御神木が囲む森
「外から見た感じで、結構森は大きいですよね?」
「はい。霊獣様が生活なさる森なので…。でも巫女様は森の奥と言っても深い場所にいらっしゃるわけではありません。1番深く、村人が立ち入れない場所に霊獣様が住んでおります」
「さっきから話に出てくる霊獣様って…?」
「巫女様だけがお姿を知っているこの村、いやこの地方の神様の成り変わりでございます」
「そ、そんな凄い立場なんですね…!」
「はい。他の地方にも霊獣様はございますが、この地方の霊獣様は我が村の森に住んでおります」
「村人は霊獣様を守るために戦うんだ!」
「逆じゃ無い?普通…」
「霊獣様を言い換えれば我らの王。守り抜くのは当たり前ですわい」
おばあちゃんは引き笑いをして森に繋がる門へと入る。
すると立ち止まってカルイを引き離した。
「それでは失礼」
膝を着くと両手を組んで胸の前に持って行くおばあちゃん。
祈りを捧げる仕草をしている。
カルイは静かに俺達の所へ来ると小声で耳打ちして教えてくれた。
「この先に行くには村の代表者の祈りが必要なんだ。だからばあちゃん無しにはここを通れないのさ」
「でも門はくぐったよね?」
「ばあちゃんが言うにはこの門の前では祈っちゃダメなんだって。巫女様と霊獣様、村人はみんな平等だからくぐった後に祈って結界を解くんだ」
「へ、へー」
「雅人意味わかってる?」
「…全く」
「…はぁ。たぶん門をくぐった後に祈るのは巫女様達の領域にわざと踏み込むためだよ。みんな平等って事はあまり特別扱いされたくないんじゃない?門の前だったら領域に入る前に許可があるような感じになるでしょ。それを感じさせないためにくぐった後だと思う」
「なるほど。でもそれなら結界はいらなくない?」
「いいえ、結界は必要なのです」
「わっ!」
美姫ちゃんの解説が終わり俺が尋ねるといつの間にか祈りを終えたおばあちゃんが隣に立っていた。
俺は思わず肩と声を上げてしまう。
「結界は他の霊獣様から守るためにあるのです」
「他のって事は、違う地方の神様ですか?」
「はい。これが真実かはわかりませんが、霊獣様達はお互い仲が悪いそう。自身の御殿に入られないように結界を巫女様が張られているのです」
「奥が深いですね。霊獣様達って…」
「それでは参りましょう。カルイ」
「おう!」
おばあちゃんの手をカルイは支えてまた奥へと歩き出す。
森に入った俺は辺りを見てみる。
カルイと会った森とはまた違う雰囲気を持っていた。
まるで木1つ1つに何かが宿っているような神聖な雰囲気。
こう言うのを御神木というのか?
無知な俺はよくわからないけど、凄い空間なのはわかった。




