナイト達の更に後ろにいるガルノとエスメはと言うと。


「ふぅ~。危なかったわね」


「エスメお前、マジで俺相手だったら何をしてもいいと思ってるだろ」


 ガルノの後ろで小さくなって隠れていたエスメに対して、ガルノが嫌そうな顔で怒っていた。


 爆風が完全に落ち着き、静かな時間が訪れると、雷霆とシエル達はラストナイト達に牙を向けていた。


「今の拙者には『破滅帝』が無いから、拙者がお主達に合わせる」


「了解しました……。魂之力ソウルを手に入れてからは、わたくし達も虹雷剣の皆様に遅れは取らない程に強くなりました。アイ、カルラ、全力で行くわよ」


「「はいっ!」」


 二人は真剣な表情でそう言い放ち、魔力を高めた。


「この世界はアイ達の世界。今日も絶好調で敵を倒す! 『独走精神(マイワールド)!!』」


 アイがそう叫ぶと、アイ、シエル、カルラ、そして雷霆は、白いオーラの様な物に身を包まれ、纏う雰囲気が張り詰める空気へと一変した。


「雷霆とサンダーパラダイス! この戦いはお前等に関係ねぇだろうが! 邪魔すんじゃねぇ!!」


 ライアンは剣を振り回しながら、シエル達に怒号を放った。


「皆さん、静かになってください! 『無音之影世界(静かなる夜)』」


 カルラがそう言うと、ライアン達と雷霆が戦っている足場全体に影が広がり、ライアン達とシエル達を呑み込みながら筒状に天まで影が伸び続けた。


 影が天まで伸びてライアン達と雷霆達が外から隔離されると、影の中に閉じ込められたライアン達は慌てていた。


 真っ暗で何も見えない!


 ライアンは口を動かして声を出したが、妙な感覚になった。


 声が出せていない? ここでは音が消えるのか。くそっ、結構な範囲で影を展開されたからな、そうそうここから抜け出せそうにない。


 ライアンと同様、他のラストナイトも焦っていたが、ただ一人エリーだけは冷静だった。


 ふふっ、エルフさん。相手が私で悪かったわね。


 エリーは自信満々に微笑むと、自身の右耳に手を当てた。


「皆んな、大丈夫。私の『見透眼《暴く瞳》』を使えば、どんな暗闇でもハッキリと敵が見える」


「そうか、その手があったな」


 ファティーは高らかに言い放った。


「でも、敵が見えるのは恐らくあちらも同じ。それに、こちらは暗闇での戦闘に慣れていない。こちらが不利なのは、以前変わりないですよ」


 マテオは諭すように冷静に話した。


 やっぱラストナイト達はエリーの魂之力(ソウル)を使うか。

 ま、そもそも魂之力(ソウル)を持ってたら相手の魔素を感じられるし、手練なら魔力で相手が誰かすら特定できるんだけど。

 焦ってたらそこにすら気付けないか。


 雷霆は、懐からそっと漆黒の手裏剣を取り出した。


 先の戦いでお前達の魂之力ソウルは割れている。

 お前達の中で真っ先にやるべきなのは、お前とライアンだ。


 雷霆は姿勢を低くして、黄色い雷を全身から放った。


 すると、雷霆を中心にして黄色い雷で作られた獅子の雷獣が出現した。


「っ! あれは!」


 マテオは、緑色の風を剣に纏わせて獅子の雷獣に構えたが、ほんの一瞬雷霆より行動が遅れていた。


 音が出ないから派手さは半減するが、暗闇を照らす一閃で眠れ……。 『獅雷(しらい)手裏剣!』


 雷霆が瞬きも許さぬ速さで手裏剣を投げると、雷獣もそれに追尾し、マテオ目掛けて走り出した。


 何も見えない暗闇の中を黄色く光る獅子の雷獣が突き進む。


「グハッ!」


 雷霆の投げた手裏剣がマテオを直撃した瞬間、ライアン達の耳にマテオの苦しむ声が流れていた。


「マテオ、無事か!」


 ライアンは、急いでマテオの方向へと足を進めた。


「ライアン! 後ろ!!」


 ファティーが叫んだ時には既に遅く、ライアンの後ろには、雷鳴スーツに入っている稲妻の黄色い光と白い魔力によるシルエットがモデルの様に長身のお姉さんエルフを影の世界に映し出していた。


 私達はあの方の為に存在する。故に失敗は許されない、一発で仕留める! 


