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112 大陸一の国 ラスファート

 ミラ達と別れてから三日後。


 ライム達は途中でダンジョンに寄り道したりして、ラスファートの南門の近くに着いていた。


「おぉー、でっかい門だな〜」


 ゼーレは、目の前の存在感抜群な30m程の大きな鉄製の門を見上げて驚いていた。


「私は何回か来たことあるけど、何度来てもこの国の大きさには心底驚かされる」


「まぁ凄いのは凄いんだけど、何かやけに検問してる騎士の数が多くないか?」


 ライムは門前の列に並びながら、列の最前列を見て言った。


 そこでは、黒い甲冑を身に付けた騎士達が十数人程集まって、門を通ろうとしている人達の荷物や身体検査などを行っていた。


「確かに、何かあったと疑わざるを得ない程の警戒っぷりだな」


 それから数分後。

 ライム達は列の先頭になった。


「これはこれは、勇者パーティーの皆さんではありませんか。遂にこの国まで来られたのですね」


 ライム達の並んでいた列を担当している緑髪の騎士が笑顔でそう言った。


「はい、ほんとこの国に来るまで色んなことがありましたよ。それより騎士さん、異様な程に検問が厳しいですけど、何かあったんですか?」


「あぁ……」


 緑髪の騎士は、辺りを確認しながら言葉を詰まらせていた。


「ちょっと寄っていただけますか?」


 ライム達は、緑髪の騎士に体を近づけた。


 緑髪の騎士は、もう一度辺りを確認して、小声で話し始めた。


「皆さんも知ってると思うんですけど、この国にはリサって言う最強の魔剣士が居るんです。それで、1週間ほど前にその方がどういう訳かラストナイトと敵対関係になったらしいんですよ」


「リサって、あの人類史上最強の魔剣士リサだよね? 本当に実在してるんだ」


 ゼーレは、声を抑えながら興奮気味に早口で話した。


「つまり、そのリサって娘を捕まえる為に検問をしているって事ね」


 そんなゼーレを横目に、レイラは冷静に会話を続けた。


「はい、その通りです。外からリサさんを助けに来る人もいるかも知れないと、一応外から来る人に対しても検問を厳しくしているんです」


 ライム達は話しを終えて、体の距離を戻した。


「本当はダメなんですけど、勇者様達は知っておいたほうが良いと思ったので……。私がこの話をしたのは、どうか内緒にして下さい」


「分かりました」


「それでは、勇者パーティーの皆さんも一応身体検査させて頂きます。お手数ですが、レイラさんはあちらの女性騎士の所へ移動をお願いします」


「分かった」


 レイラは小声でそう言って、女性が並んでいる列に並び直した。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 身体検査と荷物検査を終えたライム達は、ラスファートの中を散策していた。


「騎士の人に地図を頂けてよかった」


 レイラは、顔の前に大きな地図を広げながら歩いていた。


「あぁそうだな。なんでも、この国は大きく分けて、北東、北西、南西、南東、そして中央と五つの区画に分かれていて、その中にも幾つもの街や村があるって言ってたからな。地図がなかったら絶対迷子になってる」


「それはそうだけどさ。レイラ、あんま地図に気を取られ過ぎたら駄目だぞ」


「分かってるよ」


 レイラがライムの方に顔を向けた瞬間、近くで爆発が起きた。


「すまない、避けてくれないか!」


 レイラの背後からは、女の人が吹き飛んできていた。


「「危ない!」」


 ライムとゼーレは、レイラに手を伸ばしたがギリギリの所で届かなかった。


「大丈夫か? レイラ」


 土煙の中、ライムとゼーレは必死になつてレイラを探していた。


「イテテ……。ライム君の忠告も聞かずにさ。ほんと、私に感謝してよね」


 土煙が消え、レイラは杖を頼りに少しよろけながら立ち上がっていたが、その口から出される声はレイラの声ではなかった。


「この声は……、ユニスさん!」


 ライムとゼーレは、レイラの体に寄り添って支えた。


「支えてくれてありがとう。でも、二人もレイラの事ちゃんと守ってあげてね」


 そう言い残し、ユニスは目を閉じた。


「ふぅ~。見つけるや否や、躊躇無く吹っ飛ばすんだから……。巻き沿いになった人は居ないみたいだからまだ良かったけど」


 レイラに向かって吹っ飛んできた女の人は、ライム達の所に歩を進めていた。


「君達、すまないね。怪我は……、無いよね?」


「り、り、リサさん!」


「ちょっと! 一応私は追われる身だから……、ね?」


「あ、すみません……」


「えっと君は……、勇者ゼーレ君じゃないか。丁度良かった。私と一緒に来てくれ!」


 リサは、ゼーレの腕を掴んで走り出した。


「ちょ、強引なのはレイラだけで十分なんだって!」


 ゼーレは、リサの走る勢いで宙に浮きながら叫んでいた。


「ちょっと、レイラまだ気を失ってるんですけど! 僕、リュック背負ってるんだけど!」


 ライムは、既に背負っている大きなリュックにレイラの杖を突き刺し、レイラをお姫様抱っこで抱えて走った。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 リサを追いかけてきたライムは、ラスファート北東区にあるスラム街のボロい一階建ての一軒家に着いていた。


