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雷鳴の猫王と勇者達の旅路〜猫の獣人に転生した中二病、勇者達を魔王の元まで導かん〜  作者: 一筋の雷光
片時雨編

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116 裏の顔

「風祭雷霆……。それに、雷鳴の猫王?」


 リサは不思議そうに呟いた。


「ふっ、残念だったな。その異名は既に使われてるぞ」


 フィオナは、雷霆の腕を切り落とさんとする勢いで大剣に魔力を込めて笑った。


「拙者に何の関係がある?」


 雷霆はフィオナを見下し、冷たい視線を送った。


「ちっ」


 フィオナは雷霆に見下された屈辱で更に大剣に魔力を込めた。


「この感覚……、そうか。フィオナだったか? お主の魂之力ソウルは拙者に効かぬぞ」


「あ?」


 フィオナが呆気にとられてるのも他所に、雷霆はリサとフィオナの二人を腕の力で吹き飛ばした。


「双方、ここで争い続ける事は本意ではない筈……」


 雷霆は自身の影に緋色の刀を収め、服の中に両手を入れた。


「それとも、拙者が二人を相手にしようか?」


 雷霆は両指に持ちきれる限りの漆黒に染まる手裏剣をチラつかせながら、二人に威圧向けた。


「流石に、破滅帝の威圧では倒れぬか……」


 リサとフィオナは、頭を抱えながら雷霆を睨んでいた。


「分かった、私達は下がろう……。ラストナイト、撤退せよ」


 フィオナは右耳を押さえてそう話した。


 すると、フィオナの脳内に言葉が流れてきた。


「は? 何でだよフィオナ様」


 ライアンは不満そうに言った。


「そうだぜ、フィオナ様。まだアタシはコイツと戦い足りねぇぞ」


 ファティーは狂気的な笑い声を出しながら叫んでいる。


「二人共落ち着きなさい」


 マテオは二人をなだめるように、優しい声色で囁いた。


「わ、私はフィオナ様の指示に従います」


 エリーは、か細い声で元気よく言い放った。


「ご苦労だった。ラストナイト」


 フィオナは凛々しい声でそう伝え、右耳から手を離した。


「私も今日の所は引こう。黒髪猫獣人の方達は宿に戻ってる事でしょうしね」


 リサは、雷霆にニコッと微笑みかけて剣を鞘に納めた。


 げっ、リサには僕だってバレてるっぽいな。


「それでは、拙者は一足先に去る……」


 雷霆は工場の入口へとゆっくり歩き出した。


 月光に照らされる雷霆の後ろ姿にゼーレ達が気を取られていると、突如として雷霆に稲妻が落ちた。


『虚構の黒雷』


 雷霆は小さく呟き、自身は一瞬で姿をくらまし、黒き稲妻が落ちた場所に黒雷で作ったライトニングの分身を残した。


「え!?」


 リサは刹那に見た分身に驚いた。


「今の姿は……。ふっ、面白い」


 フィオナも大剣を鞘に納め、顔に陰を作って笑みを零していた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 数時間後。

