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君のことになると、私は沢山考える

私はカルイくんと共に雅人と過ごしている村長の家に戻る。


玄関を開けて白の眼の大剣を探すために周りを見渡していると雅人の布団の近くに立てかけてあった。



「武器持ってないって事は、村の外には出てないんだよね?」


「わからねぇけど、たぶんそうだ。朝は獣達が食糧を探しに出かける時間帯だから武器持たねぇで行くのは危険すぎる」


「でも全く知識のない雅人はもしかしたらって可能性も……!」


「美姫、落ち着け!」



私は震えた声でカルイくんに問い詰めるように話す。


もし本当に村の外に出てしまって凶暴な獣達に雅人がやられてしまったらと考えると恐ろしくてしょうがなかった。



「美姫大丈夫だ。オレ達には白虎様の加護が付いている」


「うん……」



年下のカルイくんに慰められながら私はなんとか震えを抑えつける。


そうだ。


雅人は簡単に好奇心などで動く人じゃないから大丈夫だ。


私は自分に言い聞かせるように何度も1人で頷いた。


すると裏の方でカタカタと何かの音がする。



「「雅人!?」」



私とカルイくんが同時に呼んだ声は家の中で響き渡っただけで返事はない。



「そこから見てみよう」



カルイくんの意見に私は賛成して2人で裏側が見える窓から外を覗き込む。


人影は一切見えない。


私はキョロキョロと目線を動かしているとカルイくんは窓から身を乗り出して何かを拾った。



「よっと……バケツだ」



持ち上げたのはバケツ。


水は入ってないけど、中には水滴がまばらに付いている。


これはさっき汲んでいたぽっちゃり女性の物ではない。


カルイくんはまた身を乗り出すと私の方に顔を向けながらある方へ指差した。



「もう水が土に吸われているから見えにくいけど、あそこの部分だけ少し色が違う。もしかして雅人がバケツをひっくり返したんじゃないか?」


「それで怒られるのが怖くて隠れてるって事?」


「さ、さぁ?」


「でもこれはたぶん村長の家のバケツ。雅人が水汲みをしたのはたぶん正解だよ。ひっくり返したかはわからないけど」


「でも姿は全く見てねぇな」


「雅人ー!別に怒ってないから出て来てー!」


「美姫、たぶんそれが理由で隠れてるわけじゃねぇと思うんだが…」



カルイくんにツッコまれながらも私は井戸の周辺を窓からくまなく探した。


しかしそれでも見つからない。



「美姫!いるか!」



また後ろから声をかけられたと思ったらおばあちゃんが玄関の前に立っていた。


いつもの杖を持ち、横には息子さん夫婦もいる。



「おばあちゃん…」


「とりあえず落ち着け。今の状況を説明してくれないか?」


「はい。私が起きたら雅人の姿が無くて…。村の人に聞いては見たのですが、今のところまだ行方はわかってません。さっきカルイくんがそこで水が溢れたバケツを拾ったんです。雅人の敷布団が汗で濡れていたからきっと水浴びしようと思っていたのかと思います。わかったのは、それだけです」


「そうか。ワシ達も見てはいない。きっと他の村人も見てはいないだろう」


「そしたらどうすれば…!」


「焦るでない。今回ばかりは巫女様に頼る他ない。あの方なら霊獣様からお告げを聞けるはず。とにかく今すぐに社へ向かおう」


「オレも行く!」


「構わぬが気持ちが昂って巫女様に無礼のないようにな」


「大丈夫!あ、美姫!一応白の眼の大剣持っていこうぜ!もしもの時はこれで!」


「これ使う場面あるのかな…」


「軽いから美姫でも持てるさ!ほら!」



カルイくんは雅人の布団付近に立てかけてある大剣を私に手渡す。


大剣は鞘にしまっており、背中に背負うタイプだ。


雅人よりも身長の低い私が背負えば格好は辺だけど、大剣は羽のように軽くてまるで持ってないようだった。



「いってらっしゃい。私達は村に残って雅人を探してみるわね」


「カルイ、お袋を頼んだぞ」



お嫁さんと息子さんも心配した顔で私達を見送り出してくれる。


私は頭を下げて引き続き雅人を探すのをお願いした。



「美姫、カルイ。行くぞ」


「はい」


「おう!」



おばあちゃんを先頭に私とカルイくんも社がある森へ歩いて行く。


巫女様ならきっと何かアドバイスをくれるはずだ。


雅人が見つかったらとりあえず色々と話を聞かなければ。


最悪喧嘩になるかもしれないけど。


……いや、雅人と喧嘩になったことなんて一度もないか。


必ず雅人の方から謝ってくるから。


自分が悪くなくても誰かを優先するタイプだ。


だからだろう。


村の人達がこんなに心配して捜索してくれるのは雅人の人柄にあるのかもしれない。


この世界に来て約1週間だけど、みんな雅人のことが大好きなのだ。


そういえば、元の世界でも雅人は密かにモテていたっけ。


私の同級生も雅人の話を時々していた気がする。



「美姫、大丈夫か?」



ずっと考え事をして黙っていた私にカルイくんは顔を覗き込んで話しかける。


私は極力笑顔を心がけて応えた。



「大丈夫。雅人はきっと見つかる」


「ああ!心配ないさ!」



カルイくんはそう言って私の肩を優しく数回叩いた。


……本当に、雅人が関係すると私は色々と考えてしまう。


それはいつからだったのか、わからないけど。


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