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始末

「村は至って無事です」




俺は目を閉じて白虎様から送られる鼻息を感じていると静かに話す。


その言葉に安心するけど白虎様は目を細めない。


まだ何かあるのかと俺が首を傾げるとゆっくりと立ち上がった。




「乗りなさい。貴方の歩幅だと、置いて行ってしまいます」


「えっと……」


「何でしょう?ここから村までは距離があります。疲れますよ」


「ありがとうございます。でもその前に1つだけ質問があるんです」


「それは移動しながら答えましょう」


「面と向かって聞きたい」




俺は白虎様の前に立つ。


返事も聞かずに言葉を続けた。




「俺と美姫ちゃんは厄災なのですか?」


「………」




体感的に森の風が止んだ気がした。


しかし木々の葉が揺れる音は響き渡る。


俺と白虎様はしばらくの間見つめ合っていた。


何を考えてるかもわからない。


白虎様のことも、そして自分の事も。




「貴方は、この世界創った者は知っていますか?」


「知りません」


「私も知りません。霊獣なんて言われて、この身を授かっても何もわからない。その前に『者』と呼んでいいのかもわかりません。私は普通の人間達と全く変わらないのです」




白虎様は大きな体を屈めて俺の顔に近づける。


それでも高い位置にいるので俺は必然的に上を見て話していた。




「神家雅人と石竹美姫がここに来た理由、加えて何故書物にも同じ事が書かれているか。そして2人が厄災と称していいのか。霊獣白虎でもわからないとしか言えない」


「そう、ですか」


「……村は無事です。しかし多少の被害が出ている。もしあの時の強風が2人の仕業と知ってしまったら……私は貴方達を殺すしかありません」


「…!」


「私はこの地を守る者。霊獣白虎」




苦虫を噛み潰したような顔になっていくのがわかる。


意識的に俺と美姫ちゃんがやっているわけじゃない。


それなのに殺されるなんて酷い話ではないか。


歯を食いしばりすぎて震え出す。


それでも怒りが収まる気配はしなかった。


矛先は白虎様か。


それとも俺達を連れてきた奴か。


どちらにせよ、弱い俺はこのまま行けば美姫ちゃんと一緒に死ぬことになる。




「乗りなさい」




白虎様は俺が乗りやすい位置まで下がってくれる。


俺は俯きながら白虎様の大きな背中に乗った。




「振り落とされないように気をつけて」




そう俺に言った瞬間、風を切るように走り出した白虎様。


この場所は道なんてない。


だから森に生え聳える木と木の間を抜けるしかないのだ。


それでもぶつかる事なく前へ前へと進んで行く。


本当に振り落とされてしまいそうだ。


俺はさらに手と足に力を込めた。




「貴方自身、死ぬ事は怖いですか?」




そんなの怖いに決まってる。


怖くない奴なんているはずないだろ。


怒鳴り声で言ってやりたいのに俺は白虎様が走ることによって吹かれる風で上手く喋れない。


それでも俺の答えを見透かしたように白虎様は話す。




「死ぬのが怖いと言うことは、まだ未練があると言うこと。生きているうちにやりたい事はやっていた方が良いですね」




もう、死ぬのは確定なのか?


その言葉さえ喋れずに俺は風に当たらないよう体を縮こめた。


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