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真っ白な村長

おばあちゃん一家の家へ着くと男の子はソワソワし始める。


俺は落ち着かせるように頭を撫でた。


美姫ちゃんがノックして玄関を開けると、囲炉裏の前にいたおばあちゃんが驚いた顔でこっちを見ている。


男の子を見た瞬間に杖を持って立ち上がると俺達の元へ歩いて来た。




「おばあちゃん…」


「ああ、ごめんな。もう怖い話はしないからな…」


「雅人くんが…」


「ん?雅人がどうした?」


「これ…」


「そ、それは白の眼の首飾り!なぜお前が!」


「おばあちゃん落ち着いて。俺があげたんだ。…俺はこれから自分で強くならなきゃいかないから。俺のわがままだなんだ。何も言わずに受け取って欲しい」




慌てるおばあちゃんを宥めるように話すと、少し考えてゆっくり頷く。


どうやらわかってくれたようだ。


俺は安心して男の子を家の中へ入れる。


男の子は走っておばあちゃんの腕の中へ………とは行かずに座布団に座って俺達の様子を見ていた息子さんの所は走って行った。




「ま、まぁそうなるよね」


「仕方ない」


「今回ばかりは懲りたわい…」




おばあちゃんは頭をガクッと下げると落ち込む。


その姿は可哀想だけど、おばあちゃんは加害者側だ。


俺は苦笑いして可哀想に見える感情を流す。




「私達は行こっか」


「そうだね。それじゃあ俺達は帰ります」


「雅人くんと美姫ちゃん。世話をかけたな。ありがとう」


「大丈夫!さっきまでのお礼という事で!」


「またね…」


「うん!またね!今度は雅人も混ぜて一緒に遊ぼ!」


「うん…!」


「とりあえずお袋はそのままにしておいてくれ。しばらくしたら元気になるだろう」


「わかった」




俺と美姫ちゃんは玄関前で真っ白く固まっているおばあちゃんをそっとしておいて、扉を閉める。


そして美姫ちゃんと目を合わせて小さく笑った。




「ふふっ、おばあちゃんには申し訳ないけどちょっと面白かった」


「俺も」




俺達は少し玄関から離れて笑い合う。


この世界にきて2人で大笑いするのは初めてかもしれない。




「あー、お腹痛い」


「おばあちゃん今頃大丈夫かな?」


「大丈夫じゃない?息子さんもいるからさ。あの人、凄く優しい人だから流石にずっと放って置くことはないと思う」


「そっか。なら安心」




美姫ちゃんは少し目の端に浮かんだ笑い涙を拭った。


泣くほどあの姿がツボったようだ。


しかし俺はある事を思い出して一瞬で笑顔が消えてしまう。


その様子を見た美姫ちゃんは俺の顔を覗き込んだ。


俺より身長の低い美姫ちゃんだから必然的に上目遣いになって、俺をドキッとさせる。


しかし奴の顔が浮かぶとドキドキがイライラに変わった。




「あいつ……アキロはどうする?」


「アキロさん?さっき私と一緒にいた人?」


「そう。てか、名前知らなかったの?」


「私があの子を宥めている時に来たと思ったら一方的に喋り出したの。私は宥めるのに必死だって言うのに…」




あいつ……本当に空気読めない奴だ。


そんな奴に美姫ちゃんを好き勝手にされてたまるか。


でも実際のところ美姫ちゃんがアキロに対しての好感度は低いようだった。


そのまま低くなって好感度0になれば良いのに。




「でも行こうか」


「え!?行くの?」


「だって待ってられて、来なかったら後でどうなるかわからないし」 


「確かにそうだけど」




あいつにそんな優しい想いを込めなくてもいいのに。


…でもそれが美姫ちゃんの良いところなんだよな。


絶賛片想い中の俺からしたら美姫ちゃんの行動は全部肯定だ。


温めた片想いは結構狂いそうなくらいに熱されている。




「俺もついていく」


「大丈夫だよ?話聞くだけだから」


「……ついていく」


「雅人、さっきから顔怖いよ」




俺の一方的な苛立ちの感情で動くのは少し嫌だけど今は許して欲しい。


相手が相手なのだから。




「何も邪魔はしないから」


「良いけど…大丈夫?」


「な、何が?」


「少しおかしい」




美姫ちゃんはジッと俺の目を見て何かを感じ取るように見つめる。


そんな姿にまた心臓がうるさくなるけど俺は恥ずかしくて目を逸らした。




「平気だよ」


「そう…」




俺の近くから美姫ちゃんは離れるとアキロが居ると思われる民家の裏側の森に向かう。


俺も美姫ちゃんの後ろを追いかけるように歩き出した。



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