 シエルの右腕は真っ赤な雷を纏い始めた。


 赤き閃光、全てを貫け! 『不揺之赤雷砲ペネトレイト・サンダーキャノン!』


 シエルが赤雷纏いし右腕を突き出すと、掌からは細い赤雷の光線が轟音と共に放たれた。


「クソが! 『灰壊之水波ウォーターウェーブ・ザ・コラプス!!』」


 ライアンは大声を上げながら、シエルの方向に剣を振り払った。


 すると、振り払った空間から灰色の水が出現し、波となってシエルに襲いかかった。


 私の雷は、何物も阻むことは出来ない!


 シエルの赤雷光線は灰色の波と衝突したが、赤雷は崩壊すること無く、波の中を進み続けてライアンの心臓部分に直撃した。


「うっ!」


 赤い雷が胸に直撃したライアンは、左手で胸を押さえながら白目を剥いて床に倒れ込んで気絶した。


「私の魂之特性ユニークソウル信念之赤(曲げない心)』は、どんな障壁をも突破することの出来る魂之力ソウルです」


 シエルは音の聞こえない空間にも関わらず、倒れ込んでいるライアンに向かって言い放った。


「くそっ! ライアンもやられたか!」


 ファティーは雷霆目掛けて、黄色い炎を纏った鞭を素早く振るった。


 この魔力はファティーか。面白い、受けてやるか。


 雷霆は鞭が来ている事を分かっているにも関わらず、微動だにしなかった。


 そして、ファティーの鞭は確実に雷霆の背中を捉えた。


「よし! 雷霆を屈服させた。エリーはそのまま動かずに居てくれ、ここからは雷霆を使って勝ちに行く」


「はい。私はやられないようにだけ立ち回ります」


 エリーとファティーは、念話で話していた。


 やれやれ、拙者は魂之力ソウルの効果で誰かに屈服する程、ヤワじゃないと言うのに……。


 雷霆は暗闇の中に白い魔力を帯びた獅子の雷獣を走らせながら、一瞬でファティーの目の前に現れた。


「っ! 何でだよ! イーサンでも屈服したのに……」


 ファティーは怪物を目の前にしたかの様に恐怖していた。


 それもその筈、真っ暗闇の中で殆ど真っ黒な忍者装束を着た猫獣人が、獅子の雷獣を纏いながら、殺意を剥き出しにして睨んできているのだから。


 ファティーが恐怖で後ろを向こうとした時、雷霆の手裏剣が既にファティーのお腹に接近していた。


 安心しろ……。お前ら程であればあまり重症にはならない。ま、音が消えてるから聞こえないがな。


 それではもう一発……、『獅雷手裏剣』。


「ガハッ!」


 ファティーのお腹に雷霆の手裏剣が刺さった瞬間、ファティーは獅子の雷獣にお腹を噛みつかれて感電しながら意識を失った。


「ファティーさん。大丈夫ですか!?」


 エリーの呼びかけに、ファティーが応える事は無かった。


「アイ自身だって戦えるんだって所、見せてあげる!」


 焦っているエリーの懐に一瞬で近づいたアイは、拳を構えていた。


「たぁーーっ!」


 アイは大きな声と共に、エリーのみぞおちに拳を喰らわせた。


「またお腹に……」


 エリーはそう言い残しながら、地面に倒れた。


 アイがエリーを倒して、フィオナ以外のラストナイトが全員倒れた後、カルラは『無音之影世界(静かなる夜)』を解除し、雷霆達は再び夕暮れの空に戻った。


 雷霆達が戦いを終えると、応接室ではリサがフィオナに加えて、ガルノやエスメと戦っていた。


「やっと終わったんですね。他の者は相手にするって言ってたのに、魔将軍もさっきの影に入れて下さいよ」


 リサは、エスメが操っている赤い血の棘を受け止めながらそう言った。


「す、すみません。私の魔力量ではあの範囲が限界で……」


 カルラは地面に座り込み、小さな声で喋りながらペコペコとリサに頭を下げた。


「あっいや、そこまで責めてないですから」


 リサはエスメの血の棘を弾き飛ばして申し訳なさそうな顔をしていた。


「おい! フィオナに魔将軍共。絶対に勝てよ!!」


「人間のクセに何処までも傲慢で生意気な奴だな。いや、人間だからか……」


 ガルノは、スレングの言動に思わず失笑していた。


「ホント、取引相手だとしても流石にムカついてきたわ」


 エスメは溜息を吐きながら、無数の血の棘でリサを攻撃し続けていた。


「私は負ける訳にはいかない……」


 フィオナはそう呟き、リサを睨んでいた。


 雷霆は、音も出せずに一瞬でリサの元に移動した。


「リサ、今度こそ魔将軍は拙者達に任せてくれ」


 そう呟いた雷霆は、再び一瞬で移動し、ガルノとエスメの前に現れた。


「有難うございます。雷霆さん」


 リサはそう呟き、再びフィオナに剣を向けた。

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