12年の恋心
夕暮れに染まる住宅街。
俺の隣には夕日に照らされて神々しく光放つ美少女が歩いている。
今日は久しぶりに一緒に帰ろうと言って俺、神家雅人が誘った。
光放つ美少女、石竹美姫ちゃんは眩しい笑顔で頷いてくれたのが今日の朝の出来事だ。
美姫ちゃんは高校3年生なのに対して俺は高校1年。
もし、今日タイミングを逃したら次がいつ来るかわからないだろう。
何回か会話をしてもうすぐ俺の家が見えて来る。
今日、俺は美姫ちゃんに告白する。
俺達は隣の家同士で幼少期から一緒の仲だ。
だから良いところも悪いところも知っている。
ワンチャンある気がするんだ。
お互いをよくわかっているから。
希望を持って俺は少し前を歩く美姫ちゃんに声をかける。
「何?雅人」
振り向く姿も可愛くて、綺麗だった。
見惚れて何も喋れなくなりそうだが俺は自分の手をギュッと強く握ると徹夜で考えた告白を言い放った。
「美姫ちゃん、ずっと好きです。俺と付き合ってください」
俺は美姫ちゃんを見つめて返事を待った。
驚いた顔をしている。それはそうだろう。
何せこの想いは12年間も温めてきた熱い恋心なのだから。
きっと俺の想いは伝わってくれる。
美姫ちゃんは顔だけ俺の方に向けていたが、体ごとこっちを向いてくれた。
きっと今すぐ返事をしてくれるはずだ。
美姫ちゃんの性格上、返事は早いだろう。
俺はドキドキと心臓を高鳴らせながら美姫ちゃんの口が動くのを待った。
「雅人」
「はい!」
「ごめんね」
「……え」
「付き合えない」
「そ、それは彼氏がいるからとか…?」
「ううん。居ないよ。でも私これから受験があるから集中したいんだ」
「俺は待てるよ。受験勉強中は邪魔しないし、辛い時には支えるから」
なんてしつこいんだろう。
心のどこかではそう思ってしまう。
でも食い下がらなかった。
だってずっと好きだったから。
12年間の想いを舐めてもらっちゃ困る。
それでも美姫ちゃんは首を縦に振らず、余計に困った顔をした。
「雅人を、恋愛対象として見たことないの…」
渾身の一撃が美姫ちゃんから放たれる。
俺は後ろへとよろけそうになってしまった。
「……そ、そっか…OK!ごめんね!変なこと言って!」
「ううん。こっちもごめんね」
「美姫ちゃんは謝らなくていいよ!大丈夫。俺は大丈夫だから」
無理矢理口角を上げて極力明るい声で笑う俺。
美姫ちゃんの顔は笑ってはくれなかった。
俺はこの話を終わらせるかのように歩き出す。
美姫ちゃんが後ろから追いかけて来るように小走りで来た。
勿論その後は会話なんて無い。
お互いに気まずい雰囲気を出してそれぞれの家へ帰って行った。
「ただいま…」
「雅人おかえり。ご飯出来てるけど食べちゃう?それともお父さんの帰りを…」
「今日は要らない。疲れたんだ」
「雅人?」
「もう寝る」
「明日には治しておきなさいよ〜」
ちょうど玄関前の廊下を歩いていたお母さんと出くわす。
しかしお母さんの言葉はほとんど耳に通らなくて俺は2階にある自分の部屋へ歩いて行った。
振られたダメージはとてつもなく大きかったのだ……。