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105 最強の黒雷VS最強の神達

 フライムの創った見渡す限り宇宙のような光景が広がっているだけの新たな世界。

 そんな世界で魔力で浮遊しているのか、重力が無いから浮遊している様に見えているだけなのか分からない体勢で睨み合うライムとフライム達。

 その間には、言葉では言い表せない程濃い魔力と威圧が押し合っていた。


 そんな緊迫した空間を破るべく先に動いたのは、黒雷を全身に漂わせたライトニングだった。


 ライトニングは、魔力を極限まで右手に集中させ、黒雷纏う右手を上へと挙げた。


「神の如き技で神を滅せ……。『万雷之黒衝撃(万雷インパクト)!』」


 ライトニングが右手を下げると、何も無かった所から無数の黒雷出現し、一つの巨大な黒雷となってフライムとへライトの頭上へと落ちた。


「「ふっ……」」


 だが、フライムとへライトは余裕の笑みを浮かべる。


「おいおい、避けるだなんておもんない事しないでくれよ?」


 ライトニングは煽るようにして、微笑しながら話した。


「「そんな事はしないよ」」


 フライムとへライトはそう言うと、フライムは空間で作った透明で大きな玉の中に入り、へライトは自身に触れた黒雷の時間を止めて『万雷之黒衝撃(万雷インパクト)』を一歩も動くこと無く完封した。


「この技は、雷を黒雷に変化しただけで、なんの追加効果も付与されていない……」


 へライトは自身の頭上にある時間が止まった黒雷の時間を反転して、『万雷之黒衝撃(万雷インパクト)』発動前の状態まで戻した。


「そもそも、時空を壊すのは反則だしね」


 フライムは満面の笑みを浮かべながら空間魔法を解除した。


「ちっ、よくよく考えてみれば、この戦いのルール自体、そっちの圧倒的有利じゃねぇか」


 ライトニングは、黒雷纏った両拳を握りながら、喜色を宿した黒い瞳でフライム達を睨んだ。


「でも、こんぐらい理不尽なのが、君達が戦おうとしている神だろう?」


 へライトは、不敵な笑みでそう言い放った。


「ふっ、そうだな!」


 ライトニングは漆黒の剣を右手に持ち替え、フライム達に突っ込んだ。


「この距離からのこの技は避けれまい!」


 ライトニングの持つ漆黒の剣には、黒雷が纏っている。


「魂を切り裂かれる苦痛を知れ……。『魂斬之無限黒雷斬撃アンリミテッド・オール・スラッシュ!』」


 ライトニングが漆黒の剣を振り下ろすと、無数の黒雷で出来た斬撃がフライムとへライトを襲った。


「空間よ、縮め。『空間之圧縮(スペース・コンプレス)』」


 フライムは、空間を縮めることで瞬間移動をして、斬撃を避けながらライトニングに近づいていった。


「時の神に攻撃は届かない……。『超加速之体アクセラレーション・ザ・ボディー』」


 へライトも己の身体を金色の魔力で包み、異常な速さでライトニングに急接近した。


「この距離なら避けられないんだよね?」


「ライトニング君で良いのかな? 次は私たちの番だ!」


 お互いの息が顔に当たる程ライトニングに近づいたフライムとへライトは、左右反対の構えをしながら腕に魔力を込めた。


 体が動かない! 金縛りか! いや違う、これは……。


 ライトニングは、フライムの半透明な魔力に覆われて身動きが取れなくなっていた。


「「時空神の力でその身に混沌を与えん……。『時空神之悪戯カオス・ザ・トーチャー!』」」


 フライムとへライトは完璧にタイミングを合わせ、ライトニングのみぞおちに張り手を食らわせた。

 ライトニングの背中からは、みぞおちに受けた半透明の魔力と金色の魔力が光の棒となって遥か彼方へと伸び続けていた。


「グガァァアア!!」


 ライトニングの口からは、常に強者の余裕で相手に追い詰められなかったとは思えない程悲痛な叫びが漏れ出していた。


 な、何だこの感覚。か、体が分離している!?


 そう、ライトニングの体はその身で感じた通り、分子レベルまで粉々になっていたのだ。


 だが、死ぬことは無い。

 何故なら死ぬ直前に……。


 なっ! 今度は若返っていく!


 体の時間が急速に巻き戻されていくからだ。


 何なんだこれは!? こんなの反則以外の何物でも無いだろ!


