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111 蘇りし、闇を晴らす剣

 ライム達は今、エレベーターの中に居る。


 ソフィアが隠されたボタンを押して、地下100階層目に向かっているのだ。


「やっぱ100階層目があったんだな。ソフィア」


「まぁ流石に、99とか言うキリの悪すぎる数字で創造を止める程、僕もいい加減じゃないからね」


 エレベーターは地下100階層目に着き、ソフィアの先導で、ライム達は大きな鉄製の扉の前に来た。


「よいしょっ」


 ソフィアは目一杯力を振り絞り、大きな扉を開けた。


 扉を開けると、四方を鉄の壁で覆われ、小さな光源が一つあるだけの圧迫感ある部屋が現れる。

 その中央には、奇妙で不快な音を発し、金色に光る球体が浮かんでいた。


「おっ! テンヤとアカネじゃん。居ないのかと思ったらここに居たんだな」


 ライムは、満面の笑みでテンヤとアカネの手を取ってはしゃいでいた。


「何だ、俺たちがここに居るのは知ってたのか」


 少し残念そうにしているテンヤは、白衣から白のコートを羽織り、下に白いシャツを着て、下は変わらず真っ白なズボンと言う、大人にコーデに変えていた。


「ディストラに聞いたんだよ」


 ライムは軽く流した。


「お前の執事かは知らんが、優秀なのも考えものだな」


 テンヤは水色のレンズをしたメガネを抑えて話した。


「まぁそれは、僕も思う節はあるよ」


「テンヤ、ライム。再会を喜ぶのも良いけど、あまり2人を待たせちゃ駄目よ」


 アカネは、退屈そうに壁にもたれかかっているソフィアとへライトを指差して言った。


 アカネも、黒のスーツ姿からラフな私服にコーデを変えている。


「そうだな。で? 何をすれば良いんだ?」


「私達とライム君の目的は同じさ」


 へライトは、口角を上げてニヤリと微笑んだ。


「同じって事は、勇者の剣を作り直せるのか?」


「その通り! なんせ、今この場には創造と再生、そして時のスペシャリストが集まってるんだ。不可能はないよ。ま、破壊専用の魂之力ソウルを持ってるライムは別だけど」


「壊すことにしか能が無くて悪かったな」


 ライムはリュックを下ろし、中から刃が折れている剣を取り出した。


「そう言えば、記憶を取り戻す時に思い出さなかったんだけど、テンヤとアカネの神授之権能ゴットソウルって何だってけ?」


「あぁ、確かに言ってなかったな。俺の神授之権能ゴットソウルは、創造を司る神『創造神ゼイト』だ」


「私の神授之権能ゴットソウルは、生命力と癒やしをもたらす神樹『神樹(ヒーティ)』よ」


「へ〜、二人も僕の神授之権能ゴットソウルに負けず劣らず、強そうな魂之力ソウルだな」


 ライムは、剣を握りしめながら楽しそうにニヤついていた。


「話しが終わったなら、早くこの光の中に剣を入れて」


 ソフィアが退屈そうに溜息を吐いて、ライムを急かした。


「こうか?」


 ライムが光る球体の中に剣を入れると、剣は球体の中でフワリと浮かんだ。


「うん、バッチリだよ。じゃ、へライト様の魔力を借りまして」


 ソフィアはへライトと手を繋ぎ、魔力を吸い取った。


「今から魅せるのは、創造主2人と時間の神、そして再生の神による奇跡……」


 ソフィアの掛け声で、ソフィア、テンヤ、アカネ、へライトが剣が入っている装置に手を触れて各々の魔法を発動し始める。


「姿を現せ、時よ戻れ、その力を取り戻せ! 悪を滅する光の剣よ、今こそ眠りから目覚める時だ!」


 ソフィア達は、全力で魔法を剣に送った。


 すると、剣は見る見る内に白く輝く刃を取り戻し、柄も金色の輝きを放ち始めた。


「よし! 成功だ」


 ソフィア達は魔法を解除し、ライムは本来の輝きと力を取り戻した悪滅光爆剣(デストライトソード)を手に取ったのだった。


「はい、へライト様から聞いていたイメージを頼りに、一応鞘も作っといたから。僕とテンヤの渾身の合作だから、渡す時には大切に使うように言っといてね」


「了解した。ありがとうな、ソフィア、テンヤ」


「それじゃあ、これで私もこの世界から去ることにするよ」


「はい、へライト様。色々とありがとうございました」


 へライトはライム達に軽く微笑んで、部屋から出ていった。


「そうだ。テンヤとアカネにお願いがあるんだけど、先にサンダーパラダイスの拠点に戻っててくれないか? 魔王との決戦は近い、2人には是非とも協力してもらいたいんだ。拠点の場所は分かるだろ?」


