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巫女様

長い階段を登り終えると大きな木の門が俺達を出迎えてくれる。


カルイは着いた途端に大声で叫び出した。




「ただいまーー!客人連れて来たぞーー!」




そんなに大きな声で言わなくてもと思い俺はカルイに近寄ると家からゾロゾロと人が出始めた。


お年寄りから子供まで俺と美姫ちゃんを珍しい目で見る。


美姫ちゃんは恥ずかしいのか少し目を逸らしていた。




「カルイ、この人達はどうした?」


「変な格好!」


「こいつらは森で拾ったんだ!雅人と美姫!みんな仲良くしてくれ!」




俺達はカルイに拾われたのか…。


ツッコむ余裕もなくて村人達の話はどんどん進んで行く。


色んな人達に囲まれて俺と美姫ちゃんは質問攻めされた。




「どこから来たの?」


「と、東京から…」


「知らないねぇ〜」


「あんたら番いか?」


「違います!!」


「つがいって何……?」


「雅人は黙ってて!」


「は、はい!」


「仲が良いこと!私と父ちゃんの若き日を思い出すわ〜」


「今じゃ殴り合いの毎日だからな!」


「全くあんたのせいでしょ!」




村人達は大笑いする。


俺は着いていけなくて引き攣るような笑い方になってしまった。


そういえばカルイはどこに行ったのだろう。


さっきからあの元気な声はしない。




「あの、カルイは?」


「村長連れて来てるんだべ。…ほら」


「おーい!お待たせ!ばあちゃん、あれが雅人と美姫だよ!」


「よくぞお越しくださいました。道中カルイから聞いてます。なんでも異界から来た人達だど…」




杖をついて腰が曲がっているおばあちゃんは長い前髪から目を覗かせ俺と美姫ちゃんを見る。


少し鋭い目と合って体が強張った。


村人達はおばあちゃんの言葉でざわつき始める。


きっと異界という言葉で驚いているのだろう。




「おとぎ話じゃないのか?」


「でも村長が言ってるし…」


「あの2人が霊獣様に?」


「……静かにせぇ!!!」


「「「ひっ!」」」




村人達、加えて俺達はおばあちゃんの大声で一気に静かになる。


ここに居る者の息が聞こえるくらいに。


おばあちゃんは1回咳払いすると俺と美姫ちゃんの前に来てお辞儀をした。




「申し訳ありません。今から巫女様の所へ案内いたします。きっと巫女様なら貴方達の正体を表してくれるはず……」


「それじゃあオレも着いてく!ばあちゃんが心配だし!」


「カルイ、ありがとう。それではワシの杖になっておくれ」


「よし!任せてくれ!」




カルイはおばあちゃんの手を取ると一緒に歩き出した。




「雅人、美姫!こっち!」


「わかった」


「それじゃあ失礼します」




美姫ちゃんは村人達にペコペコと頭を下げながらカルイとおばあちゃんが通った道を歩いて行く。


俺も真似して村人に一礼した。


すると村人達は慌ただしく家へ戻って行く。


なんだろうと思いながらも俺は巫女様の元へと案内してもらった。




「巫女様は村人でも、村長のワシでも滅多に会うことは出来ません。ただ、子供が生まれ、その子が物事を正確に覚えられる年になると突然森から現れてとある読み聞かせをしてくれます」


「それが別の世界から来るってやつですか?」


「そうでございます。この儀式は絶えることなく、今でも続いております」


「オレも6つの時に初めて巫女様に会ったんだぜ!その時は小さい俺を膝の上に乗せてくれて本を読んでくれたんだ!」


「そうなんですね。巫女様は優しい人なんですか?」


「ええ、それは勿論。会う機会も少ないため、お会いする時はお互いに敬意を込めて接しています」


「お互いに敬うのは良いことだね」


「ええ、本当にお優しい方です…」




カルイ曰く美人で服装が凄くて、おばあちゃん曰く優しい人…。


外見は想像が出来ないけど、優しいのなら安心だ。


怖い人で話が通じなかったらどうなるかわからないし。


隣を歩く美姫ちゃんもホッとした顔でカルイ達の話に相槌を打っていた。



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