表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

115/179

113 奴隷達の微かな希望、薄明同盟

 ライム達が床に倒れてから数分後。

 ライムとリサは、別々のソファーに寝かされていた。


「「はっ!」」


 二人は同タイミングでソファーから飛び起き、お互いの顔を見合っていた。


「あっ! 二人共起きたみたい」


 二人の飛び起きる音を聞いて、サキが部屋の扉を開けて入ってきた。

 その後に続いて、ゼーレ達やイーサン達も部屋に入った。


「ま〜た、人と手を繋いで気絶したんだね。一体どういう体質なの?」


 レイラは、ライムの頰を人差し指でむにむにとつつきながらそう言った。


「さ、僕にもわかんない」


 いや、本当に急展開すぎて訳わかんなくなりそうだ。

 ま、神話の時代の記憶はテンヤ達と見たのとあまり変わらなかったけど。

 でも、まさかリサさんがディアブロ時代の配下の一人、レオンの転生先だとは。


 もしかしたらレオンとノラはこの世界にまだ来てないのかと心配してたから良かった。

 この調子だと、ノラと会うのもそう遠い話しじゃないかもな。


 てか、レオンは男だったから、リサさんは擬似TSみたいなもんじゃないのか?

 って、昔の配下相手に何考えてるんだよ。


 ライムはソファーから立ち上がり、体を伸ばした。


「リサさん、もう起きて大丈夫なんですか?」


 イーサンは中腰で屈みながら、心配そうに話しかけた。


「あぁ心配してくれてありがとう。私はもう大丈夫だ」


 リサは力強い声と共にソファーから起き上がった。

 その顔は、ライムを見て微笑んでいた。


「私、お茶を淹れてきますね」


 そう言いながら、サキは部屋から出ていった。


「ありがとう、サキ。って、もう行っちゃいましたか……。あ、皆さんも座って下さい」


 リサの言葉で、ゼーレとレイラ、イーサンとエイダンが各々ソファーに座った。


「それで、ゼーレ君。我々はもう、協力関係になっていると思って大丈夫なのか?」


「はい。リサ様やジャスティスクローの皆さんと協力出来るのは、僕たちにとっても利があるので」


 ゼーレは、いつにも増して真剣な表情で答えた。


「では、早速作戦を共有させて頂きます。ジャスティスクローとは既に共有してるので、サキの心配は要りません」


 そう言って、リサは話しを続けた。


「先ず、我々の成すべき目的は大きく分けて三つ。ラストナイトを崩壊させ、団長フィオナ・ロワーリを殺す事とこの国の地下に居る『奴隷聖女セイントスレイブ』の救出。そして、現国王スレング・ケリーの王位を剥奪する事だ」


「これら全てをほぼ同時に完遂しなければ、この国の闇を祓うことは出来ないでしょう」


「本当に革命って感じね」


 レイラは杖を強く握りしめ、不安そうな表情を浮かべていた。


「そうなりますね」


「あの、リサさん。さらっと言いましたけど、『奴隷聖女セイントスレイブ』って誰なんですか?」


 ライムは少し気まずそうにしながら質問をした。


「あぁそうか、君達は知らなくて当然だな。『奴隷聖女セイントスレイブ』は簡単に言えば、この国に居る奴隷達の心臓だ。彼女が居るから、奴隷達の多くが死なずに済んでいる」


「じゃあ、別に救出する必要無くないですか?」


 リサの話しを遮り、ライムがそう話した。


「ライム、そういう問題じゃないだろ」


 ゼーレは怒った顔でライムを見た。


「いや、ライムさんの言い分は的確だ。だが、救出する。彼女の持つ能力スキルは強力だ。敵に悪用される前にこちら側に引き抜きたい」


「そうなんですね」


 リサとライムの話しでゼーレは落ち着き、部屋は静かになった。


「では、最後に同盟組織の名前を決めて今日の所は終わりにしよう。一気に情報を伝えても、あまり頭に入らないだろうしな」


 リサの言葉で、部屋の空気は真剣で重たい空気から、一気に穏やかな空気に変化した。


 う〜ん、組織名か。


 ライム達は、暫くの間沈黙して組織名を考えていた。


 あっ! いいの思いついた。


 沈黙の中、ライムが最初に口を開いた。


「あの、奴隷達やこの国の微かな希望の光として、『薄明同盟』ってのはどうですか?」


 ライムの提案を受けて、ゼーレやリサ、イーサン達までもが体の動きを静止させていた。


「あれ? やっぱ安直すぎましたかね?」


「いえ、ライムさん。素晴らしい提案ですよ」


 イーサンは、ライムに優しく言葉をかけた。


「ライムってこういうのが得意だったんだな」


 ゼーレは、ライムの肩を軽く叩いてそう言った。


「皆さん同意のようなので、私達の同盟組織の名は、『薄明同盟』に決まりです。これにて、今日の話し合いは終わりにしたいと思います。今日は頭が疲れたと思うので、しっかりと休んで下さい」