 全ての魂之力ソウルを嘲笑うかの様な反則級の技にライトニングは行き場の無い感情を胸に苛ついていた。


 だが、そんな事も他所にライトニングの体は、ピンポン玉のサイズまで凝縮されたり、死ぬ直前の年齢まで老いたり、四肢と頭を胴体から隔離されたり等々、常人なら痛みと常識に当てはまらない現状に精神崩壊や死んだと錯覚してしまう程の拷問を受け続けていた。

 その間も常にライトニングは様々な感情が入り乱れた叫びを響かせ続けていた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 数分後。


「ははっ、凄いね君は! 精神系を司る神ですら、初めの分子レベルまで粉々にされる時点で精神が崩壊しかけて、数分も経てば完璧に廃人になるのに」


 へライトは、調子が狂ったかのように普段の威厳のある神のオーラを捨てて高笑いをしていた。


「空間ごと身体をイジっていても、骨や内臓ごと極限まで圧縮されたり、体が急速に衰えたりする時の痛みは普通に感じるからね。貴方、精神力も化け物すぎでしょ」


「ハァハァ、やり過ぎだろ……。体をランダムにイジられてるし、痛みと意味わかんなすぎる状況下で正確に魔力を練るとか無理すぎるんだが……。抵抗出来なかったら試練の意味が成さないだろ」


 ライトニングは口を抑えて吐きそうになりながら、下に俯いていた。


「いや、そもそも時空を壊せない君が時空を司る神に勝てる訳ないから、勝ち負けは重要じゃないんだよ」


「そうそう、私達は貴方がどんな状況下に置かれても、気が狂わずに冷静で居続けられるかを見たかったんだよ」


 フライムとへライトは、勝ち誇った様な笑みを浮かべてライトニングを見ていた。


「はっ、オリードの無数に居た邪神達や魔神を割と簡単に殺せた事で気が大きくなってたのかもな。やっぱ神はイカれてるよ……」


 ライトニングは口の横に付いた涎を手で拭いながら、闘気を宿した瞳でフライム達を睨んだ。


「それじゃあへライト様、教えてくださいね。僕とアンナ達の為……。いや、世界の為に」


 ライトニングは真っ直ぐとした黄色の瞳孔をした黒い瞳でフライム達を見つめていた。




 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「じゃあこの世界は用済みだから消しちゃうね」


 フライムはそう言うと、パンっと手を叩いて世界を消した。


「僕もライムに戻るか。ディストラ……」


 ライトニングがそう言うと、影の柱がライトニングを包んだ。


 暫くすると、中からいつもの服装に着替えたライムが出てきた。


「先ずは、魔王軍の作戦について話そう。この作戦は未来がどんだけ変わろうと、実行される確率が高い。しっかり頭に入れといてくれ」


 へライトは普段の神らしい振る舞いに戻ってハキハキと話した。


「分かりました。先生」


 ライムも気を引き締めてへライトの方を見ている。


「良い返事だ。最初に、魔王アビスの息子ナハトは、君との一騎打ちを望んでいる」


「それは嬉しいですね」


「そう、これは君の転生する時に持っていた夢を叶えられる可能性があることを意味する」


「主人公のラスボスを横取りする、ですか?」


「そう、君が倒したい主人公のラスボスはアビスだけじゃないんだよ」


「そして、アビスは総力戦に持ち込む気だ。ナハトもそれに従っている」


「何でだ? 正直今回のホノカとハルカとの戦闘みたいに僕が居ない状況下で戦うのが最善策だし、流石に魔王軍もそんぐらいのことは理解してるだろ? もう、半分ぐらいの魔将軍は僕とゼーレ達に倒されてるんだから」


「それは、アビスが総力戦の時に起こる混乱に乗じて、ラスファートに封印されている自身の力を取り戻す気だからだ。そして、アビスが力を取り戻せば、オリードのそこら辺に居る神ぐらいの力は取り戻すだろう」


「だろうって、へライト様は未来見てるんですよね?」


「あぁ見てるよ。でも、時代の流れを作りそうな要所要所を押さえている程度しか見てないよ。だって、変わるかもしれないとは言え、全ての結果を知ってたらつまらないじゃないか」


