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性格の悪さ

「おかえりなさい」


「ただいま戻りました」


「巫女様、遅くなってすみません」


「良いんです。2人の邪魔をする権利は私にはありません」




巫女様は静かに首を振る。


当たり前だけど、全く怒ってない様子だ。


俺と美姫ちゃんは座布団に座った。




「ひとまず村人、雅人、美姫に怪我が無くて心底安心しました。私も村に出向いてこの目で確認しましたが、そこまで大きな被害ではありません。しかし久しぶりに見る村の姿がああなっていると心が痛みますね……」


「巫女様…」


「ええ、大丈夫。心配してくれてありがとう美姫。なってしまったものは仕方ありません。大事なのはこれからどうするかです。村人達なら上手くやってくれるでしょう」


「はい。私も出来る限りお手伝いします」




美姫ちゃんは意気込むように巫女様と話す。


でも俺は黙ったまま。


村に被害が及ぶ強風が俺達の仕業と知ったら美姫ちゃんはどんな風になってしまうかと想像する。


お世話になって、家族同然の村人達を傷つける元凶が俺達だったら……。


考えただけで恐ろしいし、息が詰まりそうだ。




「雅人、大丈夫?」


「う、うん」


「体調悪い?もしかしたら、さっきの強風で気分悪くなった?」


「そう言うわけじゃないんだ」


「じゃあ何?」


「その…」




言って良いのか、俺。


いつもの自問自答が始まるけど一向に答えは出ない。


ここで話題を途切れさせることも出来るけど美姫ちゃんは納得いかずに聞いて話を元に戻すと思う。


現実を言うか。


それとも美姫ちゃんの心を守る。


2択に絞られても選び難いことだった。


………無理ならば俺が決めなくてもいいだろ?


頭の中に悪魔が浮かび囁いてくる。


俺は隣を座る美姫ちゃんに向けて体を動かすと戸惑う美姫ちゃんの姿を見た。




「美姫ちゃん。俺はさっき霊獣白虎様に会ったんだ。そこで言われた事がある。でもそれは辛い内容なんだ。美姫ちゃんが聞きたいなら話すし、嫌なら俺の中で留めておくよ」


「辛い、内容……」


「巫女様。美姫ちゃんが聞く選択をしたら、俺が話して良いですか?」


「勿論です」


「ありがとうございます」




巫女様の了承を得て俺は美姫ちゃんの返事を待つ。


美姫ちゃんは迷っている。


しかし俺はわかっていた。


美姫ちゃんの性格上絶対に本当の事を俺に問いかける事を。


それでも迷おうとするのは俺が前置きに言った『辛い』が自分の中でグルグルと回っているのだろう。


美姫ちゃんに選択を委ねた俺はズルい。


それは自分が1番わかってる。


バシッと決めた方がカッコいいのだって知ってる。


だから弱虫なんて自覚するんだ。


とっくに言わなければいけないことは読めている俺は優柔不断を通り越した性格。


そんな自分に呆れていると美姫ちゃんの小さな口が開く。




「今の、生活が壊れるなら、聞きたくない」




巫女様の社の中で舞った美姫ちゃんの言葉は予想にはなかったもの。


しかし俺は驚くことはなく、巫女様と目を合わせる。


巫女様はきっと俺が言おうとしていることは全てわかっているはずだ。


白虎様と常に繋がっているのだから。


巫女様は自分の目をゆっくりと閉じた。


そんか姿を見て俺は美姫ちゃんに視線をずらす。


不思議と冷静だった俺はまた美姫ちゃんに問いかけた。




「理由を聞かせてくれる?」


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