 リサは、ライム達に優しく微笑みかけた。


「そうですね。まあ、ゼーレは別の理由で疲れてそうですけど……」


 レイラは、からかう様な表情でゼーレを見ていた。


「憧れの人と会ったんだから、そりゃあ興奮もするだろ。取り敢えず、僕達は早めに宿を探しに行くぞ」


 ゼーレは顔を赤くして、足早に部屋を出ていった。


「ちょっとぉ〜、そんなに恥ずかしかったの〜」


 レイラは、楽しそうにゼーレの後を追って部屋から出た。


「では、失礼します」


 ライムは、リュックを背負ってソファーから立ってお辞儀をした。


「私達も玄関までお見送りしましょう」


 リサは、楽しそうに微笑みながら、ライムに近づいていった。


「そうですね」


 その間、イーサン達も見送りの用意をしてソファーから立ち上がっていた。


 そして、リサはライムのもふもふした猫耳へと自然に近づき囁く。


「ディアブロ様、お久しぶりです。今の私はリサですが、何かあればご命令下さい」


「わっ!」


 囁かれた瞬間、ライムの黒い猫耳がぴくっと跳ねた。


 ライムの耳元に囁かれたリサの声は、囁きボイスによって普段の倍以上のイケボとなり、男も堕ちてしまうような甘いイケボに進化していた。


 う、不覚にもゾクゾクしてしまった。

 リサってほんとイケボだな。

 ま、それはレオンの時と変わってない所の一つだな。


「助かる。その時はまた、俺の右腕として戦ってくれよな。レオン」


 ライムは、ディアブロ時の声のトーンで返事をした。


「はい」


 そうして、ライム達は部屋から退出した。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 時は進み、空が黒に染まりきった21時頃。


 場所は、商業が盛んなラスファートの中でも特に一等地が多いと言われる東南区に位置するルミナスデパート兼ルミナス商会本社。


 そこの最上階に位置する社長室に、漆黒の生地に黄色い雷のデザインを散りばめたコートを纏い、禍々しい仮面を被ったライトニングが窓から夜風と共に降り立った。


「ユキネ、久しぶり」


 ライトニングは、椅子に座っているユキネに一歩ずつゆっくりと近づいた。

 ユキネは白と黒基調の着物を着ており、白髪ポニーテールとキリッとした深海色の瞳も相まって威厳のあるお姉さんの雰囲気を出していた。


「お久しぶりです、ライトニング様」


 ユキネは椅子から立ち上がり、ライトニングに頭を下げた。


「それがルミナスの姿なんだな」


 ライトニングはユキネに近づきながらそう言った。


「そうでした、この姿でお会いするのは初めてでしたね。本拠地での会議の際はユキネとして参加していますからね」


 そう言いながら、ユキネは椅子から立ち上がる。


「ルミナス商会本社には初めてのご訪問ですよね。私がご案内いたしましょうか?」


 ユキネは妖艶なオーラを出しながら、微かに微笑んだ。

 その白い肌と、窓から入る夜風に揺られている白髪ポニーテールは月明かりを反射し、いつも以上に白い輝きを放っている。


「いや、そこまで手間を掛けさせるつもりはない。それに、この時間はまだ営業してるんだろ? ユキネと歩いて、変に目立ちたくない。僕はただ、一つお願いを聞いて欲しいんだ」


「ライトニング様のご命令とあれば、ルミナス商会の財力を惜しみなく使い、望みを叶えさせて頂きます」


 ユキネはそう言いながら、冷たく怪しげな微笑みを浮かべた。


「あの、別にそこまでの大金を使うつもりも無いから……。取り敢えず、ここに書いてあるデザインの服とか武器とか作っといて。出来たらディストラに取りに来させるから、その時はよろしく」


 ライトニングは社長机の上に紙を置いて、窓から飛び降りた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 翌朝9時頃。


 宿を後にしたライム達は、昨日リサ達と作戦会議をした一軒家に来ていた。


「待ち合わせとか特にして無かったけど、この時間でよかったよね?」


「私に聞かれても知らない」


「ま、リサさん達優しそうだったし大丈夫だって」


 ライム達が話し合っていると、玄関の扉が勢いよく開かれた。


「勇気ある同志達、待ってたよ。もっと元気だしてこ〜。なんたって、我々は今から歴史に名を残す英雄になるのだから」


 リサは張りのある大きな声で言い放ち、風に揺らめく赤髪ポニーテールは朝日に照らされ、闇を晴らす火の光の様に眩しく煌めいていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