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バーベキュー

シャワーを浴び終えた俺はお風呂場から出た後、ラフな格好に着替えて部屋へと戻ろうとする。


廊下を通っているとちょうどリビングの窓越しに父さんと目が合ってしまった。




「雅人!手伝ってくれ!」


「…はいはい」




俺は渋々父さんの元へ行くと、うちわを渡される。


これで仰いで火を起こせと言うことなのだろう。


俺は側にあった椅子に座ってうちわで仰ぐ。




「雅人くん、久しぶり!」


「おじさん。お久しぶりです」




せっかくシャワーを浴びたのにと心の中で愚痴を叩きながら仰いでいると後ろから声をかけられる。


美姫ちゃんのお父さんだった。


ジュースを持って来てくれたようでレジ袋からクーラーボックスに入れ始める。


俺は立ち上がってジュースを入れるのを手伝った。




「ありがとう。雅人くんも沢山飲んで!」


「はい」


「それじゃあ美姫達呼んでくるから火おこしよろしくね?」


「…はい」




ついに来てしまったこの瞬間。


おじさんはもう隣にある自分の家に歩いて行ってしまった。


俺は椅子に座って、自分の家族に悟られないようにうちわを動かす。


美姫ちゃんはどういう反応をするのか。


その前に俺が不自然ではないか。


不安が積もってきた。




「おっ、良い感じだな。肉置くか!」


「ああ、了解」


「ん?なんだ?お腹すいたのか?」


「…うん」


「よし!それならじゃんじゃん焼くぞ!」




父さんは張り切って腕まくりをするとパックから肉を取り出して焼き始めた。


するとウッドデッキに繋がる窓から出てきた母さんは嬉しそうな声をあげる。




「美姫ちゃん久しぶり!」


「……!」




俺は一瞬肩が上がりそうになった。


それでもうちわを仰ぎ続ける。


まるでロボットのように。


うちわに神経を尖らせていれば何も問題ない。


火おこしだけを考えろ…。




「雅人、もう仰がなくていいぞ」




いつの間にか隣にいた父さんにうちわを没収されて代わりに箸と皿を渡される。




「謙さんもう焼いてるんですか?」




おじさんが言う謙さんとは俺の父さんの名前だ。


神家謙かみや けん


あだ名で呼んでいるわけではない。


美姫ちゃん家のみんなは父さんのとこは謙さんと呼んでいた。




「腹ペコがここにいるからな」


「まぁ雅人くんも高校1年生だからね。食べ盛りでしょう?」


「そうなのよ。昨日は疲れたって言って夕食も食べてないから余計ね」




母さん余計なこと言うなよ!


俺は口に出さないで母さんに怒鳴りつける。


その瞬間、俺の母さんとおばさんの隣で微笑んでいた美姫ちゃんと目が合った。


俺は目を少しだけ逸らしたが、また目を合わせる。


無理矢理笑うと美姫ちゃんも眉を下げて笑ってくれた。


これで不自然ではないだろう。


俺は皿に視線を戻すと肉が山盛りに置いてあった。




「あれ?誰が…」


「ほら焼けたから食べろ!」


「あっありがとう」




トングをカチカチと鳴らしながら父さんは次々と肉を乗せてくる。


これはわんこ蕎麦形式なのだろうか。


俺は山盛りの肉を口に頬張っていればいつの間にか美姫ちゃんの方を向かなくなった。


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