 そう言うへライトは、普段の爽やかで少し圧のある笑顔をから一変、無邪気な子供の様な笑顔を見せた。


「まぁそれもそうですね」


 おいおいおい、イケメンの無邪気な笑顔はずるいだろ。男でも惚れちまうぞ。


 ライムは内心焦りながら、心を落ち着かせて話しを続けた。


「確かに、そんぐらいの力を取り戻す算段があるなら、総力戦のほうが都合が良いのか」


「でも、ナハトも賛成してるって事は、少なくともナハト自身にも僕に勝てる自信があるんだよな。父親が力を取り戻せなかった場合の事を考えないほどバカじゃないと思いたいし」


「君の言う通り、ナハトは君と同じぐらい戦闘狂で、自分の力に相当な自信がある。実際、時空は壊せないにしても邪神の一人、力の神と全力で戦って勝てるぐらいの力と戦闘スキルはある事は証明している」


 力の神が最後の邪神なのか。

 ふっ、最後にして一番シンプルっぽい神が来たな。


「しかも、ナハトが力の神と戦ったのは魂之力ソウルがこの世界に復活する前の話しだ」


「つまり、今のナハトはそれ以上って事か……」


「勿論、今話した内容はこの戦いに関わっている全員の野生の勘や心境の変化で変わる可能性がある。私も全ての未来を見ている訳では無いからね」


「それでも、教えてくださりありがとうございます。これでだいぶ作戦を立てやすくなったと思います」


「あっ! そうそう、一応神様…、特にゼイト様とアニマ様に伝えて欲しいんだけど……」


「昔の事は水に流そう。邪神は僕達が何とかするから、これから先、邪神が現れない様にしてくれ……。それとゼイト様には、面倒な事させてすみませんでしたって……」


「ん? 別に伝言自体は良いんだけど、昔の事って何? 確かに、ゼイトにはオリードをもう一回作るっていう手間かけさせたけど、それもゼイトは了承の内でしょ?」


 フライムとへライトの頭にははてなしか浮かんだいなかった。


「じゃあ……」


 ライムは一度咳払いを挟んでから話しを進めた。


「僕、始まりの魔王ディアブロの生まれ変わりなんだよって言ったら、さっきの話しの辻褄合うかな?」


「「へ?」」


 フライムとへライトは、気の抜けた顔で驚いていた。


「ほら、10万年前のディアブロ率いる種族連合軍対神達の戦いで、最後の最後にディアブロ含む5人が消えただろ?」


「「う、うん……」」


「それ、実はディアブロが神授之権能ゴットソウル魂神(アニマ)』を使って、今僕が持っている究極之魂アルティメットソウル『破滅帝』を手に入れる時まで転生と転移を繰り返す始まりなんだ」


 フライムとへライトは、少しの間沈黙を続けていた。


「つ、つまり……、影先かげさき夢芽ゆめの前世がディアブロって事?」


 フライムが恐る恐る聞いた。


「そういう事だな」


「っ! もしかして、この世界に魂之力ソウルが復活したのは!」


「察しがいいですね……」


「そう、僕やテンヤとアカネが神授之権能(ゴットソウル)に目覚めたから、パワーバランスを取る為にゼイト様がこの世界に魂之力ソウルを復活せざるを得なかったんだろうね」


「はぁー。貴方、まさか影先かげさき夢芽ゆめとして死ぬ前から特殊だったなんて……」


「まぁ分かったわ。ゼイトやアニマちゃんには、余から伝えとく」


 フライムは、柔らかい笑顔を浮かべていた。


「それじゃあ、ゼーレ達の所に戻ります。フライム、へライト様、今日はありがとうございました」


 ライムは、姿勢を正してへライトの方にお辞儀をした。


「ちょ、何でお兄様だけ様付けなのよ!」


「うん。頑張ってねライム君」


「あっ! 言い忘れてたんだけど……」


「ん?」


「余は邪神じゃなくて神だから、これ以上この世界に関わらない。勿論、最終決戦にも手は出さないからね!」


「うん」


「でも、余に会いたくなったらいつでも呼んでくれていいからね」


 フライムは上目遣いをしながら、あざとい猫なで声で言った。


「いつでもって。お前それ、ストーカーを続けますって言ってる様なもんだぞ」


 ライムとフライムは特有の漫才の様なものをして、お互いに笑っていた。


「ちなみに、私はまだ君と会う機会があるからそのつもりで居てくれ」


 ライムとフライムが笑い合ってる所にそぉっとへライトが割り込んだ。


「そうなんですね。分かりました」


 そうして、ライムはゼーレ達の所に走って戻って行った。

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