パパさん達編
最後にパパさん達編。
パパさん達編
「随分と長い間苦労をかけたな」
ウィンチェスト公爵がペトリオス侯爵に頭を下げた。
「いえ、結果的に良かったのです。あれ程素晴らしい青年とアレキサンドラは結婚出来たし、王宮内の厄介事が綺麗に無くなりましたから」
ペトリオス侯爵は娘のアレキサンドラが騎士達の意識改革と組織の改変の意見を言った時、騎士団に否定的だが内政の実力者であるウィンチェスト公爵と面会した。
当然、歓迎はされなかったが、アレキサンドラが言った『我々が汗を流せば、誰かが流す悲しみの涙が減る』と『剣は研がねば使い物にならないが、剣が抜かれぬ時こそ国は平和である』の言葉がウィンチェスト公爵の胸を突き、その直後にあった自領の災害にいち早く対応した騎士団の姿に心を動かされた。
「本当にアレキサンドラ嬢は聡明だ」
ウィンチェスト公爵が手放しで誉める。
「騎士達や軍に関しては素晴らしい才能があるのに、あの子は自分の事には関心が薄いんで」
誰が見ても美しい少女だと言うのに、着飾る事はほとんど無い。
「そう言えば、どっかの阿呆が令嬢を熊のようだ、とか言っていたが、否定しなかったな」
「面倒だ、と言ってましたよ」
ペトリオス侯爵が呆れたように言うと、ウィンチェスト公爵がワハハ、と声を上げて笑った。
「豪胆な令嬢だ。だが、そのお陰で王宮の膿が出せたのだから、感謝しかない」
ウィンチェスト公爵はアレキサンドラを利用し、側妃達の失脚を目論んだ。
結果は予想を超えて、かなり大掛かりな粛清となったが、後顧の憂は無くなり、正当な後継者が相応しい地位に付けた。
「国内外にはきな臭い噂がまだあるが、令嬢……いや、ノーエ辺境伯夫人の知恵を借りる事になるかもな」
「あの子は、此方が考えたことも無い知恵でまた、国に変革を齎すかもしれませんね」
ペトリオス侯爵が静かに笑う。
政治の汚さや人の醜さを知らない場所に居ながら、アレキサンドラはさらり、と此方が求める以上の事を口にする。
そろそろノーエ辺境伯領に雪が降る。
厳しい土地だが、アレキサンドラは笑顔で夫やいずれ生まれる子供達と領地を守って行くだろう。
長い間、お付き合い頂き、本当に有り難うございます。
パパさん達編で完結します。
次もパパさん達が頑張る話を書きたいけど、ちょっと考え中です。
新しい話でお会い出来る事を願いつつ、この辺で。