 一軒家に着いた後、リサは建付けの悪いドアを無理やり開け、日光が横の建物で遮られて薄暗くなっている小さな部屋にライム達を案内した。


「狭くて薄暗い所だが、実家の様にくつろいで欲しい。多少汚れているが、そこのソファーに腰掛けても良い」


 リサはそう言いながら、奥の方のソファーにゆっくり座った。

 

「ハァハァ、流石に疲れるんですけど」


 ライムは、埃の被ったソファーにレイラを優しく寝かせて、リュックを床に置いた。


「うぅ、腕が痛い」


 ゼーレは、リサに掴まれた方の腕を擦りながらソファーに座った。


「順序がぐちゃぐちゃですまないが、私の事は知ってるかい?」


「勿論です! 僕、幼い頃から年があまり変わらないリサ様の活躍を聞くのが鍛錬のモチベーションでした」


 ゼーレはソファーから立ち上がり、目を輝かせていた。


「私の活躍が勇者様のモチベーションに少しでも貢献できていたなんて、少し前の自分に聞かせてあげたいです」


 リサは、照れくさそうに頰を掻きながら少し下を見ていた。


「あ、あの。それで、どうしてここに僕ら以外の人間が居るんですか?」


 ライムは、扉に視線を向けながら話した。


「へぇ〜。君って結構センス系なんだね……。じゃあ紹介しよう、こちらは大陸一の冒険者パーティーと名高いジャスティスクローの皆さんだ」


 リサがそう言うと、扉を開けてジャスティスクローの三人が部屋に入ってきた。


「初めまして勇者様。私はジャスティスクローのリーダーをしているイーサン・ブラウンです」


 イーサンは、ライム達に礼儀正しくお辞儀をした。


「俺様は、オシャレ担当エイダン・ロースさ」


 エイダンは長い金髪を靡かせ、キザっぽく話した。


「はじめまして、私は後方支援担当のサキと申します」


 サキは、後ろに後光が見えてしまう程の柔らかい笑顔をライム達に向けた。


 そんな中、挨拶をしているジャスティスクローを見てライムは内心焦っていた。


 ヤバ! ジャスティスクローは、僕がライトニングの時にアンナ達以外でガッツリ話した唯一の相手だ。


 バレないように……。って、よくよく考えたら、あの時も普通に声作ってたし、数年前の事なんだから忘れてるよな。


「ジャ、ジャスティスクロー!? リサさんとジャスティスクローが一つ屋根の下に居るって、何でこんなに僕得展開なんだよ!」


 ゼーレは目をキラキラと輝かせ、ニヤけながら興奮で身震いをしていた。


「私とジャスティスクローは、互いに大陸最強と謳われ始めた頃から、似た目的を果たす為に協力関係を持っているんだ」


 ジャスティスクローの三人は、リサ側のソファーに腰掛けた。


「そ、その……、目的って聞いても良いですか?」


 ゼーレは、興奮を抑えながら質問をした。


「私達の目的は、奴隷になっている人達を解放する事。そして、私はラストナイトを崩壊させ、ラストナイト団長フィオナ・ロワーリを殺したい……。不純な動機が混ざっているのも理解しています。ですが、是非勇者様達の力を貸していただけないでしょうか?」


 リサの言葉を受け、ゼーレは暫くの間下を俯いて沈黙していた。


「僕達も最近ラストナイトの悪評を聞いたばかりですし、リサさんとジャスティスクローの皆さんが嘘をついているとは思えません」


 ゼーレは顔を上げ、真剣な眼差しでリサを見つめた。


「何より、憧れの人達を信じたいという私情があるので、僕はリサ様達に力を貸したいです!」


 ゼーレは真剣な表情のまま、自分の欲望を叫んだ。


「ふふっ、お互い私情ダダ漏れですね。ですが、そちらのお二人はどうなのでしょうか?」


 リサは明るい笑顔を浮かべた後、ライムと寝ているレイラの方に優しく話しかけた。


「ま、僕はゼーレについていくだけですし、レイラも何だかんだ言ってゼーレの意見には反対しないと思うので、協力関係結んでも良いんじゃないですか」


 ここで大陸最強の名を持つ人達と関わりを持てるのは、勇者パーティーの今後にも良い影響があるのは間違いないし。


「そうですか。それでは、勇者パーティーの皆さん、これから共に戦いましょう」


 リサは立ち上がり、右手をゼーレ達に差し出した。


「はい、宜しくお願いします」


 ゼーレはニヤニヤを隠しきれていない真剣そうな表情のままソファー立ち上がり、リサと握手を交わした。


「リサさん。僕からも、これからよろしくお願いします」


 ライムもソファーから立ち上がり、リサと握手を交わした。


 その瞬間、ライムには目の前が真っ暗になり、意識が遠くなっていくと言う覚えのある現象が起きた。


 は? 何でこの感覚に!? まさか、リサさんって……。


 ライムとリサは、急に体勢を崩して床に倒れ込んだ。

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