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【完結】片想い転生〜振られた次の日に2人で死んだので、異世界で恋を成就させます〜  作者: 雪村
異世界 〜離れないから、貴方も離れないで〜 雅人side
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頼りないけど離れないで

「ごめんね。そしてありがとう。2つとも俺が言う言葉だよ、美姫ちゃん。俺どうかしていた。凄くビビりになっていた。だからさ、美姫ちゃん……さっき言った離れないって言葉。信じちゃってもいいかな?」


「勿論。約束破ったら針千本飲むよ」


「後で指切りげんまんしなくちゃね」



ねぇ、美姫ちゃん。馬鹿なのは俺だよ。


勝手にこの先の展開決めつけて、それに凹んで病みそうになって…。


なのに美姫ちゃんはそれを崩してくれるように俺を抱きしめてくれた。


体が動いて美姫ちゃんの前に立ったのも、きっと守りたいって想いが前よりも強くなってくれたから。


俺は美姫ちゃんの手で握られていた白の眼の大剣を強く握りしめる。


いつも通り美姫ちゃんの体温が近くにあるだけで心臓が鳴り止まないけど、今はとても心地よくて安らぐようだった。



「巫女様。俺はもう大丈夫です。だから着いていくことは出来ません」



巫女様は悔しそうに唇を噛んで俺を睨みつける。


美姫ちゃんに標的が移らないように俺は頼りない背中で隠した。



「これ以上俺達に手出しをするのであれば容赦しません。手を汚すのは俺だけでいい」


「雅人!?」


「美姫ちゃん大丈夫。俺が守るよ」



俺は巫女様がいつでも来て良いように大剣を構える。


不思議と震えは治っていた。


もう、怖がる必要がないからだろう。


美姫ちゃんは約束を守る人だ。


この後の結末がどうであれ美姫ちゃんから離れることは絶対にない。


だから俺はビビらなくていいんだ。



「私だって雅人を守る」


「美姫ちゃん?」



そう言った美姫ちゃんは後ろから出てきて剣を構える俺の横へ立った。


俺はすぐに隠れてと言おうとしたけど美姫ちゃんは何を言っても揺るがない表情をしている。


これはたぶん、俺が言っても聞いてくれない。


正義感が強い美姫ちゃんは元の世界でもこんな表情をしている時があった。


だから俺は余計な事を何も言わないでたった一言心を込めて



「ありがとう」



と、隣にいる美姫ちゃんへ向けて言った。


満足そうに笑った美姫ちゃんは頷いて同じように巫女様の方を向く。


ずっと火が付いていたロウソクは消えつつあり、お香はいつの間にか部屋中を充満していた。



「離れないでね」


「離れないよ」



小さく言葉を交わして俺と美姫ちゃんは巫女様と睨み見つめ合う。


巫女様はどう動いていいかわからずにずっと唇を噛んでいた。



「雅人の目は本当のようですね。容赦しないと言うのは偽りじゃない」


「大切な人を守る為です」


「……なら、その大切な人と一緒に地獄に落ちるのはどうでしょうか?贄は多ければ多い方がいい」


「何を言っても無駄です。俺達が帰るのはこの先にある村ですから」


「チッ」



巫女様は舌打ちすると後ろを振り返って走り出す。



「逃げるつもりか…!?」



しかし何かをテーブルから取った思ったらそれを投げつけてきた。


俺はそれを大剣でバットを振るように打ち返す。


その瞬間、大剣で切れた断面から煙が吹き出した。



「お香!?」


「雅人、伏せて!」



隣に居た美姫ちゃんは俺の頭を勢いよく掴んで床に近づける。


投げつけられたのはお香が入った玉で少しだけ吸ってしまった俺はクラクラと目眩がしてしまう。


お香は部屋中の空気を一気に変え、紫色の煙が包み込んだ。


何か薬が入っているのかと考える暇もなく、俺は伏せの体勢になって美姫ちゃんに左腕を引っ張られる。


それに着いていくと、美姫ちゃんが社に入るための大きな扉を殴った。


俺も真似するように扉に大剣の柄頭を当てて壊す。


2人して急いで社の外へ出ると森の空気を一気に吸った。



「美姫ちゃん、大丈夫?」


「平気。雅人は?」


「少し吸ったから目眩はしたけど今治った」


「無理はしないで」


「……!美姫ちゃん!手が!」



俺は座り込む美姫ちゃんの右手を取ると手の甲に傷が付いているのを確認する。


そこからは血が流れていてとても痛そうな見た目をしていた。



「今ので怪我を…!」


「大丈夫だって」


「ダメだよ!何か布は…!止血しないと!」



俺は自分の服で使えそうな部分はないか探すが生憎この服は動きやすい服装なので余分な布がない。


美姫ちゃんのワンピースも少し汚れていたので使っても衛生的に悪いだろう。


俺はどうしようかと周りをキョロキョロしていると社から咳き込んだ巫女様が出てきた。



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