 ラスファートも静かな眠りについた頃、ライトニングがルミナス商会本社にある社長室の窓に降り立った。


「アンナやシエル達も集まっていたのか。丁度良い、皆んなの力を貸してくれ」


 月光に照らされているライトニングの前には、完全に固まったアンナ、ノア、そしてラビッシュとユキネがソファーで座っていた。


 その直ぐ側には、シエル、アイ、カルラの三人が直立不動で立っている。


「ライトニング! 久しぶり〜」


 アンナはソファーから立ち上がり、涙を浮かべながら、ライトニングの胸に駆け寄った。


「ボス〜! ホノカが居なければボクが先に会ってたのに〜」


 ラビッシュは足に風魔法を纏わせ、床を蹴り飛ばしてライトニングに飛びついて甘えるように頰をスリスリしている。


「ハハッ。二人共、今会えてるんだから落ち着いてくれ」


 二人に抱きつかれているライトニングを見て、ノアは呆れた表情で話しかけた。


「力を貸してくれって、ラストナイトの件か?」


「話が早くて助かる。もしかして、薄明同盟やラストナイトについて話し合ってたのか?」


「えぇそうですよ」


 ユキネはソファーに座りながら、お茶を啜った。


「じゃあ本当に丁度良かった。お前達虹雷剣の四人には、三日後の深夜に実行する薄明同盟の作戦を陰から手伝ってほしい」


 ライトニングがそう言うと、その場の全員が黙り込んだ。


「申し訳ございません、ライトニング様。私はその作戦に参加できません」


「どうしてだ? だって、ラストナイトと薄明同盟について話し合ってたんだろ? ルミナス商会の助けも必要になるかも知れないのに……」


「それは把握しております。ですが、実はルミナス商会はある問題に直面しておりまして」


「何かのトラブル?」


「はい。ですので、私は今回ルミナス商会の問題の方に注力させて頂きます」


「う〜ん。まぁ商会が問題に直面しているのにリーダー不在は不味いか。分かった、もし解決出来なさそうな時は頼ってくれ」


 ま、商売絡みの問題とかなら、素人の僕に解決出来る訳無いんだけど。


「お気遣い有難うございます」


「そして、シエル達ナイトサンダーズにはその戦闘で起こる被害を最小限に抑えてほしい」


「承知いたしました」


 シエルは引き締まった面持ちで返事をした。


「アイ、頑張る〜!」


 アイは両手を挙げて、天真爛漫な笑顔を浮かべていた。


「が、頑張ります!」


 カルラは慣れない空気に緊張してか、硬い表情になっていた。


「ん、じゃあまた明日」


 ライトニングはそう言って、窓から白く光る月光の元へと飛び立った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 ラスファート中央区にあるラストナイト本部。


 そこには、リサ達との戦いで負った傷を癒す為、ラストナイト達が一部屋に集まって楽しく過ごしていた。


「もう、外では凛々しいお姉さんで居ろって、私のキャラじゃないし疲れちゃうよ〜」


 フィオナはソファーに座っているエリーの膝下に寝転がって、先程までの凛々しい声から一変、柔らかい声色になっていた。


 その姿にお姉さんな面影は無く、お母さんに甘えまくる赤ちゃんへと成り下がっていた。


「フィオナ様、今日もお疲れ様です。良く頑張りました」


 フィオナはエリーに頭を撫でられて、表情がユルユルにほぐれていた。


「フィオナ様は本当に甘えたがりですね。私達以外にもその姿を見せてみては?」


 マテオは本を読みながら、溜息を吐いた。


「うるしゃいぞ、マテオきゅん。わらしは表では大人なお姉さんで通ってるんだから、こんな姿見せれる訳にゃいでしょ〜」


 フィオナは、エリーに頭を撫でられながら、頰を膨らませて怒っていた。


「ア、アハハ。酒なんて飲んで無い筈なのに、完全に酔っ払いじゃないですか。シラフで素を完全に出せるのある意味才能でしょ」


 ファティーは若干引いた様子で苦笑いを浮かべていた。


「そうだ。帰ってくる時に皆んなも疲れてるだろうからって高級ドーナッツ買ってきたんだよね」


 フィオナはソファーから立ち上がり、部屋を出ていった。


「はい、どうぞ」


 部屋に戻ってきたフィオナは、ドーナッツの箱を机に置いて、ドーナッツ片手にエリーの膝枕へと帰宅した。


「うん。ここが私の実家だ〜」


 フィオナはそう言いながら、頰をエリーの太ももへとこすりつけた。


「ていうかさ、リサ達の狙いって絶対に『奴隷聖女(セイントスレイブ)』だよね。私達を恨む気持ちも分かるけど、あの娘が奪われたら私達の楽園が壊れちゃうよ〜」


 フィオナは、エリーに膝枕されながら足をジタバタとして暴れていた。


「よしよし、フィオナ様の邪魔をする者は私達が片付けますからね〜」


 エリーはフィオナの頭を優しく撫でながら、包み込むような母性溢れる声色でなだめた。


「ん〜、エリーママ〜!」


 そんなエリーに対して、フィオナは甘える子供のように抱きついて顔を押し付けた。


「ドーナッツか。最近は訓練続きで甘いものは禁止してたからな」


 ライアンは、涎を口の横から垂らしながら箱に手を伸ばした。


「ちょっと、何取ろうとしてるの? 駄犬君にはあ〜げない」


 フィオナはふにゃふにゃで幼い声色のまま、ライアンから箱を取り上げて笑っていた。


「何で俺にだけ厳しいんですか!?」


 ライアンは大きい声を上げてツッコんだ。


「それで、エリー。リサ達はいつ作戦を実行するんだ?」


 ファティーはグラスでワインを楽しみながら話した。


「ん〜。ちょっと待ってね」


 エリーは目を閉じ、精神を集中させた。


 少しして、エリーはゆっくりと目を開けて呟く。


「2日後の夜ですね」


「やっぱり日を置くんだな。リサ達の活動をラスファート中で噂させるために」


 ライアンは少し苛立った様子でドーナッツを頬張った。


「良いじゃないですか。これでリサを倒せても倒せなくても、どちらでも我々は受け入れる準備は充分にできている筈でしょ?」


「そうだな。ラストナイトよ、我々は我々の楽園の為に戦おう。私はお前達を愛してる、これからもずっと一緒だ」


 フィオナは優しい口調でそう言いながら、ゆっくりと目を閉じて寝息を立てた。


「はい、フィオナ様」


 エリーはフィオナの頭を撫でながら、天使の様な笑顔で寝顔を眺めていた。


 そんなフィオナとエリーを見て、思わず笑みがこぼれるラストナイトの三人だった。

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