「あぁ分かる。最低限の道具を持って向かっとく」


「ソフィアちゃん。戦いが終わったら、絶対また会いに来るからね」


 アカネはソフィアの両手を自身の手で包み込み、大きく上下に揺らした。


「いや、二人のイチャイチャを見せつけられるの、千年以上孤独だった私には眩しすぎるから辞めてほしいんだけど」


 ソフィアは、アカネから視線を外して、気まずそうに言った。


「ソフィアさん!」


 テンヤは、ソフィアの言葉に焦りを見せていた。

 一方アカネは、ソフィアから手を離し、頬を赤らめて恥ずかしそうに両手で顔を隠していた。


「ハハッ、まぁいちゃつくのもしょうがないよ。なんせ、リヒトとクレアの時からそういう雰囲気だったし、前世でも幼馴染以上の距離感だったんだろ?」


「は!? そんな事話した覚えないんだが! って……、ライムこの野郎、カマかけたな!!」


 テンヤは悔しそうに叫んだ。


 それを見て、ライムは満面の笑みを浮かべていた。


「あの、前世ってどう言う事?」


 やり取りを聞いていたソフィアは、小声で質問をした。


「あ、そこら辺はテンヤ達に質問してくれ。流石の僕もそろそろ寝ないと疲れがヤバい」


 ライムは、そう言いながら鉄の扉を開けた。


「じゃあな、テンヤ、アカネ、ソフィア。また会おう」


 そう言い残し、ライムは街に戻っていったのだった。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 翌朝。

 ライム達が起きると、フレディさん達に街の広場へと連行されていた。


 街の広場では、ライムとの再会と勇者パーティー歓迎会を兼ねた催しが用意されていた。


 広場には数多くの椅子と大きな丸机が並べられ、その上には幾つもの豪華な料理が乗せられていた。


 まだ朝にも関わらず、街の人達も着々と集まり始め、料理を食べたり会話をしたりして賑やかに盛り上がっていた。


「わぁー、美味そうだな。ミラ」


「うん!」


 ライム達とアンダーウッド家は、豪華な料理が並んでいる大きな丸机を囲むように座った。


「フレディさん。いつの間にこんな大掛かりな歓迎会を用意してたんですか?」


 ゼーレは、用意されていたジュースを飲みながら質問をした。


「いえ、私も今朝までは全く知らなかったんですよ」


 グレースは音を立てずにゆっくりと椅子に座り、話し始めた。


「何でも、昨日の夜にライムさん達を発見した飲食店のオーナーが私達にも秘密にして、用意したらしいです」


「この街の人達には感謝しかない」


 レイラは、完全にサラダを呑み込んでから賑やかな周りを見てそう言った。


 ほんと、そうだよな。

 この街の人達が温かく迎えてくれたから、ゼーレと会う前にお風呂に入れたんだし。


 まぁあ、結局ヘルグランとの戦闘でだいぶ汚れたけど。


「ライム兄ちゃん、遊ぼうぜ。俺達前よりサッカー上手くなってるから」


 ライムが昔の出来事を思い出して感傷に浸っていると、5人の男の子達が話しかけてきた。


「そうだぜ、ライム兄ちゃん。俺達がボコボコにしてやるよ」


 男の子達は、自信満々の笑みを浮かべていた。


「言ったな〜。じゃあお前達は僕とは別チームだからな」


 ライムはそう言って机から立ち、男の子達と一緒に公園まで駆けていった、


「ふっ、ライムの奴。あの子供達と同じ精神年齢なの本当に同い年か怪しくなるぜ」


「カッコつけてるとこ悪いけど、ゼーレも同じぐらい幼稚だよ」


 レイラは、横目でゼーレを見ながら辛辣な言葉を浴びせた。


「なっ! 僕は勇者としての振る舞いとかちゃんと出来るし、ライムと一緒にされちゃ困る!」


 ゼーレはムキになって、レイラから視線を逸らした。


「そういう所何だけど。ま、いっか」


 レイラは小声で呟きながら、目の前の豪華な料理に箸を伸ばした。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 時刻は昼過ぎ。


 街の人達と共に楽しい時間を過ごしたライム達は、旅立ちの準備をして、アンダーウッド家の玄関前に集まっていた。


「フレディさん、グレースさん、ミラちゃん。二日間お世話になりました」


「「お世話になりました」」


 ゼーレとライム、そしてレイラは、感謝の気持を込めて、フレディ達にお辞儀をした。


「ライムお兄ちゃん達。またいつでも来てね!」


 ミラは、元気いっぱいにそう言った。


「ミラの言う通り、私達はいつでも歓迎します。その時は是非、我が家に立ち寄ってくださいね」


 グレースは、優しく微笑んだ。


「まぁライムさんに至っては、吸わせてもらわないと家には入れませんが」


 フレディは、ライムにニヤリと微かに笑う様な視線を向けて、意地悪を言った。


「何で僕だけ条件付きなんですか!」


「ハハッ、冗談ですよ。まぁ吸わせてもらえるのなら、我々はいつでも歓迎ですけどね」


 フレディの言葉を聞いて、街の人達は小さく頷き、ミラに至っては、少し好色そうな目つきでライムを舐め回すように見ていた。


「あ、アハハ。考えときます……」


 てか、何かミラちゃんから変な視線感じるんだけど、この場で口にしないほうが良いよな。


「そ、それでは、僕達はそろそろ行きますね」


「はい。勇者パーティーの皆様のご活躍心より願っております」


 フレディの言葉に続いて、街の人達は次々に頭を下げた。


 それを見たゼーレとレイラは、後ろを向いて歩き出した。


「じゃあな、ミラ」


 ライムは、先を行くゼーレ達を追いながら、大きな声でそう言った。


「うん!」


 ミラは、太陽に負けない程の満面の笑みで元気良く返した。

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